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遭遇 1

 清烈な青のキャンバスに、白いふさふさと、雲の城が浮かんでいる。

それだけで絵になりそうな風景を乱すのは、悠々と風に乗る鳥や猛禽の類ではない。爆音をかき鳴らし強力なエネルギーを発生させ、無理矢理暴風を起こし、浮かびながら風を引き裂く、鋼鉄と特殊金属の飛べない生き物の技術の粋。

 飛行機だ。

高速回転するプロペラからの、定期的な振動を感じつつ周囲上下を見回す。

その時パリパリという音がして、割れた声が響く。

「ウィスター中尉!二時の方向、翼下に居ます!距離八千M。九十五式攻撃機(デイジー)かと。」

首を動かす。点が見えた。地上からの情報から推察してもこの地点で遭遇する可能性は高い。

「トニー、太陽を背にして接敵しろ。後部銃座も武器であることを……」

「忘れるな。引き金を引く時は標準環いっぱいに機影をとらえよ。でしょう?スコア(撃墜数)はもらっていいですよね?」

「本当に分かっているだろうな。ヒヨッこ野郎。デイジーだろうが、油断するなよ。お前はまだ航空大学校、卒業候補生なんだからな。」

「サァ、了解。もっともデイジーは二機墜としてますがね」

バツッという音とともに無線が切られ、俺の右後方にいた青の機体が前に出、降下していく。

ボディは縦に太く、すとんと直角に切られた翼はおもちゃみたいだ。だがその翼から伸びる六つの棒から弾き出されるのは、ブリキの平和な音では無い。コックピットの正面に据え付けられた光学照準器に映るのは、笑顔の子供では無い。

 私たちが乗るのは、空の敵を穿ち減らし滅ぼす戦闘機なのだ。

 そして我らは、それを駈るパイロット。

 ある種ゲームのようにこれに乗る、トニー・カーク少尉候補生は分かっているだろうか。

燃料の増加タンクは落としていないが距離はみるみる縮まり、点が立体感を帯びてくる。彼のやや下で逃げることが叶わない哀れな鉄鳥を、光学照準機の環に捕えた。その時、いつもと、形が違う事に気がついた。

形は、翼が若干V字。ガル翼か?話にしか聞いた事のないデザインだ。エンジンも、でかい。

ダカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカ

 我に返る。トニーが放った弾丸は六つの火線となり、見た事が無い鉄鳥に殺到する………、

はずだった。それは跳躍のような加速でトニーの照準環からも援護についていた私からも逃げ去っていた。トニーの機は経験したことのない事態に戸惑い、奴から引き離されている。私はとっさに操縦桿を左に倒した。

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