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紫電の聖女と護衛騎士 〜それはたとえば物語の中盤に隠しキャラとして出てくる癒しの力を失った聖女様が、逆転でヒロインに上り詰めるような話〜  作者: さつ。
第二章

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7.村娘と旅の仲間

「ルジェル、これでどうですか?」

「ん? お、いい感じじゃん!」


「……二人とも、そんなに仲よかったか?」


 切って捌いて取り分けて。

 メイナとルジェルがそんなことをしていれば、敵を倒し終わったらしいリースとスヴァイが戻ってきた。


 きょとんとした表情でスヴァイが言った言葉に、メイナとルジェルははっとして顔を上げる。


「わ、大物ですね」


 途端、目に入ったのは巨大な熊にもたれかかられるリースとスヴァイの姿だった。

 どうやら戻ってきた二人は、とびきり大きな熊型の魔物を持ってきたらしい。

 各々一匹ずつ背負うその姿はまさに圧巻である。


「ほとんどスヴァイが一人で倒したんだけどな……マジで助け甲斐なかった」


 どちらかと言えば小柄な方の熊を背負っていたリースが、げっそりしながら獲物を下ろす。

 どうやら必要以上にくたびれたみたいだ。


「お疲れ様です、リース」

「おー」


 そんなリースに、メイナは笑いを零しながら労いの言葉をかける。対するリースは気の抜けた小さな返事を返した。


 それをバトン代わりに、メイナは改めてリースが下ろした熊に向き直る。


 さて、どこから分けようか。


 こういった、可食部の多い魔物は切り分けた部位の見栄えにも気を遣う必要があった。

 何せ、それがそのまま商品になるのだから。


 少しでも綺麗に切り分ければ、買い値が倍になったりもする。せっかく売るのならば高いほうがいいに決まっている。


 真剣に熊と向き合い始めたメイナを横目に、リースはため息をついて座り込んだ。

 どうやら本当にくたびれてしまったらしい。


 と、その隣ににんまりと笑ったルジェルがしゃがみ込みせっつく。


「スヴァイに助け甲斐がないのなんて、今に始まったことじゃないだろ」

「本当にな。もう二度と手伝わない」


 ジト目のリースと、にやけ顔のルジェル。

 そんな二人の視線の先にはスヴァイがいた。


 苦笑いを零したスヴァイはようやく自身の獲物を下ろす。

 ずしんと、先程リースが下ろしたときにはなかった地鳴りが響き、思わずメイナはそちらに目を向ける。


「まあこれぐらいなら俺一人でも大丈夫だったが……流石にもっと危ないときは助けてくれよ?」

「なあ、ルジェル。スヴァイがまた適当言ってるぜ」

「はは。なあメイナちゃん、どう思う?」

「私ですか?」


 メイナの注意がすっかりスヴァイ達に向いていたことに気がついたのか、ルジェルに話を振られてメイナは首を傾げた。


「こいつ、ほんと凄いんだぜ。何せ、嫌がらせで一人向かわされた岩山で、ドラゴンの首を取ってしれっと生還してたりしてるからな」

「ドラゴン……」


 確かめるようにメイナはスヴァイに視線をやった。

 しかし彼は否定することもなく、曖昧な笑みを浮かべているだけ。


「本当の事だぜ」

「それは……私に助けられることはなさそうですね」

「僕にもないよ」


 かつて訓練の失敗でケガをして、それを不名誉だと隠そうとしていた少年は、もう随分と遠い存在になっていたみたいだ。


 それを実感して、メイナは少しだけ胸が痛む。

 もちろん、そんな思い出を語り合うつもりはないけれど。


「オレにも戦闘面じゃないなあ。ま、これを捌くのぐらいは手伝えると思うけど」


 黙り込んだメイナの不自然さはどうやら見逃されたらしい。

 大きく伸びをして、ルジェルはスヴァイが持ち帰った大きい熊の近くにしゃがみ込んだ。


「こっちはオレがやっとくから、三人でそっちのやつ捌いちゃって」


 僅か十五秒。それだけ熊を見つめたルジェルは驚くほど正確にその体を捌き始める。

 その姿を横目に見て、メイナは改めて小柄な熊――そうは言っても体長3メートルはある――に向き直った。




「ま、これだけあればしばらく金に困らなそうだな」


 分けられた素材をそれぞれ詰めて、二袋。

 二回り小さく、軽い方の袋を背負ったルジェルが満足そうに告げた。


 解体を初めて約三十分。


 圧倒的な速さで一匹目の解体を終わらせたルジェルの手も借りて、計二体の解体を終えた一行はそれらの素材を抱えて、次の街へと向かっていた。


 向かう先はフィーアの街。

 ドライ村に住んでいたメイナにとっては、たまの祝い事の際に買い出しへ行くような、少し開けた街だった。


「街につくのは昼過ぎか。ふむ、悩ましいところだが今日はこのままフィーアに泊まっていこう」

「賛成。さっきこのデカブツも倒したし、さっきから雑魚も大量に出てくるし。疲れた」


 ルジェルと分けた、もう一袋を軽々と担ぐスヴァイの提案に、リースは諸手を挙げて賛成する。


 手ぶらなリースは道中の露払いが担当だ。


「そうだねぇ。オレも肩凝ってきちゃった」

「ルジェル、袋を運ぶのを少し代わりましょうか? 貴方には解体の際にも随分と頼ってしまいましたし」


 露払いとは言っても、先ほど倒した熊2匹がボスだったようで、以降出てくるのは本当に小物ばかり。

 そいつらはリースが倒してしまうため、彼と同じく荷物を持っていなかったメイナはすっかり手持ち無沙汰になっていた。


「んー、ありがたいけど、止めたほうがいいんじゃない?」

「なぜです? 私、そこまで非力じゃないですよ」

「そりゃそうだけど……まあ物は試しか」


 いきなり腰に響かないよう、ゆっくり持ち上げるんだよ。


 そんなルジェルの助言に頷いて、メイナは彼が降ろした荷物を持ち上げる。


 いいや、持ち上げようとした。


「ん⁉」

「どう? 持てそう?」

「……少しなら」

「うーん、2センチは浮いてるかなあ」


 へらりと軽い笑みを浮かべて、ルジェルはメイナの持つ袋を簡単に担ぎ直す。


 思わずメイナはその姿を見上げ、それから思い切りスヴァイの方を振り返った。


「あれ、とんでもないでしょ」

「なんていうか、その、はい」

「それ以外言葉ないよねぇ。ちなみに本人の要望でホントに隙間なく詰めたから、こっちの3倍ぐらい重いよ」


 それを表情に少しも出さず、運んでいるのか。


 メイナの驚愕を余所に、スヴァイは肩が凝ったのか、片腕を支点にして右肩から左肩に袋を持ち替えている。


「あれ、中に小さめの袋もいくつか入ってるから、あっち手伝ってきたら?」

「そうします……あまりにも、余計なお世話かもしれませんが」


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