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輝夜姫  作者: ちびひめ
12/18

農家

満月の輝く夜、月からの迎えはやって来た。


まばゆいばかりに光輝いた車と天女。


帝は慌ててかぐや姫へと近寄った。だが、天女に阻まれてそれ以上は近寄ることはできなかった。


かぐや姫は三つ指をついて、お爺さんとお婆さんにお礼を述べた。

「短い時間でしたが、私を大切に育ててくださってありがとうございました。これで晴れて私も月へ還ることができます。お爺さんとお婆さんに会えなくなることは寂しいけれど、月へ還らねばなりません。本当にありがとうございました。」

そして帝のほうを振り返って言った。

「私は天女です。天女は地上の方と結ばれるわけにはいきません。帝、申し訳ありませんが、私は月へ還ります。いつか、機会があったらゆっくりお話でもしたいものです」

少納言、中納言、大納言はまばゆい光に目を開けることは叶わず、その他大勢の警護の者と一緒に着物で目を塞いでいた。

そんな中でお爺さんとお婆さん、そして帝だけは目を眩ませることなく、かぐや姫を見送ることになった。

帝は涙を流してこう言った。

「いつか、必ず会おうぞ!」

かぐや姫は一礼をすると車に乗り込んだ。

かぐや姫を乗せた車はゆっくりと動きだし、月へと昇っていった。





三匹と一人。

仲良く旅をしたいものだが、そうはいかなかった。

寄ればさわれば喧嘩する三匹。これには私も少し参ってしまった。


三匹の論点はだれが一番かぐや姫に相応(ふさわ)しいかであり、その話が終わることはなかった。



次の宿はとれず、親切な農家のお宅へお邪魔することと相成った。

この農家にはお爺さんとお婆さんと、息子の青年が一人だった。


野菜たくさんの汁をご馳走になり、風呂にも入れてもらえ、私は非常に満足だった。

大納言、中納言、少納言は紐で玄関先につないでいた。

宿では喧嘩しないように言ってあるからか、鳴き声一つしなかった。


「ホントに利口なペットですな」

お爺さんが言う。

「そうでもないですよ。いつもは喧嘩ばかりするので困り果てます」

「しかし、さっきからずっと大人しいではありませんか」

「よそさまのお宅や宿では喧嘩しないように言ってあるんです」

「こりゃまた利口な!餌はさっきの野菜で充分だったかな?」

「はい、充分です。お気遣いなく」

お爺さんと青年とどぶろくで一杯やりながら話す。

「それにしても、鬼ヶ島か……ど偉いところへ行くもんだなぁ」

「お婆さんが無事でいるといいのですが、なんせもう一年が経過しておるので、どうだろうか……」

青年が一生懸命にまくし立てる。

「お婆さんはきっと無事ですよ!桃太郎さんの願いはきっと叶います!」

「だといいんだがな。修行が思ったよりも長くかかってしまって……」

「大丈夫ですって!」

懸命に支えてくれる息子。私はなんだか熱いものを感じ、着物の縁でそっと目頭を押さえた。


深夜。

私はなんだか寝付けずにいた。

するとなにかがごそごそこちらへ向かってくる。

「何奴?!」

と言う間もなく、口が塞がれる。身体をまさぐってくる手。

そこへやって来たのは大納言、中納言、少納言。

きーっと大納言がひっかくと、中納言が目をめがけて突いてくる。最後に少納言が足に噛みつき、相手を捉えた。

相手は息子だった。


「何故このようなことを?」

「お前さんが綺麗すぎて、我慢が出来なくなって……」

泣きながら謝る息子。

私は泣いている肩に手を置くと、宥めた。

「お爺さんとお婆さんには秘密にしてほしい……」


頭を下げて謝る息子に、私はわかったと返事をした。


翌日、約束通り農作業を手伝うと、わずかばかりの賃金をもらい、農家を出た。

息子は頭を下げたままだった。

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