第24話 当面の目標2
ただ生きるという、生き物としての最低条件の確認は終えた。
出たとこ勝負の事柄も多いが、今は一旦置いておく。
ではここから、具体的な方策を練っていこう。
生きるというのが成ると仮定した上で、俺がやるべきことを箇条書きにしていく。
【外でやること】
・食料以外の物資の調達
・ダンジョンで役に立つ装備の作成
・情報収集
・ゾンビの習性の確認
・避難所や生存者の確認
【ダンジョンでやること】
・茉莉ちゃんを治すためにダンジョンに潜る(含む情報収集)
・ダンジョンに潜るために自身を強くする
・自身を強くするためにステータスやスキル、ジョブの確認
・有用なアイテムの確認
・武器防具、装備類を調達する方法を考える
まず、外でやるべきことを整理しよう。
一番優先順位が高いのは、情報収集だろう。
確認すべきことを後にだらだらと書いてしまったが、なんにせよ、外で何があったのかを正確に把握しておくことは大事だ。
メッセージが届いた時間から、ゾンビパニック発生時間はだいたい確認できるだろう。
それ以外の情報をどうにか取得できないか、何か残っていないかを探す。
それに付随して、外で活動するためにはゾンビをどうにかしないといけない。
ゾンビの習性を知ることは、外で活動する上で重要なことだ。
最初から目星を使いまくって怪しい場所を避ければ、とかも考えるが、アクティブスキル頼りはいざという時に怖い。
一番期待したいのは『悪臭』スキルだが、モンスターのゾンビとは根本的に違う存在っぽいし望みは薄い。
というわけで、まずは、ゾンビの動きをどうにか観察するところから始めたい。(具体的な案はノープラン)
ダンジョン内で生活が完結するようになれば、無理して外に出る必要自体はなくなるのだが、茉莉ちゃんを元に戻せた暁には、いずれ外の世界と合流しなくてはいけないことは念頭に置いておかなければいけない。
彼女を夜柳さんご夫妻に送り届けてようやく、俺は責任を果たしたといえる。そのとき、どこに向かえば良いのか分からないじゃ困るのだ。
彼女が目覚めたとき、文化的な生活を取り戻せるかは、外の状況にかかっている。
「俺はもう、風呂に入って清潔にとかは半ば諦めたが、茉莉ちゃんにそれを求めるのは酷だろうしな」
そうやって、茉莉ちゃんが元に戻った時のことを無理矢理に考えて、俺は現状のため息も腐るような最悪の世界をくさした。
……外の人間がどれくらい生き残っているのかは、考えないようにする。
「ただ、生活基盤が構築できたあとは、一旦ダンジョンに注力するでいいだろうな」
と、いろいろと考えてみたが外の世界そのものの優先順位は一段階落としておく。
先に述べたように、ダンジョン内で生活が完結するなら、無理に外に出る必要はない。ゾンビ化から救う手がかりはダンジョンにしかないわけだし。
外への接触は、最初のうちは最低限でいいだろう。
「その最低限をこなすためには、何が必要だ?」
外での活動を安全にするためにも、まずは自身の強化が急務だ。
ゾンビから身を隠すための隠密系のスキルはマストだろう。
ゾンビを見つけるためには気配察知系のスキルも欲しいし、ゾンビを無力化するための非殺傷スキルもあったらとても嬉しい。
ゾンビに負けないための身体能力や、いざという時の逃走スキルも鍛えたい。
外の世界の安全性を高めるためには、ダンジョンに潜るのが一番なのだ。
レベルを上げて、ステとスキルの暴力で突破するのが正しいゾンビアポカリプスの攻略法に違いない。
「……はぁ。どうして俺は、運なんかに振ってしまったんだ」
だから、俺はついさっきのヤケクソ振りをさっそく後悔している。
運がなんの役にたつかも分からない現状で、そこに3ポイントは明らかにやっちまった。
その3ポイントが速であったなら、外の世界でできることはぐっと増えただろう。
ゾンビのステータスがどの程度か知らないが、現状でも世界でそこそこ上位レベルの俺が、それなり振りしてきた速に勝ることは多分ないはずだ。
希望的観測すぎるか。
「まあいいや。ダンジョン探索を最初の軸にするなら、何よりも能力の見直しだ」
と、俺は結論づけて、グール戦以降はろくに見直しもしていないスキルやアイテム──それに強引に解禁されたらしいジョブを確認することにした。
端末をタップして、少し迷ったが最初にスキルを確認する。
隠密系のスキルが多ければ外での食料調達に、戦闘系のスキルが多ければダンジョンでの食料調達に比重を傾けたい。
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【スキル習得】
所持EP:0
[パッシブスキル]
聞き耳:2EP
危機感:5EP
すり足:10EP
棒術:10EP
ポーカーフェイス:10EP
早足:20EP
気配察知:20EP
ナイフ術:20EP
隠密:50EP
麻痺耐性(弱):100EP
ゾンビキラー:200EP
オートマッピング:2000EP
[アクティブスキル]
堅固:5EP
大声:10EP
急所突き:10EP
物真似:20EP
罠解除:20EP
声真似:50EP
背水:200EP
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うん、どこからどうみても隠密系だな。
そりゃ切った張ったの戦闘なんてグールくらいとしかやってないんだから当たり前だ。
俺の戦法は不意打ちとか、臭いに紛れてとか、そういう汚いのばっかりだ。
「となると、こそこそ隠れて探索するのが正解か」
ざっと見た感じでも『聞き耳』『危機感』『すり足』『早足』『気配察知』『隠密』なんて、いかにもな名前のシリーズを取ればだいぶ安全性は高まる気がする。
全部取るとコストがカッツカツになりそうなのがネックだが。
「というか、ゾンビキラーて」
なんでこんなパッシブが生えているのかはわかる。
短時間でゾンビを虐殺して回ったせいだろう。
外のゾンビに有効なのか分からないが一応内容は確認しておく。
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ゾンビキラー:200EP
ゾンビに対する高い戦闘適正を有する。
ゾンビに与えるダメージに1.5倍の補正をかけ、アンデッドに属する相手に与えるダメージに追加で1.1倍の補正をかける。
コストCP:20
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ゾンビ以外にもちょっと補正がかかるのはお得だね。
そしてゾンビ狩りだけを考えるなら、さらにお得だ。
「だけど、ゾンビを狩ってEPを貯めるために、ゾンビキラーをEP200で取るのはどうなんだろう」
その200で他の相手に有効なスキルとか取った方が後々有利なんじゃ、と思わなくもない。
ただ、外のゾンビにも有効かもしれないと考えると、悩むところだ。
足を狙って動きを止めるとかでも、ダメージ1.5倍は魅力的だ。
「端末くん。このゾンビキラーって外のゾンビにも有効なのかな?」
『外のゾンビ、の情報が不足しているためお答えできません』
「知ってた」
端末くんは相変わらず融通が効かない。
ただ、分からないということは、有効かもしれないということだ。
とりあえず、取得候補には入れておこう。
「とりあえず、パッシブはこんなところか」
軽く必要なEPを計算してみる。
2+5+10+20+20+50=107。
ゾンビキラーも入れるなら200足して307。
ゾンビキラーなしなら1日狩っていれば余裕を持って溜まりそうか。
「あとは、アクティブスキル……で増えているのが、背水、か」
グール戦のあのなりふり構わぬ戦いを評価されたのだろうが、名前からして効果がなんとなくわかる。
絶対、防御とかHPとかを犠牲にして攻撃力とか上げるやつだよ。
取るわけないじゃん、そんな危ないスキル。
命を大事にの方針に変わりないんだから、それより逃走スキルだよ。
「もし、グールからなんとか死に物狂いで逃げきっていたら、逃走スキルが生えてたのかな」
もう過ぎ去ったイフの話ではあるが、なんとなくそんな気がした。
スキルはどうやら、俺の行動や意思に影響されて取得候補が増えているみたいだからな。
ずっと『逃げたい』と思っている俺の意思をもっと汲んでほしい。
「そういえば、称号の確認もしておかないとだったな」
さっきは、やけくそな気持ちだったので全く確認する気が起きなかった称号も、ダンジョンに再び潜るなら改めて確認がいるだろう。
一度スキル画面を閉じてステータスを開く。
称号の欄に燦然と輝く『屍鬼を喰らいし者』という称号をタップしてみた。
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『屍鬼を喰らいし者』
ゾンビたちの頂点捕食者であった屍食鬼グールを狩った証。
すなわち、貴方こそが死体を貪る真の屍鬼足り得るだろう。
ステータス補正:力+1、体+1、速+1
この称号を持つものは闇に属するものに一目置かれるようになる。
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「そんな厄い感じの連中に一目置かれたくないんだけど! そして死体を貪るとか不吉なこと言うんじゃねえよ!」
ゴブリン食と同じくらいゾンビ食も嫌だよ俺は。




