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【完結】人の才能が見えるようになりました。~幸運な俺はいい才能を持つみんなと一緒に世界を救う~  作者: 犬型大
第十四章

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最後の戦い4

「これが……世界を裏切って手に入れた力だ」


 瞬く間にみんながやられてしまった。

 戦闘不能とまではいかないが、それぞれ結構なダメージを負ってしまった。


 空に広がる目はおもしろそうに戦いを眺めている。

 圭はまるで世界そのものが敵になってしまったかのようにすら感じる。


「そんなふうに力を手に入れて楽しいかよ!」


 立ち上がったカレンが鼻血を腕で荒っぽく拭う。

 確かにすごい力である。


 けれども神に与えられ、他人を犠牲にして得た力を振り回して何が良いのだと思ってしまう。


「……お前らの力もそう変わらないだろう」


「なんだと?」


「この世界の覚醒者……どう覚醒しているのか知っているか?」


「……細かくは知らない」


「神が力を与えるのだ」


 少しでも会話を引き延ばして回復する時間を、と思ったが、北条は一気に圭と距離を詰める。

 今度は油断しないと振り回される北条の拳をかわす。


「神が己の力を使って覚醒する可能性のあるものに力を与える。大量に力を注ぎ込めば最初からそれなりの能力で覚醒することもできる」


 北条は圭を攻撃しながら言葉を続ける。


「最初から才能があるものは……覚醒させるのも大変らしいが覚醒させた後に注ぎ込む力は少なくとも強くなれる。そして才能がないものは覚醒させるのは容易いが大量に力を注ぎ込まねば強くはなれない」


「くぅ!」


 拳がかすめる風だけで皮膚が切れてしまいそう。

 圭は回避に専念してなんとかみんなが立ち直る時間を稼ごうと必死だった。


「神が気に入れば才能がなくとも力を注がれて強い覚醒者となれる。だが神の気まぐれで覚醒するとただ覚醒しただけの弱い者ともなってしまう。不平等に神から与えられる力……他の覚醒者と俺は何も変わらない」


「だとしたら……俺たちは違うな!」


 北条の目に苛立ちが見えて、ほんの少し拳の振りが大きくなった。

 圭は顔を逸らして拳をかわすと北条の脇腹を斬りつける。


 高い防御力を誇る北条だが、圭の剣も北条の防御を上回った。

 傷は浅いけれど、攻撃は通じた。


「何が違う?」


「俺たちは……自分で強くなってきた」


 神が力を注ぐ。

 もしかしたらそれによって覚醒者が最初から高レベルで覚醒するのかもしれない。


 神が力を注いで高いレベルにすれば才能がなくとも強く、逆に神があまり力を注がなければレベルが上がらず弱い覚醒者となる。

 ある程度納得はできる。


 だが圭たちは神に力を与えられたこともあるけれど、死にそうな目に遭いながらも必死に戦ってレベルを上げて自ら強くなってきた。

 何かから奪い取ったのではなく、自らで掴み取ってきた力なのである。


「確かに……最初に会ったお前たちとは別人のようだ。だが何かを犠牲にして強くなったことに変わりはない」


「いや、あんたとは違う!」


「そういうのなら自ら証明して見せろ! どうせ俺が正しいか、お前が正しいかは言葉で証明できないのだからな!」


 生き残った方が正しい。

 北条は拳に魔力を集めて圭を攻撃する。


「私たちもいるぞ!」


「ピピー!」


 カレンとフィーネが北条に襲いかかる。


「わ、私も……」


 治療を終えた波瑠も参戦して、圭たちと北条の総力戦が始まる。

 圭とカレンが北条の攻撃に耐えつつ、波瑠とフィーネはスピードを活かして攻撃、夜滝は魔法でフォローしながら薫は治療と強化で支援する。


 たった一人。

 相手はたった一人なのに圭たちは押されていた。


 経験の差ともいうべきなのか、北条は高い能力を活かしてうまく立ち回る。

 なんとか保たれていた均衡。


 しかしそれも長くは持たず、崩れる時が来た。


「ガハッ…………」


「カレン!」


 北条は波瑠のナイフを掴んで防ぐ。

 ナイフの刃を掴んだものだから、手が切れて血が流れで北条は顔色ひとつ変えることがない。

 

 引き寄せられた波留を守ろうとしたカレンのことを北条は殴りつけた。

 腹部にまともに拳が突き刺さる。

 

 骨が折れ、内臓が潰れるひどく醜い音が響き渡った。

 飛んでいったカレンは力なく地面を転がる。


「波瑠、ナイフを放せ!」


 カレンがやられたという動揺。

 波瑠はナイフを掴まれたままで、逃げるのが遅れた。


「あぁっ!?」


 北条は波瑠の頭を鷲掴みにする。

 そのまま握りつぶされてしまいそうな強い痛みを感じて波瑠は悲鳴を上げる。


「放せ!」


 圭は波留を助けるべく剣を突き出す。


「なっ……」


 北条はナイフを手放して、血まみれの手を開く。

 そのまま剣を手で防いだ。


 防いだ、というよりも剣を手に突き刺して無理矢理止めたのである。


「ピピ……波留!」


 北条は掴んだ波留を大きく持ち上げると地面に叩きつけた。

 声すら出せずに、波瑠は頭から地面に衝突する。


「このぉー!」


 仲間がやられた怒りに燃えて、フィーネが大鎌を振り下ろす。


「お前からは奇妙な気配がするな」


 北条は剣から手を引き抜くと、血を撒き散らしながら大鎌を横から殴って弾き返す。

 力にも優れているフィーネだったが、北条の力には敵わない。


 フィーネが無防備になったところで、北条はフィーネの腹に突き上げるような掌底を決める。

 軽く浮き上がったフィーネの横っ面を黄金色の魔力を纏った拳で殴る。


 ゴキンと鈍い音がしてフィーネの首が反対側を向く。


「……やめろ!」


 剣を構える圭。

 北条はそれを無視して夜滝と薫に向かう。


 圭の速さでは追いつかず、北条は夜滝の腹部を蹴り上げ、薫の顔面を殴りつけた。


「……一人になったな」


 圭以外のみんながやられてしまった。

 あまりにもあっけない。


 一瞬とも言っていいような出来事だった。


「もう……俺の力も残り少ないな」


 北条の黄金色のオーラがチカチカと点滅している。

 これまで奪い取ってきた力もここで使い果たそうとしていた。


「終わらせる。この戦いを。そして……この世界でのゲームも」


 北条の体から黄金色のオーラが一気に噴き出す。


「…………くそっ………………」


 来ると思った時には遅かった。

 北条の体が一瞬消え、気づいた時にはもう目の前にいた。


 少し視線を下げると北条の腕が圭の胸に突き刺さっている。

 北条の手には、圭の心臓が握られている。


「……済まないな。俺は……俺の守りたいものがあるんだ」


 北条は、圭の心臓を握りつぶした。

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