秘密の秘密
「とんだ厄介事を掴まされたぜ……」
「お前はおっさんか。」
「うわっ、おっさんにおっさん呼ばわりとか乙女の恥だ」
「乙女の度合低くないか?」
私はオフィス内の父の机の横でいかにも大切な書類を探すふりをしていた。
その時、頭を上げたせいで山積みだったファイルを崩してしまった。
「仕事増やすなっ!?」
孫の手で背中を掻く父が一喝した。
「ゴメンゴメン一一一一」
慌てて積み上げようとした。
沢山あるファイルはとても古く、紙は茶色く変色しきっていた。
「ボロボロじゃん。いつまでも持ってるのもどうかと思うよ~」
ふと、一つのファイルが目に留まった。
それだけが外装が白色で中身の紙だけが古く、ファイル事態は新しい。恐らく、何回も買い換えているようだ。一枚一枚丁寧に包装してある。
長く見すぎていたから父がこちらを向いた。
「めいか!」
慌てた声が響いた。
ビックリして転んでしまった。
父は一度ネクタイを締め直し、唾を飲んだ。
「ああ、すまない……しかしいつまでも片付けしてるばかりではいかないだろう。ここのことはお父さんがしておくから。早くクレ一ムの方を頼む」
「か、畏まりました……」
直ぐ様立ち上がって父を背に自身のデスクに戻った。
十八年のキャリアは伊達ではない。家族の癖や仕草など誰よりも熟している。当然本人の知らない事も把握している。喋る調子で嘘をついていること、何か隠していることなんて聞かずとも分かる。
明らかに何か聞かれる前に私をあの場から離そうとした。
一体、あのファイルにどんなことが書いてあるんだろうか。
一一一一分からない。
「そんなことより、私は私の事に集中しないとね
今回の件で私は無知なことに気付いた。
「こりゃ、骨が折れるぜい」