基本のフォーム
「じゃあ、行ってくる。明々後日の夕方には帰るよ」
「ええ、行ってらっしゃい」
「行ってらっしゃい」
その日アウグストはあるプロジェクトの為大学へ行った。暫く家に帰ってこられないらしい。当然ルドルフへの授業も休みだ。ルドルフはその日の普段なら授業がある時間、暇を持て余していた。本当は本を読んだり自主勉をしたりしても良かったのだが、折角の休みだから勉強以外のことをしたいと思った。彼は息抜きに庭を散歩した。その日はとても晴れていた。程よく雲や風があるので暑すぎたり眩しかったりすることもない。散歩には最適だ。
彼が家の周りに沿ってゆっくり歩いていると、庭のある一画で刃渡1メートルはあろうかという大剣を振っている男が見えた。長男のゲルハルトである。彼は傭兵をしているのできっと鍛錬の為にその重い両手剣を振っているのだろう。声を掛けようと近づいて行ったが、ゲルハルトの方から声を掛けられた。
「よお、ルドルフ。こんな所で何やってんだ?」
「折角の休みですし、息抜きしようかと思いまして」
「はぁー、息抜きか。それはいい。毎日勉強してたら息が詰まるからな。それにしても、全くお前らはよくあんなに出来るな。俺なんかは頭が痛くなって途中で逃げ出しちまう。やっぱり俺は頭より体だな」
そう言って彼は素振りを続けた。
「兄さん。暫く兄さんの素振り見ててもいいですか?」
「あぁ、それは、構わないけど。見てて面白いか?」
「はい。兄さんの素振りは見てて気持ちがいいです」
「そうか。それは嬉しいな」
それから暫くして、ゲルハルトは再び口を開いた。何か考え事をしていたようだ。
「なぁルドルフ。お前は強くなりたいか?」
「え? えぇまぁ。そうですね。自分の身を守れるくらいには強くなりたいですね」
「よし、じゃあ俺が教えてやる。お前はこの後もどうせ暇だろ?」
暇つぶしにはなるだろう。それに強くなることには少し興味がある。そう考えてルドルフはゲルハルトの誘いを快諾した。
「いいか、何事も基本が大事だ。という訳で今日はお前にフォームから教えたいと思う」
そう言い彼が教えてくれたのは徒手空拳でのフォームだった。
「剣術ではないのですか?」
「剣術をやる前に何も持っていない状態での戦闘訓練をやった方がいい。それに、剣術は剣がないと出来ないから防衛術としては徒手空拳がいい」
それから彼はルドルフに構えやパンチ、キックのフォームを教えた。正しいフォームというのは案外難しいもので、彼も努力したがなかなか思うように出来なかった。これはかなりの復習が必要だなと思う彼であった。
その夜、『復習』が出した最適練習法は筋トレだった。曰く、ルドルフにはまだ十分な筋肉が付いていないから正しいフォームが出来ないらしい。背筋がなければ背筋を伸ばせないように。その日から彼は少しずつ筋トレをするようになった。しかし、彼はまだ三歳。あまり無理はしないようにしようと思った。彼は結構この体が気に入っているらしい。




