第33話 異端の貴族
鉄格子の向こうにノルフが立っている。
ノルフは呆れ顔で深々と息を吐いていた。
色々と言いたいことがあるのだろうが、それを堪えているようだ。
私は硬いベッドに寝転がって笑う。
そう、閉じ込められているのはノルフではなく私だった。
ここは王城の地下監獄。
決闘後のゴタゴタで収監を命じられた私は、渋々と従って現在に至る。
ノルフは顔に手を当てて静かに嘆く。
「リアさん。あなたが暴走しがちなのは存じていましたが、まさかここまでとは……」
「仕方ねえだろ。ノリだよノリ。なんか戦い足りなかったのもあるし」
「ノリで伯爵家の精鋭部隊を倒さないでください」
「弱いのが悪いんだ」
解体されるメリッサを助けようとしたのは、ルードン家の精鋭部隊だった。
確かに実力者揃いだったが、無限に再生する私を制圧できるほどではなかった。
部隊のうち何人かを殺害、残りに重傷を負わせたのも問題が大きくなった要因かと思われる。
少し姿勢を変えた私はノルフに尋ねる。
「それで、私はいつ出られるんだ? 時間がかかりそうなら勝手に脱獄するけど」
「もう少しお待ち下さい。現在、こちらで協議を行っておりますので」
「私って犯罪者扱いになるのか?」
「そこも協議中です。特に上級貴族からの糾弾が凄まじいですよ。リアさんの存在そのものがお気に召さないそうです」
なんだか嫌われているらしい。
これまでの行動を考えたら当然か。
私は寝返りを打ちながら大きな欠伸を漏らす。
「まあ面倒なことは全部任せた。ノルフならなんとかできるだろ」
「無理難題ですが、かしこまりました。どうにか調整しましょう」
苦い表情のノルフだが、自信は伝わってくる。
やはり頼りになる執事だ。
彼なら上手い着地点を見つけることだろう。
今後の話が落ち着いたところで、ノルフが思い出したように言う。
「ところで決闘中に披露された技は何ですか。明らかに再生効果の範疇を逸脱しておりましたが」
「ん? 血肉の操作のことか? なんか色々練習してたら出来るようになったんだよ」
「血の一滴から新たな部位を作り出して動かす技もですか?」
「うん。どこまでやれるのか試したらあそこまでやれた。再生魔術って意外と応用力が高いよな」
「それはあなたの才能では……」
ノルフは呆れつつも感心している。
決闘で見せた技の一部は誰にも見せていなかったのだ。
驚かせてみようと思い、あえて隠していたので大成功である。




