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ダンジョンサバイバルinゾンビワールド  作者: score


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19/25

第19話 これからに幸あれ



「体が、いてえ」


 俺が目を覚ましたとき、最初に覚えたのはそんな感想だった。

 硬いところで眠ったが故に、体の節々が痛むのもある。

 だが、それよりも血が変に固まってひりつくようになっている両腕が痛かった。


「うわ、これやべえ」


 目を覚ますと、自分がいったいどんな状態で眠っていたのかを嫌が応にも自覚してしまう。

 グール相手にギリギリの状態で勝ったのは覚えているが、そのあと傷の手当てもせずに眠ったのは、完全な悪手だ。

 こんな、バリバリの切り傷を放置して眠るとか、傷に「どうぞ膿んでください」と言っているようなものじゃないか。


「いやまぁ、その割には平気なんだけど」


 しかし、そんな正直な感想とは裏腹に、ひどい状態ながら傷はしっかりと塞がり始めている。

 今までの人生で何度か切り傷を作ったことはあるが、もっと軽いものでもここまで回復は早くなかったはずだ。

 とりあえず飲み水で傷を洗ってみたら、少し染みたものの、綺麗に回復を始めている傷口があらわになった。


「体のステータスも、やっぱこういうところに関わってきているってことかな」


 初期ステータスはすでに盛られた状態、というのをさらに実感した。

 魔がなんの役に立つのかはともかくとして、力も体も速も、そして運も俺の今後の生活には大きな影響を与えうるのだろう。

 ダンジョンに潜れば潜るほど、そうなっていくのだ。


「……ふふ、ははは、バカか」


 考えてから、俺は自嘲気味に呟いた。

 こんな状況で、言うことか?

 こんな、こんな、ステータスに浮かれ、目先の魔法に釣られた挙句に、ダンジョンを舐めて死にかけた状況で、今後の心配か?


 流石のゲーム脳だって、分かる。

 俺は、もうダンジョンには潜れない。潜らない。

 思い出しただけでも、グールと遭遇した恐怖が、向けられた殺意が俺の足を掴んで離さない。


 そう、俺はダンジョンが怖いのだ。

 もう2度と潜りたくないと思える程度には。


「帰ろう。帰って、ちゃんと政府に報告して、それで終わりにしよう」


 心の折れた俺は、今後の方針をそう定めた。

 もちろん何らかのお咎めは覚悟の上だが、日本が正直に報告した一般市民をいきなり殺すことはないはずだ。

 グールのような存在がいることや、魔法の存在を手土産にすれば実験に付き合うことと引き換えに無罪もあるかもしれない。


「帰ろう」


 もう一度、強く呟いてから、俺は周囲のものを拾ってダラダラと歩き出した。

 目についたゾンビを狩ることすらしなかった。

 グールを殴り続けた金属バットは、少し歪んでいた。






『お疲れ様です。上杉志摩様』


 二階層の端末の前まで戻ってくると、不意に声をかけられた。

 端末の方から声をかけられるのは、初めての経験だった。


「どうか、したのか?」

『お知らせが二件届いて居ます』


 お知らせ?

 それは、様々なソシャゲユーザーが読まないことに定評のある、運営からのお知らせというやつだろうか。

 俺はどちらかと言えば、新着はちゃんとチェックする派閥だが、今の気分では積極的にはなれない。

 俺はもうダンジョンに関わるつもりがないのだから。


「後にしてくれ。先にEPを消化したい」

『かしこまりました』


 お知らせ強制表示機能はないらしく、端末はいつもの調子に戻った。

 今までのメニュー欄の上に『お知らせ』が!マーク付きで表示されているが、当然のように無視してステータスを見る。


 ──────

 上杉 志摩

 ノービス(無職)

 レベル6

 所持EP:494


 HP64/87

 CP18/35(使用中47/82)


 力:11

 魔:16

 体:8

 速:16

 運:9


【所持スキル】

 なし


【セットスキル】

 [パッシブスキル]

 不意打ち 集中力 罠感知 ストレージ(極小)

 悪臭


 [アクティブスキル]

 強打 目星 測量


【称号】

 『屍鬼を喰らいし者』

 ──────


 HPとCPの値から、俺が眠っていた時間はおよそ6時間強だと推測できる。

 傷を負った事実からHPは一度0になったはずだし、無意識に強打を使って居たからCPもほぼ枯渇していたはずだ。

 そこから、全快はしないまでも、かなりの値まで回復している。


 所持EPは494。当初の目論見通り、火炎魔法が買える。しかもレベルアップがおまけで付けられる。

 グールと戦うまで俺がどれだけのEPを貯めていたのかは定かではないが、400は溜まってなかったと思うから、グールのEPは120〜100くらいだろうか。


 あれだけ死ぬ思いをして、ゾンビの10倍強。

 妥当と見るか、多いのか少ないのか。

 少なくとも、俺は命の対価としては あまりにも安いと思う。


「それと称号ね……」


 グールを倒したとき、薄ぼんやりとした意識の中でそんなことを言われたような気がしないでもない。

 これじゃまるで俺がグールを捕食したみたいで、ちょっと気分悪い。

 だが、まぁ、どうでもいいか。


「最後に、火炎魔法だけは取っておく」


 死ぬ思いをしたのは、元はと言えばこれのせいだ。

 正直言えば、もうどうしても取りたいわけでもないのだが、あれだけの思いをした成果が一つもないのも収まりが悪い。


 ステータス画面を閉じ、スキル習得のリストを開くと、見慣れないスキルが表示されているのに気づいた。


──────

 簡易鑑定:0EP


 対象を簡易に鑑定する。

 コストCP:0

──────


 なんだこの取り得みたいなスキル。

 少なくとも、今までは絶対にこんなスキルなかった。あったら取ってる。

 そして出現した心当たりは全くない。となると。


「さっきのお知らせか?」


 ダンジョンの製作者から、テコ入れが入ったのかもしれない。

 そもそも簡易なことは端末に聞けば教えてくれるのだが、そのためにいちいち端末に戻るのも手間だしな。

 冒険を円滑に進めてほしい製作者の、優しさだろうか?


「おしおきボスをいきなりポップしたやつに優しさがあるのかは知らんがな」


 俺は複雑な気持ちになりながら、一応取った。

 もう潜る気はないのに、タダには負けた。

 あとは当初の予定通り、火炎魔法(初級)のスキルも取って、残りは94ポイント。

 他にも少しだけ増えていたスキルは全部無視して、レベルアップに突っ込む。

 俺はステ振りに迷わず、こうした。


 ──────

 残りポイント:0


 力:11

 魔:16

 体:8

 速:16

 運:9→12

 ──────


「これからに幸あれってな」


 これからの人生に、若干暗い予感がするのだから、運ぐらいは高くあってほしい。

 せめて、いきなりおしおきボスに遭遇するような運からは解放されてほしい。

 と、自分に説明してみたが、ただの『やけくそ』だ。


「それじゃ、おうちにかえるか」


 レベルアップを終え、微妙に残ったEP4はまるっと無視する。

 どうせ、もう潜ることはないダンジョンのポイントだ。

 なんなら、政府に連行されるまでの間に、そのEP結晶で茉莉ちゃんにちゃんとしたアクセサリーを作れるように頑張ってみるか?


「そんな暇あればだけどな……」


 あとは、お上の動き次第。

 俺は重い足を引きずりながら、のそのそと一階層に向かう階段を上っていくのだった。



──────────

冒頭まで残り……

──────────



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