最後の戦い3
「ゲホッ!」
圭だって一撃で死んでしまうほど脆くはない。
しかし北条の一撃は非常に重たかった。
骨が折れて、内臓に大きなダメージを受けた。
喉から血が上がってきて、圭は吐血する。
「薫、お兄さんを治せ!」
カレンが盾を構えて、圭を守るように前に出る。
「さっさと終わらせる」
「ぐっ!」
北条がカレンの盾を殴りつけた。
しっかりと盾で受け止めたはずなのに、カレンは大きく後ろに押される。
「頑丈な盾だな。だが、関係ない」
北条の体から黄金色に輝く魔力が溢れ出す。
盾の上からでも構わず殴りつけ、カレンは苦しい顔をする。
盾から伝わる衝撃だけでも腕の骨が折れてしまいそうだった。
「くそっ……!」
横からの殴打。
カレンは堪えきれずに盾が弾き飛ばされる。
「なめん……なよ!」
盾は腕に固定されているので飛んでいきはしないが、腕が開いて正面がガラ空きになってしまう。
そこを見逃してくれるほど北条も甘くはない。
拳が迫り、カレンが咄嗟に行動は攻撃だった。
殴られながらも、メイスを振りかぶり北条を殴りつける。
確かにメイスは北条に届いた。
けれども北条の方はびくともせず、カレンだけが吹き飛んでいく。
「何も一人ずつ来ることはない。まとめてかかってくるといい」
肉体の強化とは攻撃力だけの話ではない。
当然ながら頑丈さ、防御力という意味でも強くなる。
カレンの一撃は北条の額に僅かな赤みを残しただけに終わった。
「もうちょっとです」
どうにかカレンに時間を稼いでもらって、圭が復帰したら全員で攻撃と考えていた。
だがまだ薫の治療は続いている。
「フィーネ、わたしたちで行こっ!」
「ピピ!」
「私もいくよぅ」
カレンも自己再生能力を持つが、流石にすぐには動けない状態である。
やはり一人で相手することは厳しいと感じた波瑠とフィーネに加えて夜滝の三人で戦い始める。
「……流石に女性ばかりだと戦いにくさはあるな。だが……手加減はしない……ッ!」
「できるなら……手加減してそのままやられてくれない?」
北条が顔を逸らした。
頬が浅く切れて血が流れる。
後ろにはナイフを振り切った体勢の波瑠がいる。
波瑠はやや目立たない存在となっていた。
高い速度と飛行能力という力を持っているが、主な武器がナイフなために攻撃における破壊力がないからだった。
強い敵となるとデカい相手も多い。
ナイフの一撃は鋭く、相手が攻撃を防げなくとも深い攻撃になりにくいのだ。
スピードでの翻弄やメインではない攻撃というサブ的な役割が多くなってしまうのも当然のことだった。
しかしだからと言って波瑠が弱いわけではない。
むしろナイフが通じやすい小型のモンスターなんかに対して、波瑠はかなり強い。
北条すら一瞬波瑠を見失った。
モンスターと考えてみると人は小型の方になる。
急所もナイフで狙うことができる。
相性としては悪くないと波瑠は思った。
「フィーネ、やっちゃうよ!」
「おっまかせ!」
波瑠は翼を広げて最高速度で動く。
空を飛んでいると分かりにくい。
しかし地上に降りて敵の周りを短い距離で移動すると、波瑠は恐ろしいほどに速い。
「ピピッピ!」
フィーネが大鎌を振り回して北条に襲いかかる。
破壊力はあるが大きな攻撃。
それだけなら北条も対処は難しくない。
しかしフィーネだけではなく波瑠もいる。
今も波瑠は北条の周りを回りながら隙を狙っている。
強化状態の北条にも迫るような波瑠のスピードは北条にとっても厄介。
さらには波瑠が持つ神を殺したこともあるナイフは北条の防御を貫いた。
夜滝も魔法を放つタイミングを窺っている。
「ふぅ……ここまで来るだけはあるな」
北条は軽く息を吐き出す。
塔を登る実力はまやかしではない。
「ピッ……!」
北条は振り下ろされた大鎌の刃に手を添えるようにして受け流して、フィーネの顔面を殴りつける。
軽く当てたパンチだったが、今の北条の力ならそれでも頭が弾け飛んでしまいそうな衝撃があった。
「はあっ!」
北条はフィーネを追撃しようと逆の拳をスッと上げた。
フィーネを攻撃しようとしている隙を狙って波瑠が迫ったが、北条は振り返って手を伸ばす
「なっ……!」
「これでも長年覚醒者として戦ってきた。経験の差というものがあるんだよ」
伸ばされた手をかわそうと波瑠は飛び上がった。
しかし北条は波瑠の足を掴む。
「うぐぅ!」
「ピピッ、波瑠!」
北条は波瑠をそのまま振り回して地面に叩きつける。
波瑠は素早さが非常に高い分耐久度としては魔法使いの夜滝レベルに低い。
叩きつけられた衝撃で、波瑠は目の前がチカチカするようなダメージを受ける。
「女の子を乱雑に扱うものじゃないよぅ!」
夜滝は魔法を発動させる。
地面に冷気が広がり、北条の足元を凍らせる。
「波瑠を放せー!」
夜滝が北条を足止めする間に、フィーネが斬りかかる。
「ぬっ!」
「甘いな」
北条は手に持った波瑠を盾にして、フィーネは鎌を止めてしまう。
「波瑠、フィーネ……!」
北条は波瑠を振り回してフィーネに向かって投げ飛ばす。
波瑠を切ることもできず、フィーネと波瑠がそのまま揉みくちゃになって転がっていく。




