表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

弱き冒険者との戯れ

 私は広がる草原を瞬きしながら、眺める。

 草原の雑草は揺れているが吹いているであろう風の音が聞こえない。

 聞こえない、のではなく正確には洞窟や建物内で物音がこもっている感じだ。

 視覚は異常なしである。

 まずは、この身体(スライムえき)に慣れ、動かし方を修得せねばなるまいて。


 ……とはいうものの、どうしたものか……?


 以前の私は、人間族(ヒューマン)の身体構造が似ておっただけに、困惑するわい。液状の身体を現状の形態で、ある程度保てなくては話にならん。

 意識が緩むと忽ち、その場に液体になり広がる。


 ふぅ〜むぅっ、どうにか自由自在に身体を使いこなせるようにならねばっ!


 以前の身体をイメージしながら、腕に力を入れるトレーニングを開始した。

 鏡などといった物は草原にあるはずないので、現実には分からないが触手のような腕を生やすイメージを怠ることなく続け、小石を握り、放すといった動きをしてみる。


 どれくらい経ったか分からないが、触手を創造し維持出来るようになり、小さな物体であれば持て、触手から放すことが出来るようになった。


 その次は……魔物や人間族に攻撃された際の回避を会得せねば、短い生で終えてしまう。

 自身に脚が生えているイメージを固め、その場から跳ねてみる。

 空気が満たされた身軽な球状の物体になったように。


 太陽が真上に落ち着いた頃に、跳ねられるようになり、ひと息つこうとした所に、くすんだ金髪をハリネズミのように逆立てた闘い慣れていないように見える少年が現れた。

 少年が履いていた革靴(ブーツ)があまり汚れておらず、装備も無いような軽装で、そう感じた。


「やぁぁああぁぁあああぁぁ!!!」

 少年が一瞬だが躊躇を見せ、魔物が喰い千切ったような太めの枝を両手で握り、構え、突進するように私へと雄叫びをあげるように大口を開きながら掛けてきた。


 当然、少年が発している声が、言葉がどういったものかは私には分からない。

 ふぅ〜むぅ、スライムが物理攻撃で死ぬことがないことは理解している。ここは、少年の攻撃を受けてみるとしようぞ。

 眼前()の少年は、混濁し薄れる記憶にみる勇者じゃない。弱き冒険者でしかない、少年の攻撃……痛くも痒くもないだろう。

 私は回避することもなく、少年による打撃を受けてみた。

 視界がぐにゃりと歪み、打撃を受けた箇所が凹んだ。

 事実は、それだけだった。

 痛みは感じなかった、想像通り……


 少年は跳ね返った衝撃に身体のバランスを崩し、後方へと倒れ、尻を打ち痛みに顔を歪めた。


 この少年の生命を奪ってもなぁと思い、威嚇として、外さないように口を窄め、唾をびゅびゅっと、少年に対し飛ばした。

 〈【唾酸弾】んんーっっ!〉

 少年の肌が露出していない着ていた衣類に数弾、外れることもなく被弾した。

 唾が被弾した箇所から灰色の煙が上がって穴が空き、肌が見えた。

 少年は慌てた様子で、小さく見える遠い灰色の壁へと逃げ出した。


 人間族や魔物が現れないうちに、さっさと生き延びれるように身体の動かし方を修得せねばなるまい。


 さぁ、やろう!


 太陽が沈むまで精度を高めていく私だった。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ