表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンサバイバルinゾンビワールド  作者: score


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/40

第22話 救済という名の毒




『ダンジョン18764番へようこそ。上杉志摩様。おかえりなさいませ』

「…………くそ」


 入った時に聞こえる挨拶は、いつもの、ダンジョンへの挑戦を歓迎する挨拶ではなかった。

 まるで、俺がダンジョンに戻ってくるのが最初からわかっていたかのような挨拶だった。


 それもそうだ。

 俺がグールを倒してから目覚めた時点で、すでにお知らせは届いていた。

 ということは、その時点ですでにダンジョン側は世界がどうなっているのかは把握していたということ。

 そして、俺がここに戻ってくることまで、織り込み済みだったということ。


「俺が世界に絶望して、自殺したらとか考えないのかね」


 思って見たが、きっとこいつらは考えないんだろうな。

 多分、人間の心情とか、そこまで理解してない気がする。それよりは自分たちの都合優先というのをひしひしと感じる。


「……端末くん。お知らせを、見せてくれ」


 歓迎の挨拶の考察もそこそこに、俺は端末に声をかけた。

 タッチパネル式で操作することもできるが、ダイレクトに目的地にたどり着ける声でのお願いも、こういう時には楽だ。

 何より、自分では怖くて開けないお知らせを、強制的に開いてくれるから良い。


『かしこまりました。まずは全人類に向けられた連絡です』


 全人類、というのが大げさでないのなら、俺はそこに少しの希望を見出す。

 これが日本人だけだったら、俺がゾンビウイルスをばら撒いた説が有力になるが、世界規模だったら、流石に俺だけが原因ということはないだろう。

 最低でも、俺以外に複数。もしくは俺が原因じゃない可能性もある。


 そして、端末が開いた文章を、俺は斜め読みしていく。



【世界規模で発生している災害に関してのお知らせ】


 この連絡は全人類に対して発信しています。

 この度、世界で同時多発的に発生している災害、通称『ゾンビ災害』についてお知らせ、及びお詫びがございます。


 この度発生している災害について、人類の皆様が真相にたどり着くのは難しいと判断し、こちら側で情報を開示することと致しました。

 人類の皆様におきましては、まず事態を正しく認識していただきたく思います。


●直接の原因


 この災害が発生した直接の原因は、我々がダンジョンの入り口を無作為に開いたことになります。

 このダンジョンの入り口の一つが、某国の研究施設の厳重管理施設に出現した際に、その研究施設にて秘密裏に開発されていたウイルス『X-Zda23』の漏洩を引き起こしました。


 このウイルスの効能は、人類に感染することでその意識レベルを低下させ、行動を本能に忠実に変質させるものであり、世界の皆様がおっしゃるところの『ゾンビ化』を引き起こすものとなります。


●感染拡大の原因


 上で説明したウイルスについてですが、こちらは本来、感染力はそれほど高いものではございませんでした。

 感染者に噛みつかれる、血液、体液に直接触れるなどによって感染するものとなります。

 感染者は無意識に感染拡大のための行動を取りますが、その制圧はそこまで難しいものではございません。


 しかし、こちらのウイルスはあろうことか、ダンジョンの出現により世界に拡充され始めていた魔力との高い親和性を有していました。

 それによって、ウイルスは独自の進化──ステータスを獲得し、その性能を感染拡大と呪毒化に割り振りました。

 そのため感染者は急速に増加し、直接的な感染であれば即座に、ただ生活しているだけでも空気感染によって四日から一週間程度で症状が発症するまでに至りました。


 また、魔力に高い親和性を得たウイルスは、感染者にもステータスを与え、魔力による活動を可能とさせます。

 そのため、感染者はエネルギー補給の必要がなく、死ぬか治療されるまで動き続けるものと考えられます。


 こちらは、我々の想定を越えた事態であり、人類の皆様に多大なご迷惑をおかけしたこと、誠に申し訳なく思います。


●感染対策について


 上記のウイルスへの対策として、我々からの譲歩がございます。

 詳しくはお知らせの『ダンジョンからの人類への救済措置』をご確認ください。


●最後に


 この度は、想定外の事態により、人類の皆様に多大なご迷惑をおかけしました。

 しかし、皆様はこの事態を乗り越えることで、さらなる成長ができるものと確信しております。

 我々は、皆様のダンジョンへの挑戦を心よりお待ち申し上げております。


 連絡は以上になります。

 それでは皆様が良き明日を迎えられますように。




「…………ふざけてんのか」


 ざっと読み込んだだけで、俺はなんとも言えない気持ちになった。

 このお知らせがそもそも正しいのかという疑問はあるが、そこを疑っていたらキリがない。


 ひとまず、良かったところを挙げるとするなら、どうやら、世界のゾンビ災害は俺が引き金になったというわけではなさそうなところ。

 悪いところは、その他の全部といったところか。


 そもそも、こうなった原因がまず、お前らのせいじゃないか。


「ゾンビに噛まれたら感染、空気でも感染、おまけにゾンビはエネルギー切れを起こさず行動する。ステータスも獲得しているから一般人よりは強い。書かれていないが、成長する可能性も否定できない」


 これのどこに、人類が滅亡を回避する要素がある?

 どう考えても、人類総感染者ルートしか見えてこない。


 ダンジョン側の連中も、お詫びとか言っているけど『想定外のことが起きちゃったわごめん。でもま、応援してるから頑張って!』ってくらいの軽さでしか謝ってない。

 どう考えても、人類に寄り添う気がある連中の言うことじゃない。



『続きまして、救済についてのお知らせです』



 俺の感想は置いておいて、次に端末は、先ほど書かれていた『救済措置』とやらについての情報を開示する。



【ダンジョンからの人類への救済措置】


 今回の災害に対する譲歩として、人類の皆様に以下の救済措置を行います。

 存分にご活用ください。

 なお、各救済措置の詳細を希望の方は、こちらをご覧の端末へ直接お問い合わせください。


●救済措置


・ダンジョンに入った方にはウイルスに対する抗体を与えます。この抗体はダンジョンに入ってから七日間有効です。抗体はダンジョンに入るたびに更新されます。

※なお、この抗体は空気感染を防ぐものであり、直接の感染を防ぐ強さはありません。


・ダンジョンで入手できるEPを減らし、ダンジョン内のモンスターの肉体の一部などをドロップさせる機能を追加します。現実世界での食料の確保が困難であると感じた場合にご活用ください。

※なお、全てのモンスターが食用に適しているとは限りません。


・感染者の識別や、感染の状態を確認できるように『簡易鑑定』のスキルを無料で配布いたします。


・ダンジョン内での居住を可能とするため、同じ階層にとどまることで出現するスローターボスのポップを中止致します。


・生活能力確保のため、特別措置としてレベル1の段階でもジョブに就けるようにします。

※ジョブの詳細は端末へご確認ください。


・症状が発症している人類を元に戻す手段をご用意しております。ぜひダンジョンの中でその手段を見つけ出してください。


 以上になります。

 なお、今回の救済措置の他にも必要であると判断されたものは随時追加される場合がございます。

 また、上記の救済措置が悪用されていると判断した場合に、措置の取りやめを行う場合もございます。


 ご留意ください。



「どうあっても、人類に『ダンジョンに入れ』と言ってやがる……」



 救済措置を眺めた俺の感想は、そんなところだった。

 どこが救済措置だとも言いたい。

 人の弱みに付け込んで、自分の要求を通そうとしているだけじゃないか。


 そもそも、お前らのせいでウイルスが蔓延しているのに、その抗体は時限制で七日しか保たない。

 こんなの『一週間に一度はダンジョン入れよ』と暗に言っているのと変わらない。


 それだけじゃない。

 今、他の人々がどういう生活をしているのかは分からないが、避難所の近くにダンジョンの入り口があるとは限らない。

 仮に近くにあっても、一週間に一度は、ゾンビ溢れる外に出て、ダンジョンに入らないといけない。

 大量の人々を安全に生活させることは、きっと難しい。


 だから、こいつらは人間が『ダンジョンに住めるようにする』と言っている。


 ダンジョンの中に入れば、嫌が応にもモンスターと戦うことになるだろう。

 外でゾンビに怯えながら、食料を食いつぶしていても、いずれは食料が枯渇する。

 そうなった時、人はダンジョンの中で、モンスターを狩って、それで食いつないでいくことになる。


 たまたまダンジョンの近くでよほど広い場所を確保できて、人を食わせるための畑を作れるような恵まれた環境を構築できれば別だが、現実的には難しいだろう。


「そしてそれは、他人事じゃない」


 かくいう俺にとっても、このお知らせは決して流せることじゃない。

 俺の生活がどうとか、そういう細かいことを抜きにしても、最後の一文があまりにも、あまりにも『甘い』のだ。



・症状が発症している人類を元に戻す手段をご用意しております。ぜひダンジョンの中でその手段を見つけ出してください。



 茉莉ちゃんの姿が脳裏に過る。

 彼女を取り戻せる可能性を、ダンジョンは用意していると言っている。


 これは、茉莉ちゃんを救いたいと願った俺には、抗いようのない甘い毒だった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ