自由な星の住人の話
「そして後は知っての通り、この星にはいられないと判断した俺は即座にこの星から離脱したかった。だから緊急脱出宇宙船を使用させて貰ったというわけだ」
「………………」
もはやどう声をかければいいのか分かりません。おじさんは暗い顔のまま下を向いて黙ってしまいました。沈黙が場を支配します。
それを破ったのはティーさんでした。
「まあお疲れ様でしタ。人生そんな事もあると前向きに考えてまショウ!とりあえず今日はゆっくり休んでくださイ。と言ってもこの船にはお客様用の部屋はないのでこの部屋のソファで寝てもらうことになりますガ!」
HAHAHA、とでもいいたげなティーさん。
「……ああ、そうだな!九死に一生、いい人生経験になったと思おう!お嬢ちゃんありがとな。なんだかんだ話して少しは楽になったよ」
暗い顔を無理やりではあるが笑顔にしたおじさん。
「では、夜も更けてきたのでまた明日という事で」
「本当にありがとう!また明日!」
「ハイ、おやすみなさいでス!」
そして話も終わり、私達はそれぞれの部屋に戻って行きました。
しんとした宇宙船の内部で、物音が聞こえ始めた。
「………………」
皆が寝静まった中、1つの物陰が動き出したのだ。それは、ある部屋の前まで行くと動きを止めた。そして扉を開こうとしたその時。
「ここは自由の星では無いですヨ」
「!」
ハッとして周囲を見回すと、先ほどまでいた通路に四角いシルエットがあった。ティーだ。
「……なんのことだね〜ロボット君!私はただトイレに行こうと思ってただけだよ?どうやらここではなかったみたいだけど」
そうやっておどけてみせる。それでも彼の目が笑ってはいない事をティーは知っている。
「それならその後ろに隠した物はなんでしょうネ?」
笑顔が固まる。そして固まった顔は困った様な表情になり、最後には諦めたように――
「ああ……そこまでわかってるのかい、そうだね、これは」
後ろ手に隠し持っていた物をそのまま話し相手に向ける。
「お察しの通り、拳銃だね」




