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輝夜姫  作者: ちびひめ
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昔話

少納言は待っていた。


時を遡ること数百年。

かぐや姫がかぐや姫だった時代のことだ。


少納言は待っていた。

彼女が表に顔を見せることを。

数日前、狩りに出掛けた際に少納言はこの場に似つかわしくない少女が髪を乾かしているのを見た。

彼女は大変美しく、まばゆいばかりに光輝いていた。


この家には老夫婦以外に人がいないらしく、彼女はいつもお婆さんと一緒に過ごしているようであった。


まず、このような辺境の地に家があったこと自体が驚きだったのだが、そんな場所に光輝いている姫がいることも知らなかった。


少納言は彼女を一目みようと、ここで張っていたのだ。


彼女は夕方になり、御簾から顔を出した。

その美しいことときたら、今まで見たこともない、どんな貴人にも勝るほど美しかった。

一目惚れというやつである。


少納言がバカだったのは、黙っていればよかったものの、嬉しさのあまり同僚にその話をして聞かせてしまったことであった。


噂はすぐに宮中で広がり、少納言以外にも姫を一目みようと人が押し掛けた。


その中に中納言と大納言がいた。

彼らもまた、姫の美しさに一目惚れしてしまったのだ。

彼女を妻にしたいと考えた少納言は、突然屋敷を訪れてプロポーズをした。

それに慌てた中納言と大納言もまた、プロポーズをした。


姫の名前はかぐや姫。輝く月の光のような容姿からその名をつけられた。


かぐや姫は求婚者にある宝物を持ってきたら婚約してもよいと言われる。

少納言は蓬莱の玉の枝、中納言は燕の子安貝、大納言は龍の頸の五色の珠を持ってきたら婚約してもよい、と言われた。


蓬莱の玉の枝なんて、この世には存在しない。少納言はこれを匠に作らせた。

「これで姫もお喜びになるだろう」

甘かった。

かぐや姫はそれが偽物だと指摘し、作った匠を連れてきてしまった。

「俺はなんてバカなことをしたんだろう」

とさめざめ泣くばかりだった。


中納言は大真面目に燕の巣を一つ一つ見て歩いた。梯子を掛けて見て歩いていたのだが、ある日梯子から落ちてしまう。

腰を痛めた中納言は破談するより他になかった。

「あぁ、あのときもっとしっかり梯子を掛けていたら、こんなことにはならなかったのに」

と中納言はさめざめ泣くばかりだった。


大納言は反論した。

「龍なんて想像上のいきもので、それが持っている珠なんてありえない」

かぐや姫は

「私の話が聞けぬというのか。ならばこの話はなかったことにする」

と容赦ない言葉を浴びせて破談としてしまった。

大納言はさめざめ泣くばかりだった。


三人はそれ以来、寄ればさわれば喧嘩ばかりしていた。

だれの願いも叶わなかったというのに、罪の(なす)り付けあいをした。



そうこうしているうちに、時の帝の耳に入り、かぐや姫は謁見を許可される。しかし彼女はこれを無視した。続いて帝御自ら会いに行くという話もでたが、さらにこれを無視。

かぐや姫を一目でも見たかった帝は、かぐや姫を垣間見るという手段に出た。

満月の夜であった。

かぐや姫は夜になると御簾をあげ、思いに耽っていた。

彼女を一目見た帝は彼女に夢中になり、いろいろな物で気を引こうとした。

しかし、彼女はことごとくそれを断り続けた。


そんなある日、帝はかぐや姫が天に返ってしまうという話を聞く。

そこで彼は、彼女に警護の者をつけた。彼女を一目見た警護の者も、彼女に一目惚れしてしまい、絶対月には返さない、そう心に誓ったのだ。

少納言、中納言、大納言の三名は自ら志願して警護に当たった。


そうして満月の夜がやって来た。

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