第28話 決闘の日
決闘当日。
私達は馬車で闘技場へと向かう。
闘技場は既に大勢の客でにぎわっていた。
決闘の前座として賭け試合が行われているらしいので、それを観て盛り上がっているのだろう。
伝わってくる熱気に私は感心する。
「すげえ規模だな」
「ルードン家の威光を知らしめる機会ですからね。それと民衆の息抜き……娯楽の側面も兼ねております」
「私が公開処刑されるのを楽しむってことか?」
「否定は致しません。もっとも、それが叶うかは甚だ疑問ですが」
微笑するノルフを押し退けるようにしてシェリーが身を乗り出してきた。
シェリーは目を爛々と輝かせて言う。
「お姉様なら必ず勝てます! 今こそエルスワーズの名を広めましょう! そして王国を支配するのですっ!」
「壮大な夢だな。まあ悪くないけど」
「お姉様なら不可能ではありませんよ! さっさと決闘を終わらせて王座を狙いましょうね!」
「白昼堂々と国家転覆の話をなされないように」
ノルフに釘を刺されつつ、私達は馬車を降りて闘技場の控え室に移動する。
控え室は石造りの無骨な部屋だった。
貴族的な待遇は一切ない。
これも嫌がらせなのだとすれば、ルードン家の器の小ささが窺える。
特に準備もないので、私は椅子に座って待つ。
私の着るドレスを一瞥したノルフが尋ねる。
「服装はそれでよろしいのですか? 動きやすい服もありますが」
「令嬢らしさを優先したくてな。華やかに飾り立てた方が盛り上がるだろ」
私は鉈を回しながら答える。
するとノルフが少し困った顔で述べた。
「……無礼を承知で申し上げますが、リアさんが令嬢らしさを求めるのは厳しいかと」
「本当に無礼だな」
しばらくして闘技場の係員が私を呼びに来た。
ついに決闘の時間らしい。
私は特に気負わずに腰を上げた。
「そんじゃ、行ってくる」
「ご武運を」
「お姉様の勇姿を目に焼き付けますわ!」
ノルフとシェリーに見送られて決闘の場へと向かう。
観客に囲まれたその空間で待っていたのは、灰色の鎧に身を包む男だった。
男は胡散臭いで笑顔で名乗る。
「どーもどーも、エルスワーズのご令嬢。オイラの名はバジル。伯爵家で騎士をやっておりやす」
案の定、向こうは決闘の代理を立てたらしい。
私は観客席のうち、貴族専用の特別席に注目する。
そこにはメリッサ・ルードンがいた。
メリッサは蔑むように私を見下ろしている。
私は無表情で中指を立てた。




