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【完結】人の才能が見えるようになりました。~幸運な俺はいい才能を持つみんなと一緒に世界を救う~  作者: 犬型大
第十四章

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我、新たなる世界を望む

「ご覧ください! 塔の入り口が開きました!」


 日本。

 塔からだいぶ離れたところにいることにマイクを片手に持った女性アナウンサーがカメラに向かいリポートしている。


 女性アナウンサーの後ろには塔がある。

 天をつくような高さの塔はある日急に現れたものであり、どうやって作られたのかさえ分からない。


「ゲートや一部モンスターが消え、塔の入り口が閉されてから二年という時間が経過しました」


 女性アナウンサーだけでなく多くの報道機関、そして覚醒者などが塔の前に集まっている。


「二年前のあの日を境にして、ゲートは出現しなくなりました。現在一部の地域ではいまだにモンスターが猛威を振るっているものの、多くの地域でモンスターからの復興を成し遂げつつあります。再び塔の入り口が開いたことは……一体何を表しているのでしょうか」


 女性アナウンサーの様子は愉快なイベントを紹介しているようなものではなく、顔は固い緊張感が滲んでいる。


「あれは……大海ギルドの上杉かなみさんが塔に近づいてみるようですね」


 カメラはズームアップして塔の様子を映す。

 長かった髪をバッサリと短くしたかなみは、ゆっくりと塔に近づいていく。


 かなみの顔にも緊張の色が浮かんでいる。

 塔の前までやってきたかなみは一度後ろを振り返って頷く。


 塔の入り口、エントランスゲートにそっと手を伸ばす。


「……入れ、ないのね」


 かなみの手はエントランスに飲み込まれることもなく、壁に目も触れるように止まってしまった。

 少し悲しげに、かなみは落胆した顔をする。


「どうやら塔には入れないようです」


 首を振ってかなみが塔から離れていく。


「……おや? なんだか塔のエントランスの様子が……」


 エントランスゲートが波打ち始めた。

 真ん中から円形の波紋が広がって、エントランスゲートが光を放って輝く。


「な、何かが出てきます! あれは……人? それに……モ、モンスター!?」


 波打つゲートの中から何かが出てきた。


「はぁ……久々の地球だ!」


「人間の男性と人型のカラスのようなモンスターが出てきました!」


 ゲートから出てきたのは圭だった。

 やや伸びた髪の毛を一つに束ねて、いるものの容姿に変化はなく見る人が見れば誰なのかすぐに分かる。


「あっ! 女性が何人か、ゲートから出てきたに駆け寄ります!」


 塔を警戒する覚醒者から飛び出したのは夜滝たちだ。


「これは……どういうことでしょうか?」


 夜滝たちが圭に飛びついて、圭はたまらず倒れる。


「上杉かなみさんまで……一体何が……」


 その日、塔の日本の入り口は再び開いた。

 それから一日を置いて、世界にまたゲートが出現し始めた。


 ーーーーー


「二年も経ったのか……もうというべきか、まだというべきか悩むところだな」


 塔から出てきた圭は覚醒者協会の計らいで覚醒者協会本部に移送されていた。

 二年もの間、沈黙を続けた塔から出てきた男には世界が注目をしている。


「一体……あの後何があったんだぃ?」


「是非とも聞かせて欲しいものだ」


 マスコミを追い払い、いつものメンバーとかなみやダンテ、それに加えて覚醒者協会の会長である武田や伊丹が会議室にいた。


「……塔の最上階に辿り着いて、一つ願いを叶えてもらえることになった。ゲームを終わらせること、これが世界を救うために必要なことだった」


 圭は一度頷くと、何かを思い出すようにゆっくりと話し始めた。

 圭の胸にはシャリンが抱きついている。


 メタリック人形だったのが、だいぶシャリンの姿に似たようになっていた。


「だけど、ただゲームを終わらせると問題があった」


「問題?」


「俺たちが助けた異世界の住人たちはまたゲームに戻ってしまうということさ」


 助けた世界。

 あるいは助けた人たち。


 フィーネも含めて全員いなくなるのは悲しい。

 何度もゲームの一部として利用されるのだって辛いだろう。


「そこで俺は考えたんだ。どうにかしてゲームを終わらせながらも、異世界の人たちを留めて助けるような手段はないかと」


「……それで?」


「俺は要求したんだ。ゲームそのものを寄越せってね」


 圭はニヤリと笑った。

 極限の状態の中で、圭は答えを出した。


 ゲームそのものを要求したのである。

 支配権とでもいうのか、ゲームを好きにコントロールできる権利をよこせと言った。


「流石にそれは相手も難色を示した。だから……ゲームの中でゲームに賛同できない神の世界やもう終わりにしたい神の世界部分のゲームをもらうことにしたんだ」


「……どういうことだ? もうちょっと分かりやすく説明してくれよ」


 カレンは眉をひそめる。

 圭が何を言いたいのか、いまいち分からない。


「たとえば塔の十一階の世界なら、きっとあれがベストの終わり方だと思わないか?」


「まあ、そうだな」


 それなりに犠牲者は出たものの、十一階の試練は上手く終わりを迎えたと圭は思う。

 もっと犠牲者を出すような終わり方もあっただろう。


 だが、比較的犠牲者も少なく、混乱も小さく抑えられた。


「あの世界の神はあれで満足してる。何回も時を繰り返し、ゲームに参加して世界を復活させるなんてことは思っていない」


 一番ではないのかもしれないが、最善に近い結末だった。

 一番を目指すならやり直すこともあるかもしれないが、これ以上の結末を望まないのならそのままでも良いだろう。


「他にもゲームに参加したくない神はたくさんいる。自分の世界をこれ以上ゲームに使われたくないんだ。そんな神の世界を俺は引き取ることにした」


「引き取るってどうやってですか?」


「……そのせいで、二年もかかった」


 圭は少し困ったように笑う。


「神を募った。この地球におけるゲームは俺が支配することになった。もうゲームとしては終わりだ。だからゲームに参加したい神はゲームから離脱して、また新たなゲームの舞台に移ることになった」


「じゃあ、ゲームに参加したくない神様は……」


「このままこの世界、このゲームに残ってる。ただゲームに参加したくないと言ってもその中身は色々ある。人のような知性のある生き物が残る世界のカケラを持っていてどうにかしたい神様や、そうしたものはいないからもう終わりにしてしまいたい神様まで、な」


 圭は遠い目をする。


「俺は残った神の一人一人と話をして、世界をどうしたいか聞いていったんだ。そして勝手だけど、ゲームの枠組みを利用して彼らの願いを最大限叶えることにした」


「願い……」


「そう。大変だったんだぜ。手放す判断をした神の世界はエネルギーを消費して消えていけるようにゲートに、この世界と融和を望む神は交流を持てるように塔を拡張したりゲートとして出したりとか考えたんだ」


 圭は深いため息をついた。

 みんなには心配かけたと思う。


 しかし圭だって遊んでいたわけじゃなかった。

 自分の選択を後悔したことはないが、とんでもない方法を選んでしまったものだと考えたことはある。


「色々大変で……そのためにヤタクロウとか、手伝ってもらったんだ」


 圭と一緒に塔から出てきたのはヤタクロウだった。

 一人じゃどうしても考えて実行するのに能力が足りなかった。


 そのために圭の設計にも関わったヤタクロウを筆頭に、協力的な異世界の神々の助力もあった。

 そしてヤタクロウは塔を管理するメンバーの一員となり、今回は自ら世界に受け入れてもらうための礎となるために圭と一緒に出てきたのである。


「これからもっと忙しくなる。異世界の人たちを受け入れてもらわなきゃいけないし、またゲートは出始める」


「また戦いになるのかい?」


「そうは言っても前みたいに侵略を目論むような強いゲートは少ないよ」


「あとさ……一つ聞いていい?」


「なんだ?」


「フィーネは……?」


 波瑠は少し悲しげな顔をしている。

 二年前の圭がゲームを要求して終わらせた日、ゲームに関わるものでいくつか消えたものがあった。

 

 ゲートはもちろん、一部のモンスター、それにフィーネもいなくなった。

 夜滝たちは塔のエントランスから投げ出されるように追い出されて、その中にフィーネはいなかったのだ。


 ガルーたちや異世界人もどういうわけか消えてしまったのである。

 圭はここまでフィーネについて言及してこなかった。


 もしかしてもう会えないのか、という不安が波瑠の中にある。


「フィーネは……」


 圭はスッとうつむく。


「そんな……」


 その様子を見て波瑠は絶望したような顔をする。


「フィーネはな……」


「ピピピピ……」


「……あれ?」


 暗い圭の声の後ろで笑うような声が聞こえる。

 その独特の声に波瑠は聞き覚えがあった。


「ジャジャーン! さぷらいず! フィーネもいるよ!」


「ちゃんとフィーネもいるぞ」


 圭の胸元から丸い姿のフィーネが飛び出す。


「フィィィィーーーーネェェェェ!」


「シャリーン!」


 フィーネとシャリンは抱き合う。

 圭に抱きついていたシャリンはフィーネがいることを知っていた。


 こっそり会話して、みんなを驚かせるからと秘密にしていたのである。


「これから世界は変わる。受け入れてもらうためにも色々大変なことはある。侵略的じゃないっていうだけでゲートのモンスターは脅威だ」


 圭の選択によって侵略ゲームは終わった。

 神の見せ物として戦う必要はなくなった。


 しかしゲームはそのものは残っている。

 これからゲームは世界の新たなるルールとなり、ゲームによって傷ついた神や異世界、異世界に住む人々の新たなる生活のガイドとなってくれるだろう。


「みんな、俺に力を貸してくれないか? ちなみにガルーたちもいるし、クノロアたちもいるんだ」


「……二年ぶりに帰ってきたというのに忙しないねぇ」


「うん、ほんと」


「まあでも、それがお兄さんらしくていいんじゃないか?」


「僕にできることがあるなら何でもします」


「…………日本の覚醒者協会は君たちに協力しよう」


 世界は新たなる段階に進み始めた。

 戦いの傷は二年では癒えない。


 だが悲しみを乗り越え、新たなる出会いを慈しみながら未来を作っていく。


「ありがとう。これでよかったのか……迷う時はある。でももう戻ることはできない。だからこれでよかったんだと言えるようにしたい。また、みんなに会えてよかったよ。みんなと一緒に……この世界でいられてよかった」

 

 本格的に魔力や魔法というものが存在する世界になった。

 変化が何を生むのか、それは誰にも分からない。


 最も幸運で、最も不幸な男は世界を救った。

 次なる世界はまだ、始まったばかりである。


 ーーーーー完ーーーーー

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