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「わー、白石さん来てくれたんだね。」
当たり前だ。
と、いうより、来なくても良かったのだろうか。
待ち合わせ場所に指定された公園に居た澪への第一声は
「おはよう。」でもなく
「来てくれたんだね。」
だった。
ずいぶんと私は信用されていないらしい。
キョロキョロと辺りを覗うが、澪と
「…綾子とさつきも、もうすぐに来るって。」
アヤコとサツキ
と言われたって、全くもって、誰だか解らない。
まぁ、この間話していた子たちだろうから、あの二人のうち
どちらかがアヤコでもう一方がサツキなのだろう。
「ごっめーん!遅れた?」
「連れてきたよー!」
どっちがどっちなんだろう、考え事にふけっていたいた澪は
急に騒がしくなった事で、ふと顔をあげた。
すると、いつの間に来たのか4人の男の子に囲まれていた
髪の長い方の女の子と目が合った。
「あ、白石さんもおはよー!」
多分、こっちの髪の長い方がアヤコだろう。
確か……。
「この白石さんが、噂の美女だよー!」
冗談もほどほどにしてほしい。
呆れたようにそう思った澪だが、澪が思っているほど
澪はブスではない。
いつもふてくされたような表情をしているけれど、
笑顔になれば、そこそこに美人だ。
男の子たちが自分を見つめている事に、気付きた澪はフイっと顔をそらす。
「「あ…」」
そらした視線が、誰かと合った。
さっき澪を見つめていた男の子たちとは別の男の子だ。
「あぁ!小山ぁ、てめー!なんでそっちに居るんだよー!」
「そーだそーだ、美人を一人占めしてんじゃねーぞ!」
澪と目が合った子は『小山』というらしい。
ヤジを飛ばしてきたやつらと違い、その小山は、どうでもよさそうに澪の隣に座っていた。
「だってさぁ、俺は来たくて来たんじゃねぇもん。」
ケッと言わんばかりのその態度は、澪と良く似ていた。
この人も、私と同じで連れてこられたんだ。
と思うと、なぜか親近感がわく。
チラリと横顔を盗み見ようとすると…
「わっ!」
また目が合った。
慌てて澪がめをそらすと小山が話しかけてきた。
「ねぇ、あんた…白石だったっけ?」
「……はい。」
「白石も、連れてこられたんだろ?」
「………そうだと思うわ。」
一瞬、小山が静かになった。
そして……ブフッ!と吹き出すような音がした。
ギョッっとして澪が小山の方を見れば、小山は腹を抱えて笑っている。
「あっははは!おっかしー!『そうだと思う』って、なんだよ。」
しまいには、ヒーヒー言いだした。
なにかマズイ事をしただろうか、と不安になっていた澪は少し
ふてくされた様にその様子を見つめていた。
「そんなに、おかしかったかしら?」
「あっはは!なんかすっげぇツボった。」
『それは、良かったわね。』そう言おうとしたが
「みんなー!行こー」
という、声にかき消された。
なぜかは解らないし、解りたくもないがかなり盛り上がっている
みんなを見て、自然にため息が漏れる。
あんなのとこれからカラオケに行ったら鼓膜と神経がどうにかなってしまう。
「じゃあ、行こうぜ。」
そう言ったわりに、ダリィなどと呟きながら
小山が立つ。
つられた様に澪も立ち上がり異常に盛り上がっている集団の後ろを歩きだす。