第28話 三階層突入準備
やや衝撃的な話にしばし考え込んでしまったが、現時点では俺にはどうすることもできない。
これを全世界に広める手段もないし、そもそも、他の生き残りがどういう状況なのかもわからない。
どこかの発言力のあるお調子者が運に振りまくって、それをたまたま世界に発信されるのを願うくらいだ。
「俺は、俺にやれることをやろう」
というわけで、とりあえずスキルの習得を進めてしまおう。
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【スキル習得】
所持EP:268
[パッシブスキル]
腐った肉体:1EP
聞き耳:2EP
危機感:5EP
すり足:10EP
棒術:10EP
ポーカーフェイス:10EP
早足:20EP
気配察知:20EP
ナイフ術:20EP
隠密:50EP
毒攻撃(弱):100EP
麻痺耐性(弱):100EP
麻痺攻撃(弱):100EP
ゾンビキラー:200EP
オートマッピング:2000EP
[アクティブスキル]
堅固:5EP
大声:10EP
急所突き:10EP
物真似:20EP
罠解除:20EP
声真似:50EP
声真似:50EP
背水:200EP
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ゾンビ由来っぽいスキルがいくつか増えている。
特に注目なのは1EPで取れる腐った肉体だ。
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腐った肉体
体の好きな部位を腐らせた状態にできる。
コストCP:5
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だからなんなんだよ。
ゴブリンの悪臭に続く謎スキルである。
いや、ゴブリンの悪臭には散々お世話になっているから何か役に立つとは思うんだけど。
「そもそもこれ、腐った体ちゃんと元に戻るんだろうな?」
もし戻ってくれないのだとしたら、あまりにもあんまりなスキルである。
戻ってくれるとしても、何に使うのかは知らないけど。
「少なくとも、たとえ1EP余ったとしても絶対に取らねえからな」
俺はそう心に固く誓った。
この誓いを破るのは、目星先生がこれを取れと言った時くらいだろう。
「あとは、状態異常系がなんか増えてるか? それとゾンビの声真似……」
今までゾンビの攻撃を食らってなかったから知らなかったが、もしかしたらゾンビはゾンビらしく麻痺攻撃とか毒攻撃とかしてくるのかもしれない。
そう聞くと、途端に背筋が冷える。
ダンジョン攻略系のゲームで毒はやばい。
そもそも生身の肉体の時点で毒を食らったらやばいのは当たり前なのだが、基本的にダンジョン系では、回復手段のない毒=死と同義だ。
同様に麻痺もやばい。というかソロでやっている以上はやばくない状態異常はない。
麻痺ったらなぶり殺しだし、眠ったらなぶり殺しだし、毒ったら帰れずに死ぬし、混乱しても助けてくれる人はいない。
今まで運良くゾンビから攻撃をもらっていなかったが、もしかしたら、かなり危険な橋を渡っていたかもしれない。
「とりあえず、耐性はそのうち取るとして、回復アイテムを一つずつ買っておくか。ゾンビを納品したからきっと増えてるだろ」
自分が麻痺したときに果たして自分で回復アイテムを使えるのかという問題はある。
そこは、いきなり全身麻痺じゃなくて傷口から徐々に麻痺していくタイプであることを願うしかない。
というわけで、目下欲しいスキルが増えたが、全部買うわけではない。
というか、全部買ってもCPの関係で多分設定できない。
今から買う隠密シリーズで、すでにカツカツなんだから。
EP268→161
一気に『聞き耳』『危機感』『すり足』『早足』『気配察知』『隠密』を購入した。
それぞれの性能はこんな感じ。
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聞き耳:より繊細に音を聞き分けられるようになる。コストCP:2
危機感:自身が危険な状況になったとき察知する。コストCP:3
すり足:足音を減らす。コストCP:2
早足:あらゆる動作で、速に1.1倍の補正をかける。コストCP:10
気配察知:周囲のモンスターの気配を察知する。コストCP:10
隠密:自身の気配を消し周りに気付かれにくくなる。コストCP:20
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合計でコストCPが47。
俺の現時点でのCPがこんな感じ。
最大値100。
不意打ち:コストCP:2
集中力:コストCP:5
罠感知:コストCP:5
悪臭:コストCP:5
ストレージ(極小):コストCP:30
で使用中が47。
計算してみると。
100-47-47=6
「いやCP6は流石にアホだろ」
コストがカツカツにも程があった。。
せめて10くらい残しておいてくれればまだ考慮の余地があったのに。
「さすがにCP6で突撃は無理だ無理。三階層の下見にいく前にちょっと吟味しておこう」
とりあえず、三階層は様子見だ。
一旦、食えるモンスターが出現するかを判断するため、見学する感じにしたいので、不意打ちは外していいだろう。
というか、何があっても逃げられるようにしておけば、あとは要らないか。
「必要なのは、集中力、早足、気配察知、隠密、ストレージかな」
これだと合計でコスト75。
余りが25はめちゃくちゃ心もとないが、強打と目星に使える分は残る。
最低限活動するには十分か。
いや、やっぱり不安だ。
「三階層の下見をしてからレベルを上げるつもりだったけど、先に上げてしまうか?」
ゾンビの心臓のおかげで想定以上のEPが手に入り、なんと1レベル分は上げられるのだ。
今上げておけば寝てる間に回復するし、運の重要度も上がったことでステ振りも見直したいところなので、今上げてしまうのも良いか。
「そうしよう。EP抱えたままうっかり死ぬことになったら死んでも死にきれない」
というわけで、俺は残ったEPをレベルアップに注ぎ込むことにした。
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【レベルアップ】
所持EP:161
レベルアップに必要なEPは130です。
レベルアップが可能です。
レベルアップしますか?
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レベル6からレベル7が90だったから一気に40も増えたことになる。
この上がり幅は未だに良くわかってない。
「レベルアップします」
おそらく七度目のレベルアップ。
相変わらず慣れることのない粒子の行ったり来たりを終えて、また一つ自分の中の器のようなものが広がった感覚。
すでに感動のようなものは大分薄れている。
俺が強くなるのは、死なない為。そして茉莉ちゃんを取り戻すためなのだ。
浮かれている場合ではない。
『レベルアップが完了しました。ステータスの割り振りを行なってください』
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残りポイント:3
力:11
魔:16
体:8
速:16
運:12
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改めてステータスを見ると、見事な紙装甲っぷりである。
いや、これでも称号効果で体も1は増えてるんだけどね。
「とりあえずの方針は、どうするべきか」
この先に就けるジョブがなんなのか、できれば教えて欲しいところだ。
スキルの隠密っぷりを考えると、斥候系か、忍者かといったジョブは生えていてくれそうな気がする。
あと、魔にがっつり振って火炎魔法も覚えたから、魔法使い系もあるとは思うんだ。火炎魔法使ってないけど。
「今から耐久に振るのはもう遅い気もするしな。魔速を上げつつ運と力を交互振りか?」
パッと浮かんだのは、そういう魔法戦士系のビルド。
速を上げるのは俺の方針で間違ってないし、魔もカツカツのコストを助けてくれる。
あとは力と運に交互に振って最低限を確保しつつ、体は捨てる。
「ちくしょう。一番捨てたくないステータスなのに」
命を大事にしたいのに、ソロで戦わなければいけないという環境が命を守るステータスを捨てさせてくる。
ソロで耐久高めても、耐えてる間に仲間からの援護射撃とかないから仕方ないのだが。
「これじゃ背水をバカにできないな」
自嘲気味に言いながらステ振りを済ませた。
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残りポイント:0
力:11→12
魔:16→17
体:8
速:16→17
運:12
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綺麗に対照な感じの値になってちょっと気持ちいい。
全部4の倍数だったらもっと気持ちよかった。
ただ、現状はこれで正解なはず。今回は力に振ったので、次は運に振る。
『ステータスの割り振りを確認しました。次のレベルに上がるために必要なEPは160です。レベルアップを終了します』
増加幅は30だった。
やはりよく分からん。
とりあえず、今のステータスはこんな感じだ。
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上杉 志摩
ノービス(無職)
レベル8
所持EP:31
HP108/108
CP39/64(使用中47/111)
力:12
魔:17
体:8
速:17
運:12
【所持スキル】
[パッシブスキル]
聞き耳 危機感 すり足 早足 気配察知 隠密
【セットスキル】
[パッシブスキル]
不意打ち 集中力 罠感知 ストレージ(極小)
悪臭
[アクティブスキル]
強打 目星 測量 火炎魔術(初級) 簡易鑑定
【称号】
『屍鬼を喰らいし者』
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だいぶCPに余裕ができたようだ。
これなら、全部盛りでいっても17も余る。
17かぁ、ぎりぎり行けないこともなさそうだけどなぁ。
明日になってから考えるか。
「とりあえず、ステータスをいじるのはこのくらいか」
思ったよりも考え込んでしまったが、そろそろ寝る時間だ。
だが、寝る前にやりたいこともある。
「寝てる間に回復するCPを使って、火炎魔法の訓練がしたい」
取ってからまだ一回も使っていなかった火炎魔法のお試しである。
これが上手くいったら、明日には手札が増えているかもしれない。




