少女との出会いと変身
私は灰色の壁の内側に入ろうと、入国審査を待つ荷馬車の荷物が置かれた位置に身体を隠した。
荷馬車が灰色の壁の内側に入っていき、私は飛んでいき、人間族に見つからないように移動していく。
私は裏路地を飛んで、進んでいく。
中年男性らが酔っぱらい、喧嘩を繰り広げていたのを通り過ぎて、静かな場所を目指した。
静かな場所へと目指しているのに、だんだんと怒声が飛び交う場所に近づいていく。
なんだ、騒がしいな……。
「おぉーい、前の者らぁ!トロイ盗賊団らが来てるから気を付けろよ!?」
「おーい、危ねぇぞ、そこの者ら!!」
前方から駆けてくる集団が見えてきた。
逃げ遅れた少女が取り残され、盗賊団らしき黒装束に短剣で斬りかかられていた。
少女が倒れて、苦痛で顔を歪めたのを見て、止まり細く長い触手を伸ばし、掴んで路地に避難させた。
「大丈夫か!?おい、おまえ大丈夫か?なぁ、おい!!」
私は声をかけてみるが、斬られた少女は未だに苦痛に顔を歪め、呻いている。
私の声が聴こえていない、彼女に。
草原では魔物相手だからと試していなかったが念話を試した。
〈大丈夫か!?おい、おまえ大丈夫か?なぁ、おい!!〉
〈……?えっ……この声っていうか、うぅぅっっ!!神ぃ……様ァです、かもしかして……?〉
〈聞こえてるか?目の前のスライムだ、話しているのは〉
「スライム……?このスライムが……空中を飛んだ気がっぶほぉっげほっげほっ。助けてくれたの、あなたが?」
少女の顔が生気を失っていく。
〈ああ。此処に住んでいる者か?親はいるか?〉
「ありがとう……此処に住んでる。居ないよ……」
〈そうか。おまえに変身しても構わないか?〉
「いいよ……あぁああぁぁ、もうぅ死ぃ……ぬんだね。あぁああぁぁぁ……も……っと、生きた……かぁっ……たぁ」
眼前の少女は息絶えた。
悲しいという感情が湧いてくるのに、涙が出てこない。涙が溢れない。
私は路地に少女の骸を置いておくのは可哀想に思え、身体を液状にして飲み込んだ。
私は彼女の容姿を真似て、変身した。
人間族の身体を手に入れたが嬉しさはない。
名前も知らぬ少女の死があり、私の魔生が続く。
少女の復讐を行うのは、何故か気が進まぬ。
私は魔物であるスライムだ。
かつて魔王であった私が、人間族の少女一人が死んだところで——となるはずだ。
私の魔生はこれからだ。
食欲は満たさなくても平気だ。
人間族に変身しているのだ、仕事をしなければならぬ。
魔物だとバレては話にならない。
少女の名はスヴィエトロです。




