表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
輝夜姫  作者: ちびひめ
4/18

修行

お花は順繰りに職場を説明していく。

結果的には私は主に掃除役ということになりそうだ。

早速床の雑巾がけからスタートした。

いつ掃除したんだよ?的な汚れ具合。私はそれをピカピカに磨きあげることをよしとした。

雑巾をかけていると、お花もやって来て雑巾がけバトルになった。しかし、毎日欠かさず雑巾がけをしているお花には到底およばなかった。

私は寺のてすりなども磨き始めた。

そこは汚れきっていて、とてもじゃないが、人の通れる道ではなかった。

真っ黒な雑巾を何度もあらっては拭きあげた。

そんなこんなで一日目は過ぎていった。


夜は広い部屋で雑魚寝だった。


翌日起きてみると身体が痛い。筋肉痛だ。どれだけ自分が無力かを思い知った。たったあれだけで筋肉痛とは……

しばらくは雑巾がけで体力をつけよう。そう思った。



おっさんはここの支配人兼教師だった。

私は午前中の掃除を終えると、おっさんに剣術を習った。

しかし、全く歯が立たなかった。しかも最後は剣を持ち上げることが出来ないほどだった。

それだけ私は筋力不足だった。

刀は重い。振り回すにはとてもじゃないが力が必要だということを学んだ。


おっさんからは、

「お前はまず体力をつけるところからだな」

と言われた。


その通り、おっしゃる通り。私はまず走り込みと重たい石を持ち上げるところから特訓された。

訓練には特別におっさんがついてくれた。

おっさんはここの師範代だった。

ここには数名の師範代がいて、それぞれクラス別のようにして訓練しているようだ。私のような非力な人間はほとんど、と言うより全くいなかった。みな、別の道場に通っていたり、訓練をしてからこの道場の門を叩いているらしい。

私はようやく一番小さな石を頭の上まで持っていくことに成功した。

おっさんからはたくさん()められた。

この道場では、褒めて伸ばす指導のようだ。


夕方になり、風呂の時間となった。

大浴場はいい湯加減のようだった。

私はさらしを外して風呂にはいろうとしたが、ある訓練生が、私を見て言った。

「女だ……女がいるぞ!!」

私は戸惑った。これまで当たり前のように男として暮らしていたので、訓練生の言う意味がわからなかったのだ。


私は駆けつけたおっさんに作務衣をきせられ、注目を浴びながらその場を去った。


おっさんには、

「なぜ、女であることを黙っていた?」

と聞かれた。

「私は自分が女だと初めて知りました」

答えはこれだけだった。

「とりあえず女湯で身体を温めてきなさい」

おっさんに言われて納得しないまま、女湯に入った。

入ってわかったことは、女は胸がある、陰部の形が男とは異なるということだった。

これを見て納得してしまった。なんせ、自分にもたわわに実った胸があったからである。


女として生きることはかぐや姫時代に経験しているのでさほど問題はなかった。

ただ、私の筋力のつかなさはそれが関係しているだろう、とおっさんが言った。

その日から私は女性として女中部屋で寝ることになった。

お花が大変驚いていた。

「お前さん、男にしては綺麗すぎると思ったもん……」

そう言われてまた鏡を見る。確かに美しい。

でも私は今は美しさより強さが欲しかった。お婆さんを助けに行けるだけの力が。


おっさんに、

「長い修行になるが、頑張れるか?」

と聞かれ、私は

「お婆さんを助けに行きたいので、できるだけ早く力をつけたい」

と言った。

「その気合いがあるなら、大丈夫だな」

おっさんは真面目な顔で言った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ