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大地の恵み食堂は今日も大変です  作者: 目玉焼き
出会い
2/16

初めてのお客様

〜開店してから3日目〜


大地は仕入れておいた、鶏ならぬ二羽鳥の卵を調理している。


二羽鳥は首が二つに別れているのが特徴。

なぜ二つあるかと言うと、卵の黄身が二つ入っていて分かれているのではなく、雪だるまのように繋がっているため、成長過程で融合していき、最終的にそうなっているらしい。


詳しくは不明。


じゃあ内臓は二羽分あるかと言われるとそうではなく一羽分しか無い。背骨が途中で二つに分かれていて、脳は独立しているが体は共同になっている。


本当に謎である。


大地が初めて見た時は本当にビックリした様だ。

ちなみに通常の卵もあるようで、味は二羽鳥の方が美味しいが値段が少々高い。

まぁ、誤差の範囲だが。


この世界の食材は、前居た世界とほとんど同じだが、名前や味が違ったり、二羽鳥みたいな変なのもあって面白い事になっている。


卵を調理台の角にぶつけてひびをいれると、薄く油を垂らしてから熱しておいたフライパンにジュゴーと音を立てて入れる。


ここでチート能力を発動する。


目の前にいくつかの選択肢がピロンと音を立てて表示された。

これは、この世界で色々とやってると発見した物だ。


上から、固め、半熟、半生とある。

大地は半熟が好きなので半熟を選択した。


またピロンと音を立てると、今度は消えるとフライパンの上に大きく『四分』とタイマーがらしき物が開始された。


作っているのは目玉焼き。

朝の定番料理だ。

簡単で美味しく、短い時間で出来るので忙しい朝でも楽チン。


焼き上がるまでの間に軽くもう一品。


冷蔵庫を開き、玉ねぎ、キャベツ、トマトを取り出し、まな板にのせる。

そして、何処かで作ってもらったMy包丁で玉ねぎとキャベツを食べる分だけトントントントンとリズムカルに千切りにしていく。

切る動作にもチート能力の補正が掛かるらしく、とても速い。


数分で切り終わると、食器棚から野菜を入れる容器を取り出すと千切りにした玉ねぎとキャベツを入れ、トマトを数個飾りに付ける。

そして上からチーズ風味の特性ドレッシングをかけてサラダの出来上がり。


フライパンの方を見ると丁度いい感じにタイマーが0になろうとしていた。

小皿をフライパンの横に置き、火を止めた。

フライ返しで目玉焼きをすくい取り、盛り付ける。


そして、ご飯を茶碗に盛り付けると朝ご飯の出来上がり。

大地はテーブルに持って行き、「いただきます」と言い食べ始めた。






〜数分後〜


「ごちそうさまでした」


朝食を食べ終えた大地は食器を重ね、流し台に持って行き、手早く洗う。

何故か水道は通っていて、問題は無い。


大地は出入り口に向かい、扉のすぐ隣に置いてある手作りのメニューボードを担ぐ。

メニューボードには、オススメメニューの他に持ち込んだ食材も調理可能ですと書いてある。

ちょっとしたサービスのつもりだ。


メニューボードを持ったまま外に出て、扉のちょっと右隣に立てて置く。


「これで準備完了っと」


ちょっと背伸びをしながら空を見上げる。

今日は清々しい程の快晴。


「今日は誰か来るかな……」


浅いため息をつきながら店に入って行く。





結局誰も来ないので、椅子でくつろいでいるとふと店の隅に埃が溜まっている事に気付いた。

大地はそんな所は見逃せない性格なようで掃除道具を取り出して来ては掃除をはじめた。

開店中にする事ではないのだが、人が居ないので良いだろう。


サッサッサッと箒で隅に溜まった埃などを空中に舞い上がらせないようにしながら次々と取っていく。



30分程その作業を続けていると何時の間にか店はピカピカになっているような気がした。


そして、椅子に腰掛けてくつろぎ始める。




しばらく窓の外を見ていると、静かな空間を壊すように扉に付いている鈴の音が鳴った。

大地はビックリして椅子から転げ落ちてしまう。


「イテテ」


そう言いながら扉の方に目をやると、いかにも冒険者と言う格好の5人組が立っていた。

見た所男が3人、女が2人のパーティらしい。全員の格好が少し汚れて所々切れていた所を見ると魔物から逃げて来たようだ。


大地はゴホンと咳払いをし、椅子から落ちた事を隠すように


「いらっしゃいませ」


と言った。


冒険者達は苦笑いしていた。

俺は頬をポリポリ掻きながらハハハと笑う。


「お好きな席にどうぞ~」


冒険者達はカウンター席に座った。


冒険者達のリーダーと思われる男性が大地に話しかけてきた。見た所、年は20前後といった所か……見れば他の4人も同じ位と思われる。


「この店って外から見たよりも広いのは気のせいか?」


男性は天井を見ながら質問をする。


「いや、気にせいではないですね。この店は拡張魔法が使われているらしくて外から見たよりも実際広いんですよ」


すると、魔法使いと思われるローブで身を包んだ女性がビックリしたように立ち上がった。


「拡張魔法? この範囲を?ありえない!だって拡張魔法には限度があってどんな魔法使いもせいぜいリュックぐらいの大きさしか出来ないんだよ!」

「へ、へぇ、そうなんですか」


勢いが凄く、押される大地。

すると、まぁまぁと隣に座っていたランスを持ってた男性と、弓を持ってた女性が落ち着かせてる。

「はは、カノンが熱くなるなんて珍しいな」


リーダーと同じく剣を持ってた少し軽そうな男性が小馬鹿にするように言うと、魔法使いの女性が「うるさいわよ」と冷たく言う。


「おぉ、怖い怖い」


どうやらこの二人あまり仲がよろしくないようだ。

それから暫く魔法使いの女性と軽そうな男性がガミガミと口喧嘩を繰り広げていた。


「あの~そろそろ注文を」


大地が男性に話しかける。


「あぁ、すまない、もうすぐでやめると思うから待ってくれ」


すると、さっきまで口喧嘩をしていた二人がようやくやめ、メニューを選び始めた。


(なにこれ)


そう大地は思いつつ、暫くするとランスの男性が何かを見つけたようで大地に話しかけた。


「この裏ってなんですか?」


ランスの男性はメニューボードの恥の方を指さしながら言った。


「それは、お客が持ってきた食材を料理するってやつです。店の前にあるメニューボードにも書いてましたよ」


「へぇ……本当になんでも料理できるんですか?」

「まぁ」

「じゃあ、魔物でも?」


ランスの男性以外の全員が驚愕の表情でランスの男性を見た。


「み、見てみないと分かりませんね」


今度はこっちを見てくる。


(そんなに見ないで恥ずかしい)


するとランスの男性は武器置き場に向かい、リュックから何か大きなケース取り出してきた。ケースの中には大きな肉片。


それをカウンターまで持ってくると大地の目の間に置いた。


「これは?」

「ゴブリンの肉片です」

「うわ……」

「これを料理に出来ますか?」

「マジすか?」

「マジです」


大地の能力を使えば恐らく余裕で調理はできるだろうが、味は保証出来ないだろう。


「なんでも出来るんじゃないんですか?」


この言葉にカチンと来た大地。

ランスの男性が何故煽るようなことを言ったのかはわからないが。


「分かった。やってみますよ。 他の方達の注文はどうしますか?」


と半分ヤケクソになりながらほかの人たちにも注文を聞く。


大地とランスの男性の話に口を開けていた四人はハッと我に帰ると注文を話していく。


「あ、あぁ……じゃあ、俺はこのステーキセット」

「わ、私はピラフの中盛で」

「じゃあ、俺は肉の三点セット」

「……この月見うどん って何?」

「月見うどんはうどんに卵を乗せたやつです」

「……それで」

「それで俺が裏で食材はこれで」

「承りました」


そう言って調理場にゴブリンの肉片が入ったケースをランスの男性に手渡しで渡される。

以外とズッシリとしており重そうだ。



誰も喋らない沈黙の中大地は調理に取り掛かった。


冷蔵庫から、ステーキセット、ピラフ、月見うどんと三点セットの材料を取り出し、まな板の上に並べる。


ステーキ、ピラフ、月見うどん、三点セットを選び、いよいよゴブリンをセットしようとする。


取り敢えずゴブリンの肉片を見てみると、ピロンと音と共にいくつか選択肢が現れた。


恐る恐る選択肢を見てみると、ゴブリンのステーキ、ゴブリンのシチューなどがあった。


「まじかよ……」


取り敢えずステーキをセットし調理開始する。


暫くして、出来上がった順に冒険者達に並べていく。


(まさか、ゴブリンがあんな美味しそうなステーキになるなんて)


それにチート能力を使ったとはいえ、冒険者達が俺の料理の手際とスピードに少しばかり驚いていた。

そして、ランスの男性にゴブリンを使ったステーキを並べた途端、急立ち上がり「なんだこりゃあ! 本当にこれさっきのゴブリンかよ!」と叫んだ。


「そうなんですよね」

と大地は言うしかない。


「美味しそう……」


魔法使いが物欲しそうにゴブリンのステーキを見ている。


「取り敢えず食べてみてください」

「わ、分かった」


ナイフとフォークで肉を切り分け口へ運ぶ。


もぐもぐと食べて、ゴクリと飲み込んだ。


他の4人と俺はどんな反応が来るかドキドキしている。


「う……」

「「う?」」

「ウマーーーイ!」


その場の全員が驚いた。


「本当かよ、俺に一口頂戴」


軽そうな男性がランスの男性から一口貰って食べた瞬間


「ウマ! なにこれウマ!」


それに続くように俺を含めみんな一口ずつ食べる。


「うまい!?」

「美味しい……」

「美味しい!」

「なんだこれは!」


みんながゴブリンの味に驚きながらも、ゴブリン以外各自の料理も食べて


「こっちもうまいな」


と褒めてくれた。



それから全員が完食してからお会計。


ステーキセット…100G

ピラフ…70G

月見うどん…70G

三点セット…100G

裏 (ゴブリンのステーキ)…20G

合計…370G


「ゴブリンのステーキが安いのはどうしてだ?」

「それは、ゴブリンはお客が持参してきた物なので調味料代になってます」

「なるほどな」


お会計を済ませ、冒険者達が武器置き場で武器と防具を身につけて扉に向かう。

扉を出る直前。


「こんなにうまい店は初めてだまた来るからな」


そう言って冒険者達は扉についてる鈴をカランカランと鳴らしながら帰って行った。


いや、クエストの続きに行ったのか。


なにもともあれ初めてのお客さんに嬉しく思う大地だった。

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