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【完結】人の才能が見えるようになりました。~幸運な俺はいい才能を持つみんなと一緒に世界を救う~  作者: 犬型大
第十四章

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最後の戦い5

「もはや……何も感じないな」


 北条は圭の胸から腕を引き抜く。

 圭の体は地面に倒れ、血溜まりが広がっていく。


「これで満足か!」


 肩近くまで圭の血で真っ赤に染まった腕を広げて、北条は天に向かって吠えるように声を張る。


「同じ世界の者同士を戦わせて、その様子を覗き見て楽しかったか!」


 天に漂う目がグッと細められる。

 大量の目にはそれぞれの感情があって、見られていると気持ち悪くなってくると北条は思う。


「この世界を救おうとする者は敗れた! もはや世界の趨勢は決まった! 俺と俺の家族を……ぐっ!?」


 圭たちがいなければ、あとは外の世界でゲートと人との戦いになる。

 これまででゲートに対して耐えられた世界はなく、もう結末は決まったようなものである。


 もうすでに世界は裏切った。

 一足先にこの惨状から抜け出そうと要求する北条の胸に剣が突き刺さった。


「…………どうして」


 剣を突き刺したのは圭。

 口から血を流しているものの、胸に開いているはずの穴は無くなっていた。


「ここまで俺たちは戦ってきた。この世界のため……そして他の世界のためにも」


 心臓を潰されて倒れゆく圭は声を聞いた。


『時はあなたの味方……たった一度のチャンス。されど大きなチャンス』


 圭はポケットから懐中時計を取り出した。

 それは塔の十一階を攻略した時にもらった報酬の一つだ。


 一度だけ、時を歪ませて持ち主を救ってくれるという効果のある魔道具は、その時こそどう使うのか分からなかった。

 しかし念の為にとポケットに忍ばせていた。


 どんな戦いの最中だって壊れなかった懐中時計の時計を覆うガラスが大きくひび割れている。

 圭の死を受けて懐中時計の効果が発動したのだ。


「俺たちも必死になって戦ってきた。今は俺たちの味方になってくれている世界もあるんだ」


 不思議なものであると圭は思った。

 胸を貫かれた感覚は覚えている。


 急速に死が迫って体が冷たくなっていく感覚も全てを覚えていて、気づいたら胸の穴も心臓も何事なかったかのようになっていた。

 装備や服に穴が空いていなければ、本当に胸を貫かれたのか疑いすら持つところだった。


 ともかく、圭は助けた十一階の時の神に与えられた力によって助けられたのである。

 圭が意識を取り戻すと北条は天に向かって吠えていた。


 卑怯かもしれないという考えはあったけれど、世界のためにどこまでも非情にならなきゃいけないのは北条も圭も同じだった。


「あ……ぐ……」


 北条の手に黄金色の魔力が集まるも、一瞬で散っていく。

 圭が剣を引き抜くと北条は力なく地面に膝をつく。


「……頭が痛いな」


 胸の傷は戻ったものの、失われた血は戻っていない。

 かなりの出血があったせいか、圭は体の不調を覚えていた。


「…………何か言い残すことはあるか?」


 こんな状態で北条に抵抗されたら困るが、北条も魔力の集まらない手のひらを感情の分からない目で見つめている。

 圭たちと戦うのに力を使いすぎた。


 加えて胸を刺されたことで残りの力もどこかに散ってしまった。

 今残っているのは神にすがる前の、E級程度の力のみだった。


「……優しいのだな」


 自分は相手の遺言を聞くことすらしなかったと北条は笑う。


「ないなら……」


「いや、一つだけ……ゲホッ! 頼みはいいか?」


 北条は血を吐き出した。

 力を失い、死が目の前に迫ってきていることを感じていた。


「頼み?」


「妻と子に……俺は最後まで戦ったと…………」


 北条の目から涙が流れ始めた。


「そして……愛していたと伝えてほしい……」


「それで、いいんですね?」


「人類の……裏切り者だと知られたくはないが…………それは、贅沢、だろうな……」


「…………いえ、俺は言いふらすつもりはありませんよ」


 少なくとも北条は人類のためにも戦っていた。

 こうして最後には裏切ることを選んだが、北条に助けられた人は少なくないはずだと圭は思う。


 この先無事に世界が救われたとして、わざわざ北条は世界を裏切ったのだと言って回ることになんの利益があるのか。

 そんなことをするつもりはなかった。


「小さな疑念は残るかもしれませんが、それは永遠に闇の中。あなたは英雄として記憶される……それでいいでしょう」


「…………ふっ、ありがとう」


 殺そうとした。

 いや、それどころか一度殺したのにも関わらず、圭は情けをかけてくれる。


 甘いとは思うが、きっとその優しさが世界を救う力になったのだと北条は感じた。


「終わらせてくれ……もう、手すら上げられない」


 北条の体の力が抜けていく。

 目がボヤけて、圭の声も遠くに聞こえる。


「……分かりました」


 圭はゆっくりと剣を高く持ち上げる。

 そして、北条の首を目掛けて一気に振り下ろす。


 ほとんどなんの手応えもなく、圭の剣は振り下ろされて北条の頭が地面を転がった。


「これで……終わり…………なのか?」


『争え!

 北条勝利を倒せ! クリア』


 なんの音もない世界に、静かにクリアの表示が現れたのだった。

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