第六章 WANTED MAN?
⚠︎吸血プレイのような描写があります
またこの家に住人が増えた。ハルア達と帰り道で色々話していたところ、いつの間にか打ち解けていた。
ハルアもリンも二人とも口数が少ないだけで、とてもいいやつだ。
まぁ、話を戻すが……、まぁ、お分かりの通り俺達の扱いもすごいことになったわけだ。詳しく言うと……やはり、寝場所だ。女子達なら抱き合って寝ていても問題ないだろう。……が、男同士で身体を寄せあっているのなんて滑稽にも程があるわけだ。
そこで心優しきハルア様が「流石にちょっとかわいそうだよ…?」とアイリに勇気ある言葉を向けたところアイリの一睨みで撃沈…というわけだった。
そんなこともあったなー、などと考えていると、キッチンから甘い香りが漂ってくる。
何の香りなんだろうか。まぁなんだっていいか。リリア姉妹+ユーリの作るご飯は家庭的な優しい味で美味しいのだ。
「ねぇ…ユウマくん、ちょっと暑くないかな…?」
マリーのそんな声でふと現実に帰る。
確かに、昨日まで快適なほど過ごしやすかった世界が急にクソみたいに暑くなっていた。そういわれた瞬間、汗が身体中を這いつくばっていった。
「お前…そりゃあそうだろ。上着だけでも脱げばいいじゃん。暑苦しいな。」
そう言いながらマリーを冷ややかな視線で見る。
ハルアは緊張のせいなのかずっと汗を垂らし続けていた。
ちなみに今、ハルアはマフラーを巻いている。とればいいのに…。
リンは涼しい顔をしてただぼーっと壁を見つめていた。
「なぁ、リン…暑くないか?」
「暑い」
……即答だった。何なんだよお前…。超人か?超人なのか?
「みなさーん、できましたよ-♪」
ユーリがガラスの皿にこんもりと乗ったかき氷を溶けないようにして持ってきた。
「「わぁ、かき氷だぁ!!」」
ハルアとマリーが目を輝かせて運ばれる氷の行方を追っている。
……ということは、さっきの甘い香りはシロップの匂いだったのか。
続いてリリア姉妹が赤、黄、緑、青の液体を運んできた。きっとイチゴ、レモン、メロン、ブルーハワイだろう……だが、妙に生臭い匂いが混じっている気がする。
「なぁ…アイリ、なんか生臭くないか…?」
少しの間をおいて
「あぁ…それがな、その…赤色のやつは…あのモンスターの………血だ。……なんか美味しいらしいんだが…まあ、物は試しようだ。」
え?一瞬、思考が停止する。
「はぁ!?オマッ……美味しいとか吸血鬼かよ!?」
ペラペラと減らず口を叩いているのが癪に触ったのか、その赤い液体を氷にかけ、俺の口に入れた。
ん?なんか……認めたくないけど…結構うまい。
あんな厳ついモンスターから採取した血だから予想通りワイルドな味がするかと思えば逆だ……妙に甘い。
「ユッ…ユウマ……?」
ハルアが心配そうに俺を見つめる。心配するな、悟りを開いているだけだ…問題ない。
隣に座っていたマリーが「僕も一口~…」と俺の食べかけかき氷を食べた。
「!?……なるほど、ユウマくん。そういうことか………」
そう言ってそのまま同じように悟りを開いていた。
「もう、アイリってば…流石に……やり過ぎよ」
あきれた顔でアイリを叱るリリア。
「ところでアイリさん達は食べるんですかぁ?これぇ…」
ユーリの問い掛けに二人はは…
「食べるわけがないだろう、気持ち悪い」
「流石にその勇気はありませんね…」
二人揃ってとんでもない事を言った。
…と、いうことは…モルモットにされたのか…俺は。くそぅ、アイリよ…。いつか見ておけ……。まあそんなことをする勇気はないがな!
「まぁ、そんなことはおいといて、皆、明日は海に行こうと思う。暑いしな。水着は各自で買っておいてくれ」
アイリ、おいていいものとおいていけないものがあると思うぞ…。
「わぁ!!海、楽しそう!!ね、ユウマ!!」
ハルアが息を荒くしながら俺に話を振る。
「あぁ…海か、楽しみだな。」
ようやく本調子に戻ってきた。マリーもそれにつられて「楽しみー!!」と言った。
なんかゲーム内でここまで平和に暮らせるとは思わなかった…とか考えていると、家の外でバタッという音が聞こえた。
「誰ぇ…でしょうかぁ……?」
ユーリが心配そうにドアの方向を見つめる。確かに、誰だろうか…。
「ちょっと…出てみましょうか?」
とリリアがドアを開こうとした手を掴んだ。何故だろうか?
「今は夜だ。狼が彷徨いてる可能性が高い。」
なるほど。なら、
「じゃあ俺がいってくる。」
後ろでアイリが「待てッ…!!」と言っているが構わずそのまま外に出た。
こんな時間に誰だろうか。木の側に横たわる人物に目を奪われた。
暗くてあまりよく見えなかったがその少年の顔を見た瞬間、心の中で何かが揺らいだ。
…と、言うと誤解を生むかもしれないがそれほどに、その少年の顔は整っていた。
「……誰…?」
「うわぁぁぁッ!?」
びっくりした。少年が突然目を覚ましたのだ。
「驚かしちゃたのかな、ごめんね…」
少年は照れ臭そうに微笑んだ。
だがそんなことよりこの少年の声に懐かしさを感じた。なぜだろう?
「ユウマ!!大丈夫か!?」
アイリが俺の叫び声で飛び出してきたのか、慌てた様子で辺りを見回した。
「ん、大丈夫そうですね。」
アイリの後ろからリリアが覗き込み、安心した顔でため息をつく。
「あ…君、ちょっと来てもらおうか?」
「……は?」
テレビとかで見る警察が任意同行の時によく言うようなやつだ。そりゃあ変な目で見られるわ。どうかそんな目で見ないで…。
「ユウマ!!後ろ!!」
ハルアが叫んだその瞬間。後ろから軽快な音が聞こえた。
振り返った瞬間狼が飛びかかって来ていた。
…が、急に時空が歪み、消えた。
「ごめん、ちょっと力使いすぎた…。…ちょっともらうよ…?」
と目の前の少年が顔を近付けてくる。
「んっ……」
少年が俺の首に噛みついた。鈍い痛みが首から脳に伝わる。
「…ありがとう」
血を飲み終えたのか、首筋を舐めた。なぜかすぐに傷口が消えていた。
「おう…?で、お前は?」
聞かなければならないことを聞く。
すると少年は、そっと微笑み、言った。
「僕はユメア、このゲームの創始者なんだ。」
え…?何て?
いかがでしたでしょうか?
次回は水着回の予定です!
お楽しみに♫