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天使と童話

作者: 荒井爽馬

童話とはなんですか


童話はおとぎ話


童話は昔


童話は神の視点


童話は異なる


童話は自由


なんにもわからない、


でも、なにかは書けるだろう

「現実はすべてがハッタリだ。目に見えるものや、聞こえるもの、触れられるもので本当のことなんてなんにもわからないし、なにが正解かなんてない」


これが彼女の思いだ。


「もしこの世に正解があるのなら、なんで!この世界はこんなに矛盾してるんだよ!」


流氷の天使とよばれる、小さな小さなマガイモノは海中にいた。


独り言のようにブツブツ言葉を発している。


「なんで、私はこんなんなんだろう」「最低だ最低だ最低だ最低だ」


氷河に覆われ、その中に潜む彼女がどのような苦悩をかかえているかなど、外の世界にいる人間が知る由もない。


それでも救いを求めていた。


誰かに助けてほしかった。


そんな願いを叶えてくれる者などいるはずがない。


そんなことわかっておきながら、絶望に耐えられない。


苦しくて孤独でどうにかなってしまいそうな一つの個体が そこ にいる。




水面から男の子は顔をだす。見た目は痩せっぽちで幼い顔だ。とても苦しそう。そんな彼の名はポーカー・ブラウン。船が沈没して、乗客が分断された。彼は丸太の上に両腕を絡ませて、救援を待っている。


「みんなはどこにいるの?」

「わからない、これから僕はどうしたらいいの?」

「ままは?ぱぱは?おねいちゃん?おにいちゃん?いったいどこにいったっていうの?」


暗闇の荒海に投げ出された彼なりの懸命な呼びかけには、答えるものなどいない。あまりにもあたりが騒然としすぎていた。真っ暗で自分がどこにいるのかがわからない。

片手を丸太に引っ掛け、あいたほうの片腕でなにか掴める物はないかと手探りで探してみる。辺りは舟板の残骸が散らばっており、できる限り大きな浮き木があればそれに乗り移ろうと考えていた。


視界があてにならないこの状況で、彼はあまりにも心細い。


人間の子供が乗っかっても沈まない、大きな浮木を見つけた彼は、必死になって這い上がり海面から脱出することができた。冷たい水で体温を奪われる心配はなくなった。しかし、辺りは凍える風が吹きすさぶ暗黒の世界。まだ、安全圏に自身がいると自覚したわけではなかった。ひとりぼっちは恐ろしい。そんな思いを吐き出したい衝動にかられる。


「ぐず…だれか…いないの。だれか」


彼の目に涙があふれる。どうしたっていないのだ。もう、乗客船が沈没したところからだいぶ離れている。


「くす」


そんな時、笑い声がした。もちろんポーカーではない。水中からだった。


「くすくすくすくす」


「ええぇ!?」


自身の真下が音の根源だったが、彼には理解できていなかった。だから、判然としないその正体が人間でないことも、予知できるはずがないのである。そのことを、あざ笑うかのように、


「くすくすクスくすクス」


不気味な音は続く。笑われているのはわかった。気持ちが悪い。恐ろしい。


「なんなんだよ。これ」


これが夢ならいいのに…と彼は思う。なにかの間違いであってほしい。もう、このまま寝てずっと起きないでいてやろうかと思案した。これ以上、泣きはらしても、どうせ助けなんかこないんだ。だったら、もう全て忘れよう。


彼は、この世界が残酷に見えているだろう。八歳で自らの死を覚悟した。

諦めに似た現実を避ける行為であったが、それをとがめる人間など暗闇に包まれた大海原にはいない。


あお向けで四肢の緊張を緩めた。水浸しの板の上に大の字で横になる形になる。彼は憔悴していた。瞼がとじている。睡魔におそわれ、じわじわと時間の経過と共にゆっくり寝音をたてた。


ありがとうございました。

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