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異世界で復習を  作者: 白樺土竜
2/8

転生しました!

 彼が生まれて初めて見たのは肥大した人間の頭部、もとい愛嬌のある顔で笑っているエプロンを着たポニーテールの若い女性、彼の母親であった。彼は初め最近聞き齧った「アリス症候群」なるものを連想した。しかし、すぐにそれではないと気づいた。彼は自分の体を見て「どうやら自分が小さくなったらしい」と悟った。勿論、彼はひどく驚いた。物理的常識的に考えて突然自分の体が小さくなるなどありえないからだ。彼はその女性に話しかけようとした。しかし、出たのは彼が普段話している日本語ではなく、とても言葉とは思えない声、喃語であった。それに今度は困惑した。一体何がどうなっているんだ? そう思った。暫くして彼は考えるのをやめた。こんな非現実的なことは考えても埒が明かないと思ったらしい。

 それから数日間、彼は自らを取り巻くこの不可解な状況に完全に身を任せ、情報を一つまた一つと収集していった。その結果、彼は「ここはどうやら異世界らしい」と思い至った。普通ならば慌ててもいい状況だったが、彼は前向きで楽観的で非常に強いポジティブシンキングを持っていたので逆にこれを好機と捉え、この世界でもたゆまぬ努力をしていこうと心に誓った。全く、天性の努力バカである。

 それから半年から一年が経過し、彼は家の中を自由に歩けるようになった。歩いてみて気づいたようだが、この家は広い。部屋が何十個もある大きな洋館を想像してくれれば大体合っているだろう。まぁ、大きなと言っても家族五人で事足りる、執事やメイドのいらない程度だが。

 彼がこの家に住めることから彼の父が如何に稼ぎがいいかが推察出来るだろう。実際彼の父、バシリウス・ヴェクトロは隣町の学生街ノヴォルデにあるノヴォルデ魔法大学の水魔法科教授であるから一般の家庭に比べ何倍も何十倍も金が入ってくる。彼がこの家に生まれた事は本当に運がいい。そうとしか言いようがない。こればかりは努力でどうにでもなるものではないからな。

 閑話休題。彼は歩けるようになり、彼の両親や兄弟の会話をより多く聞くことになった。ゆりかごの中にいてはあまり会話が聞こえないからだ。勿論彼らが話している言葉は異世界語なので彼にはさっぱり分からないが、それでもやはり彼らが何と言っているのか理解したかった。それが、彼があの能力を使い始めたきっかけである。

 その晩、彼は彼らがどんな会話をしていたのか思い出そうとした。その時、脳内に直接声が聞こえた。機械的な声だった。

『復習しますか?』

 そう言った。彼には何のことかよく分からなかった。分からなかったが、彼は「あぁ、自分は復習しようとしてたんだな」と思い、「はい」と口には出さず答えた。すると、次は脳内に画像が浮かんできた。


本日の会話  難易度 C  習熟度 10%


・ビデオ再生


*単語帳や文法確認、問題集などは授業を受けたり独学したりして勉強すれば使用可能です


 そう書かれてあった。意味が分からなかった。けれど興味はあったので、この中で唯一クリック出来るビデオ再生を選んだ。

 するとどうだろう。彼が今日聞いた全ての会話が一言一句漏らさずに聞こえてきた。あぁ、なるほど。復習とはこういうことか。と彼は思った。英語のリスニングに似ている。彼は眠たくなるまでエンドレスでビデオを再生し続けた。どうやら聞きすぎてもビデオテープが擦り切れる事はないらしい。

何だかくどいですかね

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