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【完結】人の才能が見えるようになりました。~幸運な俺はいい才能を持つみんなと一緒に世界を救う~  作者: 犬型大
第十四章

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決戦、暗黒竜7

「どうだ……?」


 暗黒竜の咆哮が途切れる。

 喉を切り裂かれて声が出なくなったのだ。


 空気が漏れるようなか細い声とドス黒い血が喉から流れていく。

 カフカフと不自然な音を出して呼吸しようとしているが、まともに息ができていない。


「……フィーネ、トドメを刺してやれ」


 圭の攻撃は致命的だった。

 このまま放置しておけば暗黒竜は弱っていって、やがて死ぬだろう。


 だがそんな残虐な殺し方するのは趣味ではない。


「お任せ!」


「やっちゃえ、フィーネ!」


 フィーネが右腕の形を変える。

 巨大な剣の形をしたフィーネの右手を見て、暗黒竜は何かを訴えかけるような目をした。


 やめろ、とでも言いたかったのかもしれない。

 だが喉が斬られている以上言葉も出ない。


「お、わ、り、ピピ!」


 フィーネが右腕の剣を振り下ろした。

 圭がつけた傷口を狙った一撃は、暗黒竜の首を斬り裂く。


 重たい音を立て、目を見開いた暗黒竜の首が地面を転がる。

 首からは勢いよく血が噴き出て、まるで噴水のようになっていた。


 『あなたは勇者です! 邪悪なブラックドラゴンを倒してください! クリア

  ◽︎◽︎◽︎ヲ◽︎タ◽︎◽︎エエエ ク◽︎◽︎

  アウェ◽︎◽︎◽︎◽︎ あああ

  ーーー

  伝説の聖剣を手に入れろ! クリア


 しぃくれっト

 塔のソト、チュウゴ、、クはしせんし。ょう。ゲート攻略セヨ

 勇者を助けよう クリア!』


 圭たちの目の前に表示が現れる。

 これで本当に暗黒竜を倒し、十八階の試練をクリアしたことになったようだ。


「エクリス!」


 ただ、犠牲はあった。

 ボロボロになりながらも戦ったエクリスは地面に横たわっている。


 目に聖剣を突き刺して耐えていたのだけど、聖剣を目に残したまま投げ出されて地面に叩きつけられていた。

 圭が慌てて駆け寄り体を起こすが、エクリスはうつろな目をしていた。


「待ってろ! 今治療するから……」


「いいんだ……自分の体のことは自分が一番分かってるから」


 浅い呼吸を繰り返しながらエクリスはフッと笑った。


「なあ……アイツ…………クソトカゲは死んだ?」


「……ああ、死んだよ」


 暗黒竜の攻撃を受けて体が無事なはずはない。

 エクリスはもうとっくに限界を超えていたのだ。


「よかった……これでみんなも報われる。これで……残された人たちも前に進める」


 エクリスは掠れた声でつぶやく。


「手を握って……くれない?」


「いいぞ」


 圭はエクリスの手を握る。

 どこか少し冷たくて、エクリスの命の灯火が消えつつあるのを圭は感じた。


 年齢を聞いたことはないけれど、エクリスは圭よりも年下に見える。

 少女とまではいかないが、まだうら若き乙女である。


 どうしてこんなふうに死なねばならないのだ。

 そんなふうに圭は悲しく思った。


「ね……ちょっと顔近づけて」


「こう?」


 死にゆく人間の願いは断れない。

 圭はエクリスに顔を近づける。


「もっと」


「……こう?」


「うん……チュ……」


 圭がさらにエクリスに顔を寄せた。

 するとエクリスは少し体を起こして圭の口に自分の口を重ねた。


「へへ、キス、しちゃった」


 エクリスはイタズラっぽく笑う。


「私ね、小さい頃から勇者だった。だから……男の人と手を握ったこともないし、キスをしたこともないし、恋をしたこともないの」


 ふいの柔らかさに驚く圭だったが、何かの文句を言うような気にはならなかった。


「魔王を倒して……勇者のお役目から自由になったら…………恋をしたかった。手を繋いで町を歩くの……誰も見てないところでキスをするの…………そして変わらぬ愛を誓うの」


 エクリスの目から涙が流れる。

 復讐に燃えていたエクリスも一皮剥けばただの女の子。


「手を繋いで、キスをするのは叶っちゃった……最後は…………叶わなかったけど。ムラサメ、結構私の好みだよ」


「……ありがとう」


「ん……こちらこそありがとう。頑張ってね。キミの世界は……勇者のキミが救って…………」


 握っていたエクリスの手から力が抜けていく。


「あーあ、女神様の意地悪…………私は、普通の女の子がよかったな……」


 エクリスはゆっくりと目を閉じる。

 もはや圭が握っておらねば、エクリスの手はそのままするりと落ちてしまっていただろう。


「救いはないのか……」


 エクリスは世界を救った。

 なのにこんな終わりなのはとても悲しい。


「……なんだ?」


 悲しさに沈みながらも、王城に連れて帰ればしっかりと埋葬してくれるかなと考えていた。

 すると突然天から光が差してきた。


 眩いほどの強い光はエクリスを照らす。

 すでに長い眠りについてしまったエクリスの体がふわりと浮き上がる。


「この世界の神様……なのかな?」


「さあな。ただほっとくわけじゃなくて安心したよ。お兄さんにキスしたのは気になるけど……あのままじゃない可哀想だもんな」


 そのまま天に昇っていき、エクリスは光の中に消えていった。

 どうなったのかはよく分からない。


 ただ優しい光だったし、きっと女神様とやらが迎えにきたのだろうと圭たちは思った。

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