♤生き残りの決心
マクベルが身体のこなしや能力向上に時間を費やしている同時刻、魔王城の城内の玉座の前の石段に腰を下ろし、頭をもたげ、意気消沈している幹部が一体居た。
「魔王様……貴方の様な強き御方があんな人間族に殺されるとは。あぁ……妾はどう生きれば……魔王様ァ、マクベル様ぁ……妾はどうしたら……」
頭を上げ、辺りを——玉座の前の地面を見渡す。
幾万体もの魔物——部下や幹部が屍となり、転がっている。
魔王城が聳える一帯は瘴気で人間族は抗体が備わっておらず死ぬというのに。
何故……あやつらは平然と此処に侵入出来た?
ここ数百年余り人間族の侵入をゆるしたことのない魔王城だというのに。
それにあの大剣はなんだ?魔王様を傷付けるどころか屠ってしまうとは……妾も油断していたのは確かだが。
幾十体の屍魔族が浄化されず妾の周囲を彷徨いている。
屍魔族の幾体が口を動かしているが、なにを発しているか判らない。
魔王城の壁や柱、地面、玉座と勇者一行が破壊していった。
立ち上がるのも億劫で、気力すら失せている。
妾が戦力を掻き集めているうちに勇者一行は妬まれたり恨みを買って人間族に殺されるか、病を患って死んでいくか、寿命で死ぬ。
妾一体では勇者一行に勝てない。
あの大剣があるのだ。
妾を諦めるしか無いのか……魔王様ァ、マクベル様……私めにご啓示をください。
魔王の勢力で唯一体生き残った幹部のラブォウロは諦観しながらも一縷の希望を掴もうと石段を下り、玉座に向かい合い、片膝をつき両手の三指を組み玉座に祈った。
その最中も屍魔族は背後で彷徨いていた。
ラブォウロが祈り続けても、誰も啓示を下すことは無かった。
ラブォウロが祈りを始めた同時刻、マクベルの身体に電流が走り、液状になり、呻き声を漏らすしか出来なくなった。
「ウゥ……ウゥァ、アァアアァ……ウゥゥ…………」
四度も太陽が沈み、明くる朝、漸く走り続けた電流が止み、弾める身体に戻れるようになった。
「あの者か……私に、我に最も忠実だったあの……ラブォウロか。先程の苦しみは彼奴のか……」
電流が止んだということは……私も一刻も早く何処かを統治出来る程の能力を備えねばならぬ。
ラブォウロが魔王城を発ち、仲間を集め出した。
ラブォウロが聳える魔王城の辺りの瘴気を紫煙晶という球に変え、瘴気を除去し、何処かの国を——マクベル様に再会し、この世を世界を恐怖で支配出来るように整えることを決心した。
妾に……遣えるご主魔様を屠った罪は重いぞ、人間族共——。
妾がお慕い申すのは貴方……マクベル様だけです。
また逢いましょう、魔王様。
図にのった人間族を屠りましょう、今度は魔王様と妾で——。