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ダンジョンサバイバルinゾンビワールド  作者: score


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第4話 スキル習得


「とりあえず、戦果の確認だな」


 端末まで戻ってきて、ようやく安堵の息を吐く。

 ここが安全地帯というわけではないはずだが、いつでもアパートに逃げ込めるというのは精神衛生上良い。

 少なくとも、モンスターがゲートをくぐって現実に現れた例はまだないし。


 俺はようやく震えの止まった手で端末に触れ、まずはステータスを確認してみた。


 とはいえレベルアップなどしているわけではないので、見たかったのは現在のEPである。


──────

所持EP:2

──────


「はは、増えてら」


 さっきまで0だった数字が、たった2とはいえ確かに増えているのを確認し、思わず頬が緩んだ。

 たった2ポイント、されど2ポイント。

 ゴブリンを5体倒せばレベルが上がる計算だ。


「……あと4体か」


 そこまで考えて、少し気が重くなった。

 慣れてしまえばそうでもないのかもしれないが、さっきの戦闘で結構精神が疲れている。

 なにより、ステータスに表示されている数字が、なおさら俺の気を重くする。


 ──────

 HP:24/32

 CP:29/29

 ──────


 左腕への一撃で、HPが4分の1も削れている。

 単純計算で、毎回一撃もらっていたら5回目の戦闘で怪我をするということ。

 ゴブリンの殺意と、錆びたナイフを思い出し、背筋が震えた。


「だが、一度の探索で少なくとも5体倒さないと、レベルは上げられない」


 EPの仕様を聞いているから、そうしなければいけないとわかっている。

 俺は一度、ステータスを閉じて他の項目を確認することにした。


 ご丁寧に、何か更新があったことを知らせるような『!』が【スキル習得】のと【アイテム購入】のタブについている。


 ────

【スキル習得】

 所持EP:2


 [パッシブスキル]

 不意打ち:2EP

 すり足:10EP

 棒術:10EP

 オートマッピング:2000EP


 [アクティブスキル]

 強打:5EP

 ────


 オートマッピングたっか!

 最初に出てきた感想はそれだった。

 まぁ、冷静に考えるまでもなく、どうやるのかは知らないが自動でマッピングしてくれるスキルがあったとして、それが安いわけないか。


 と、いきなり更新された高額商品は置いといて、スキルの内容を確認してみる。


 ──────

 不意打ち:相手に気づかれていない状態の初撃にダメージ1.2倍の補正をかける。コストCP2。


 すり足:足音を減らす。コストCP2。


 棒術:棒を用いた動作に対して、力、体、速に1.1倍の補正をかける。コストCP3。


 オートマッピング:行動した範囲を自動でマッピングする。マッピングツールは自前で用意する必要がある。また、端末でもマップを確認できる。コストCP15。


 強打:使用後、次の攻撃にダメージ1.2倍の補正をかける。消費CP:5。

 ──────


 オートマッピングだけやたらと高性能なのは置いておこう。

 正直めちゃくちゃ有用そうだけど、どう考えても2000EPは序盤で取れるスキルじゃない。コストも飛び抜けて重い。取っても装備できない。


 気になるのは他のパッシブスキルと強打だ。

 見ている感じだと、先ほどの戦闘から関連するスキルが出現したように思える。

 すり足で移動し、不意打ちでバットの一撃を叩き込んだ。その一連の動作を補強するようなスキルが習得可能になっている。


 となると、このシステムは自分がまず行動してみせて、それからシステムがその補強をするようなスキルを提供するという感じなのかもしれない。


「いやちょっと待て。そうなると魔ってなんなんだよ」


 そこまで考えてから、ステータスの魔が気になった。

 この前提だと、まず魔法を使ってみないとスキルとしての魔法が生えてこないことになる。

 当然だが、俺は素で魔法は使えないし、おそらく全人類がそうだろう。


「ライターで火を付けたり、ペットボトルの水ぶっかけたりすれば生えてくるのか?」


 いかんせん、情報はまだ少ない。

 だったら検証してみようと言えるほど、俺はゴブリンとの戦闘で余裕がない。


「……まずは、目先の強化を優先するか。レベルアップまで耐えるか」


 現状の俺にできることは、今の2EPで唯一取れる『不意打ち』を取得するか、一旦スキルを置いてレベルアップに挑むかの二択だ。


「いや、アイテム購入も一応見ておくか」


 そう思ってから、何やらアイテム購入の項目もお知らせの『!』が付いていたのを思い出した。

 一度スキル習得のタブを閉じて、アイテム購入を開いてみる。


 回復薬Ⅰ:EP5。

 効果:現在HPを15回復する。


 とりあえず、今の俺には無用の長物だった。

 もしもの備えとしていつかは欲しいが、現時点では魅力を感じるものでもない。

 とりあえず、もっと奥まで向かうようになってから改めて考えよう。


「さて、となると不意打ちを取るか否か、か」


 結局最初の問題に戻ってきた。

 このスキルを習得すると、ゴブリン1体分のEPを稼ぎ直さないといけない。

 だが、効果はわかりやすく魅力的だし、先ほどの戦闘で思うこともある。


 俺の渾身の一撃でも、ゴブリンは一撃で倒しきれなかった。

 手応えにも関わらず、ゴブリンのダメージが少なかったのは、きっと俺の攻撃ではゴブリンのHPを削りきれなかったからだろう。


 でも、もし、このダメージ1.2倍があったら、不意の一撃で初めから頭へダメージを通せるかもしれない。

 そうなったら、相手の咄嗟の反撃を潰せて、ノーダメージでの勝利も容易になるかもしれない。


「さっきから仮定ばっかりだな」


 自分の考えが、希望的観測であることは自覚している。

 だが、今の俺にはノーダメージでの勝利の可能性は、とても甘美に思える。


 それだけ、相手からの反撃が怖かったのだ。

 左腕に傷はないが、切り裂かれた重ね着したジャージは今も生々しく奴の殺意を伝えている。

 華麗に避けたり、相手の攻撃を防いでノーダメージを目指す気持ちは、あまり湧いてこない。

 俺は由緒正しいターン制バトルRPGの方が得意だし。


「……よし、取得だ!」


 結局俺は不意打ちを取得することにした。

 目論見通り行けばそれで良いし、もしダメだったとしてもスキルは無駄にならない。

 ノーダメージで倒せないなら、今日のダンジョンアタックでレベルアップまでのEPを貯めるのは難しいだろうしな。


 俺は端末を操作し、不意打ちの習得を行う。


『不意打ちを取得しますか? 所持EP:2→0』


「はい」


 端末に表示されている、はいの表示をタップしながら、声にも出す。

 俺の意思をしっかりと確認した直後、俺の中から先ほどの粒子が溢れて端末へと吸い込まれていった。

 しばらくした後、吸い込まれたときは白っぽかった粒子が、緑色に変わって端末から再び俺の体へ。

 ややあって、俺がスキルを習得したことを知らせる表示が現れる。


『不意打ちを習得しました。スキルをセットしますか? 最大CP:29→27』


「はい」


『スキルをセットしました。スキルのカスタムはステータス画面で自由に行えますのでご確認ください』


 そう言って、一仕事終えた端末はまた物言わぬパネルになる。

 何か、力が湧き上がってくるとかそういう感じはない。

 一度ステータス画面を確認しておく。


 ──────

 上杉 志摩

 ノービス(無職)

 レベル1

 所持EP:0


 HP:24/32

 CP:27/27(使用中CP:2/29)


 (中略)


【所持スキル】

 なし


【セットスキル】

 [パッシブスキル]

 不意打ち


 [アクティブスキル]

 なし

 ──────


 どうやら、しっかり不意打ちはセットされている。

 所持スキルの欄がなしになっているのは、不意打ちをセットしているからか、アクティブスキルのための欄なのか。

 一度、不意打ちを試しにスワイプしようとしてみる。セットスキルから所持スキルの項目に移そうとするとこう表示された。


『不意打ちのスキルを外しますか? 解放コスト:CP2』


「はい」


『不意打ちを解除しました」


 試しに解除してみると、CPと所持スキルの欄はこうなった。


 ──────


 CP:27/29


【所持スキル】

 [パッシブスキル]

 不意打ち


 [アクティブスキル]

 なし


 ──────


 どうやら、最大CPを解放しても現在値は回復しないらしい。

 とりあえずもう一度不意打ちをスワイプして、今度はセットスキルへと移動させようとする。


『不意打ちのスキルをセットしますか? セットコスト:CP2』


「はい」


『不意打ちをセットしました。最大CP:29→27』


 聞いていたとおり、問題なくセットし直せた。

 CPの欄を確認すると27/27に戻っている。


「これもしかして、探索中にアクティブスキルで現在CPが減ったら、その分パッシブをつけるのがお得なのか?」


 ちょっと悪用できそうなことを考えたが、現時点では検証のしようがないのでひとまず頭の片隅に置くだけにしよう。


「……じゃ、もう一度潜ってみようか」


 一通り確認は済んだ。

 手足の震えもいつの間にか治っている。


 俺はちょっとだけ萎えかけていた心をステータス操作で回復させ、今一度ダンジョンの奥へと潜り直すことにした。

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