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Letter from Terminal

掲載日:2026/07/03

……ここは、どこだ?


少年は、気がついたら電車に揺られていた。


外を眺めると、一面が夕陽に照らされた田んぼと湖だった。


その幻想的な風景は、少年に不気味さを与えたが、しかしながら納得がいく安堵も同時に与えられていた。




少年が外の風景を見ながら余韻に浸っていると、やがて電車が減速を始めた。


今まで静かだったモーター音が、降りろ降りろと言わんばかりに騒ぎ出す。


「……終点だ」


車内アナウンスなどはどこにもなかったが、少年はここが終点で、電車はどこにも行かないということを何故か悟った。




電車のドアが開いた。


小さな橋上駅だったが、設備はコンクリートでできている。


周りの夕陽に照らされた田園風景と噛み合って、まさにこの世のものではないような場所になっていた。


少年はこの駅が好きになった。




しばらく電車が動くのを待った。


しかし、動き出す気配はなかったので、少年は階段を上がり改札へ向かった。


階段を登るとき、少年は体が雲のように軽くなるのを感じた。


階段を登りきり、しばらく廊下を歩くと改札が見えてきた。


改札のところに、駅員らしき人が立っていた。


「ようこそ、ターミナルへ」


駅員は笑顔で、一言そう言った。


少年は、少し顔を歪めた。


「俺は……」


少年が出したい言葉は、彼の喉の奥に突っかかって出てこない。


「俺は……」


「〇☓※さん、あなたは残念ながら亡くなりました」


少年の顔は一瞬更に歪んだが、すぐにもとの顔に戻った。


自分が死んだことに対して、今更驚けなかったのだ。


「……妹は、母は、父は無事ですか?」


すると、駅員はそばにある鏡を指さした。


鏡を凝視していると、その向こうで少年の父は仕事に行き、少年の妹は学校に行っている。


「そうか、そうなんだ……」


少年は、表情を動かさなかった。


動かせなかったのほうが正しいかもしれない。


ふと、改札の向こうにある大きな窓の外に、一羽の鶴がいた。


「手紙を書きますか?」


「えっ?」


駅員は、一枚の便箋を少年に差し出した。


「あと、ペンも必要ですね」


「消しゴムは?」


「あなたに、消しゴムは必要ないですよ」


駅員は、笑ったままだった。


少年は、すぐそばに小さな机と椅子を見つけた。


「どうぞ」


そう言って、駅員は駅長室に入っていってしまった。




椅子に座って、紙とペンを机の上に置く。


何を書こう。


少年は一瞬だけ悩んだ。


そして、笑った。


少年は、ペンを持ち、紙が全部埋まるまで書いた。


途中から涙が溢れてきた。


今までのことが、走馬灯のごとく蘇ってくる。


楽しかった旅行、怒られた思い出、美味しかったご飯。


何より浮かんだのは、家族の顔だった。


「ちくしょう……ちくしょうちくしょうちくしょう!」


やがて手紙を書き終えた。


すぐ後ろには、さっきの駅員が立っていた。




「ここに、手紙を置けばいいんですか?」


「はい」


これで、終わるんだ。


終わってしまうんだ。


それが嫌だと思いつつ、手紙を地面にそっとおく。


すると、手紙が宝石のごとく輝き出した。


「眩しっ!?」


次に、少年が目を開けたとき、そこにいたのは2羽の美しい鶴だった。


鶴は、じっと少年を見つめている。


「ふはっ!」


少年は笑ってしまった。


やがて、2羽の鶴は大きな羽を広げて並んで空に羽ばたいた。


少年は、笑いながら涙が出てきた。


「ちゃんと届けてくれよ! じゃあなー!」


鶴が羽ばたいた空に、少年は大きな声で叫んだ。


彼の人生では叫んだことがないくらい、大きな声だった。


やがて、少年は泣きながら後ろを振り返った。


そこには、さっきの駅員どころか、あの大きな橋上駅すら無くなっていた。


代わりにいたのは、彼の母だった。


「おつかれ、〇☓※」


少年は、母の方へ向かって、全力で走った。

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