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  魔法の使い手

 討伐の準備として、火打ち石、水筒、弓矢、鉄の矢尻だけを入れた袋、小石を入れた袋、ランタンに、剣、あとは前腕につけるタイプの小さな盾を持った。

 念には念を入れての持ち物が多いが、まあいいだろう。

 できれば、剣と盾だけで済ませたいものだ。

 というのも、アルスが後ろにいるからな。


 アルスには、付いてこなくていいと言ったんだ。

 なのに、ルナリア捜しを手伝う、と言ったのがよほど嬉しかったのか、

 「僕もあなたを手伝います!」

 と勢い込んで付いてきた。

 どうも戦闘能力は低そうだし、荷物持ちとして、火起こし用の枝と葉、それに松明を持ってもらっている。



「ここが、闇物の巣穴だ」



 村を出た時の勢いはどこへやら。

 アルスはおどおどしっぱなしだ。

 聞いているかどうかは知らんが、一応報告だけはしておこう。

 少しは気を張ってもらわないと困るからな。


 この世界にも魔物に似たもの、闇物が存在する。

 ここにいる闇物はコウモリタイプだ。

 夜な夜な動物たちの血を吸いに飛び回り、もちろん人間も被害に遭っている。

 目は悪いらしいが、遠くからも感づかれるため、何度も尾行に失敗し、ようやく巣穴の洞窟を探し当てた。


 討伐の時間も考えた。

 今は、太陽が一番上に昇っている。

 おそらく闇物は全てこの中にいるはずだ。

 ここにいる闇物を一掃すれば、ここら一帯の闇物騒動も収まることだろう。



「アルス。まずは火を起こしてくれ」

「ここで、ですか?」

「ここ以外にどこがある」



 洞窟の前で、持ってきた枝と葉を積み上げ、火打ち石で火を付ける。

 それからランタンに火をつけ、腰にかけて携帯用の光源とする。

 他にも松明に火をつける。



「嫌なら外で待っていていいんだぞ」



 男にそう言えるようになったとは、私も随分と丸くなったものだ。

 小さい頃から厳しく育てられたせいか、弱い男に対して厳しい性格に育ってしまったからな。



「外は安全ですよね?」

「まあ、中よりはそうだろうが、野生動物だとか、他の闇物が出ることはあるだろうな」



 結局、アルスは外でも中でもない、洞窟からちょっと入ったところ、外の光がちょうど途切れるくらいのところで、火の番をしていることになった。







 洞窟の中に入ると残念なことが一つあった。

 まあ、わかってはいたのだが、洞窟の中は風が吹いていない。

 闇物が起こす風を利用できなくもないが、風を自力で起こすとなれば盾を振る必要があるし、風は諦めるか。

 ならば火だな。

 いざという時は、松明の火を使うことにしよう。


 しばらくして、外の光は見えなくなった。

 頼れるのは松明とランタンの光のみ。

 聞こえるのは自分の足音と水の垂れる音だけだ。


 垂れる水が肩を濡らす中、さらに奥へ進むと、前方から水以外の音が聞こえ始めた。

 どうやら巣が近いらしい。

 一度松明を壁に差し込み、それで火矢に火をつけ、音のした方へ撃ち込んだ。



「キイィィィィィィ!」



 叫び声のようなものと同時に、無数の羽音が鳴り始めた。

 音の反響からして、この先は大きくひらけているようだ。

 これは好都合だな。

 広いところから狭いところへ誘い込めば、狭まる付近で大渋滞が起こる。

 そこが狙い目だ。


 巣から離れるのではなく、松明を持ったまま前へ走った。

 渋滞を起こしているのか、思った通り、やってくる敵は一匹ずつだ。

 一対一ではどうってことない。

 剣は短めのものを持ってきて正解だ。

 これなら洞窟でも自由に振り回せる。


 尻尾についた毒牙を避け、翼を切り落とし、手早く心臓を貫く。

 もう6匹は倒しているが、まだまだいるようだ。

 さすがに敵の物量も増えてきた。

 数が少なくなり渋滞が解消したか。

 ならば、また渋滞を起こせばいいだけのこと。



地壁(テラ・ワロム)!」



 地面に両手をふれ、唱える。

 全部塞いでは意味がない。

 一匹が通れるくらいの隙間を残し、地面から壁を生やす。


 今度は後ろに下がりながら戦った。

 作った壁が効いているようだ。

 また、一対一で余裕を持って戦えている。


 こうして倒し続け、はて12、3匹は越えたか。

 そのあたりでピタリと敵の襲来が止んだ。

 これで終わりか?

 何匹もの死体を踏みながら、途中作った壁を壊し、矢を放ったあたりまで戻ってくるも、敵の姿も、音もない。

 さらに進んだ先は、やはり大きな空洞だった。

 ここが巣の本拠地だったようだが、音を立てても敵の気配はない。

 ふぅっと一息吐き、水魔法を使うまでもないだろうと、水筒の水を飲み干した。


 この世界は何かと不便だ。

 元の世界では、唱えるだけで手から魔法を放てた。

 だが、この世界では 何かに力が抑えられているとでも言おうか、

 基本のキに立ち返って、

 水なら水が、

 火なら火が、

 風なら風が、

 と言ったように、何かしらを媒介にしないと魔法が発動しない。

 魔法習いたての頃に戻った気分だが、それでも一応魔法は使えている。

 その点は感謝すべきだろうが、何より一番の問題は、魔法をおおっぴらに使えないことだろう。



「さて、これで任務は完了だな」



 入り口付近にいるとはいえ、この戦いの音はアルスにも聞こえていたはずだ。

 泣いていなければいいが。


 闇物がいないことを再度確認しつつ、来た道を引き返し、遠くに入り口の光が見えてきた。

 アルスはちゃんと火の番をしていたようだ。

 あちらからは見えないかもしれないが、松明を掲げて合図した。


 そこで壁に違和感を覚えた。

 行きには気づかなかったのか、今あいたのか、行先の左手、そこの壁に穴があるように見える。


 もしや、中から繋がっている横穴があったのか!

 そう思うも、時すでに遅し。

 穴から出てきたのは2匹の闇物。

 入り口の光に興奮してか、暴れながらアルスに向かって一目散に飛んでいく。


 くそっ!

 ぬかったか!


 アルスは剣を抜くことなく、ただ地面に尻をつけるだけで、逃げも攻撃もしない。

 急ぎ、剣を投げるも、倒せたのは1匹のみ。

 もう1匹はアルスに向かって飛んでいく。


 最中、剣を投げてあいた手は、松明の火へと反射的にのびていた。



火球(イグニス・グロブ)!」



 松明から火が消え、私の手の中で球状になり、腕をしならせながら、魔力ものせて、火球を撃ち出した。

 スピードに乗った火球は先を尖らせ、闇物に刺さり、闇物は一瞬にして燃え上がった。


 アルスは燃え尽きた闇物を見ていた。

 それと同じ目で私を見ていた。

 そうだ。

 この世界の住人にとっての魔法は悪。

 魔法を使う私は闇物と同じなのだ。

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