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輝夜姫  作者: ちびひめ
17/18

帰り道は意外とすんなりいった。

お金を持っていたので宿にも泊まれたし、荷物は少納言と大納言が持ってくれたりで楽チンだった。ペースはお婆さんに合わせてだったのでゆっくりだったが、意外と早く帰ってきた。途中、籠などを使った。それでもまだお金を持っていた。

私は港町の女将さんに感謝をしつつ、歩みを進めた。


道場に着くと、私は山門を叩いた。

お婆さんは連日の歩きでくたばっていたし、何より私はおっさんに会いたかった。

道場からは少納言に文を持たせて、家までひとっ走りしてもらった。3日後くらいにはお爺さんと合流できるはず。


道場で、まずおっさんに会った。

「よく帰ってきたね」

おっさんは涙ぐみながら言った。

私が数日ここに泊めていただきたい、と言うと、部屋を準備してくれた。

お婆さんは伸びをしながら聞いてきた。

「ここが桃太郎の修行していた道場かい?」

「うん。一年間お世話になった場所」

私は柔らかく笑った。


お湯の準備ができたと言われ、お婆さんから先にお風呂に入った。


私の番になり、お湯に浸かっていると、お花ちゃんの声がした。

「桃太郎さん、お着物ここに置いておきますね!」

私はああ、と返事をするとお花ちゃんに話しかけた。

「お花ちゃん……きびだんご、役にたったよ。ありがとうな!」

「あれくらいで役にたちましたか?」

お花ちゃんの嬉しそうな声が聞こえる。

「ああ、充分役にたったよ。本当に感謝している」

「それならよかった。お風呂あがったらご飯の準備をしてるだで」

「ああ、ありがとう」

お花ちゃんが元気そうでよかった……と思いつつ、ゆっくり湯に浸かった。


3日後、お爺さんが少納言に連れられてやって来た。

お婆さんはお爺さんと抱き合って再会を喜んだ。

私も嬉しくてもらい涙をした。


次の満月まであと3日だった。



私はお爺さんとお婆さんに天へ帰らねばならぬことを告げた。

お爺さんとお婆さんは大変驚き、そして悲しんだ。

私はおっさんにもこの話をしようと、おっさんの部屋を訪れた。


私はことの顛末を話すと、涙して言った。

「どうか、私と一緒に来てください」

おっさんは驚いた様子だったが、こう言った。

「ずいぶん待ったよ、かぐや姫……」

私はその名で呼ばれたことに驚き、困惑した。

「きみが鬼ヶ島に出発してからだった……俺はある夢を見た。」

おっさんが話し始めた。

「俺が前世で帝だったこと……きみの顔……すべて思い出したんだ。きみを追いかけようかとも思った。だが、きみを信じたい気持ちのほうが大きくて、今まで待っていたんだ」

おっさん……いや、帝の目にも涙が溢れてきた。

「まさか、またきみが天へ還らねばならぬとは……」

「お許しください。そしてどうか、私と共に来てください」

私は涙まみれになりながら、畳に頭を擦り付けた。


「かぐや姫……愛しているよ……」


そのまま、私たちは愛し合った。



――翌日。

お爺さんとお婆さんはあることを決めた、と言う。

「わしも鬼ヶ島へ行こうと思う。聞けば気のいい鬼たちだと言うじゃないか。お前も天へ還ってしまうのなら、ここにいても意味がないからのぅ」

お爺さんはまた涙して言った。声が震えていた。

お婆さんも言った。

「桃太郎、お前がいないこの世では私たちに希望はないんじゃ。せめて鬼ヶ島で、鬼たちの役に立って死んでゆくよ」

私も涙して答えた。

「ありがとう、お爺さん、お婆さん。私はそこまで思っていただけて本望です」

「ときに、婚約者は見つかったのかえ?」

「はい、帝……いや、師範代が一緒に来てくださるそうで」

私は顔を柿のように赤く染めた。

「そうか……お師匠さんか……」

「桃太郎、大切にしてもらいなさいね」

そこまで言うと、少納言、中納言、大納言が部屋に乱入してきた。

「かぐや姫、私たちじゃなくて他の人を選んだって本当ですか?」

中納言が泣き叫ぶ。

「相手は俺だと思ってたのに……」

少納言も涙する。

「僕はいい選択だと思うよ」

大納言は涙を堪えながら呟くように言った。

私はみんなを抱き抱えておいおいと泣いた。

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