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第2話 新しい生活

 目が覚めた時、私は見知らぬ部屋にいた。

 柔らかいベッドから起き上がり、自分の体の異変に気付く。

 全身の汚れが綺麗に洗い落とされて、服も新品のワンピースになっていた。

 なにやら花のような良い香りも漂ってくる。


「何だこれ」


 明らかに異常事態だ。

 斬られた首が繋がっているのもどうでもいい。

 予想外の状況に困惑していると、部屋の扉が開いた。

 現れたのはあの剣士の老人だった。


「おはようございます」


 私はベッドを飛び越え、老人に殴りかかった。

 しかし、老人はあっさりと拳を受け止める。

 完全に見切られていた。

 私は怒りのままに睨みつける。


「お前……っ!」


「落ち着いてください。危害を加えるつもりはありません」


「ふざけんな! 私の首を斬っただろうが!」


「あれは命令でした。手荒な真似をしたことを謝罪します」


 老人は深々と頭を下げた。

 あまりに真剣に謝ってくるので、私は反応に迷ってしまう。

 これほど誠実な態度の人間は初めて見たかもしれない。

 感心する私に、老人は優雅な動作で名乗った。


「私の名はノルフ。この家の執事です。あなたの名前をお伺いしても?」


「……リア」


「リアさん。あなたはエルスワーズ家の所有物となりました。これから使用人として働いていただきます」


 執事のノルフは唐突に宣言した。

 私は即座に言い返す。


「はあ? 従うわけねえだろうが」


「これは提案ではありません。事実の通達です。あなたに拒否権はないのです」


 ノルフは淡々と述べる。

 こっちが何を言っても揺るぎそうにない。

 舌打ちした私にも顔色を変えず、ノルフは平然と話を続けた。


「旦那様は以前よりあなたの噂に興味を抱いておりました」


「噂?」


「貧民街に再生する少女いるという話です。そして今回、実際に赴いて拉致したわけです」


 説明の途中、私はノルフの腹を殴ろうとする。

 しかし首筋に剣が添えられたので動きを止めた。

 刃の冷たい感触が伝わってくる。


「ぐっ……」


「抵抗は推奨しません。あなたが服従するまで切り刻むよう命じられておりますので」


 ノルフは冷たい声で言う。

 目が本気だ。

 これはきっと脅しじゃない。

 服従するまで切り刻む……きっと本気でやるだろう。


(従うしかないわけか)


 ため息を吐いた私はベッドに座り込む。

 こいつには絶対に敵わない。

 抵抗しても無駄だ。

 そんな考えを察したのか、ノルフは穏やかに微笑む。


「ご理解いただけましたか」


「…………」


 私は無言で頷く。

 こうして私の新たな生活が始まった。

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