決戦、暗黒竜2
「にしても……また数日の旅か」
城のある町まですぐに行けるわけではない。
最短のルートで移動しても何日か移動の時間は必要となる。
「まっ、こうしている間にも時間は過ぎてる。行こうか」
いくら嫌がったところで、自動で城につかない。
自らの足で歩いていく必要がある。
「あれじゃない? キューちゃんに犬ぞりでもつけたらいいんじゃないかな?」
「あー、それは……いいかもな」
塔の中ではキューちゃんも呼び出している。
流石に村の人の前では出していなかったが、移動の最中は呼び出してある。
なかなかキューちゃんも扱いが難しい。
何となく誤魔化せるフィーネと違って、キューちゃんは明らかにモンスターである。
他の人がいる前で呼び出して、敵じゃないと説明するのも非常にめんどくさい。
呼び出した後も自動で帰ってくれればいいのだけど、戻さなきゃいけなかったりする。
なんだかんだとメルシリアたちに馴染んで楽しくやっているようだし、ほとんど塔の上層階専用お助けキャラになっている。
といっても十八階じゃ戦闘はない。
フィーネがキューちゃんの背に乗って楽しくやっているけれど、今のところ賑やかしである。
寒いところでは雪の上を犬が引っ張るソリで移動する犬ぞりというものがある。
「ソリよりは……馬車かな?」
ただソリよりはもっといいものがあると圭は思った。
文明っぽい町があるゲートの中では馬車なんかを見ることがある。
ソリなんかより馬車を引っ張ってもらった安全かつ速いだろう。
「しかし馬車なんてどうやって持ち込めばいいんだろうねぇ」
馬車は結構デカい。
キューちゃんに引っ張ってもらうというアイデアはいいのだけど、問題はたくさんある。
そもそも馬車をどうやって入手して、どうやって塔に持ち込むかという問題がある。
実際にやろうと思うとかなり面倒だ。
「乗ろうと思えば乗れるけどねー」
「みんなでピッタリくっついてか?」
「俺は嫌だ」
そのままキューちゃんの背中に乗っかるという方法もある。
しかし安定性に乏しく、乗ってみると意外とスペースはない。
並んで乗れば、乗れないこともないかもしれない。
ただしそれぞれ密着するような形になってしまう。
それにはダンテが難色を示す。
他の人に密着されるなど嫌に決まっていた。
それなら自分で走ると思うぐらいだ。
「まあ、結局歩くしかないな」
キューちゃん馬車は悪くないアイデアかもしれない。
ただ馬車は用意できないし、戦う時なんかになったら一々馬車を取り外しもできないので現実的ではなかったのだ。
ーーーーー
圭たちは自分の足で歩いた。
数日かけて城のある町までたどり着いたのである。
「人がいる……!」
「何というか……復興中?」
城のある町には人がいた。
それなりに活気があって、いつも通りの暮らしをしている雰囲気がある。
ただ町中には戦いの跡が見られる。
崩れた建物やひどく壊れた石畳など、直近で何かと戦ったような雰囲気がある。
人々は街中を片付け、まだ使えそうな建物を復旧させようとしていた。
忙しく動き回っているせいか、圭たちに注目する人もいない。
「お城に向かってみようか」
騒ぎになるといけないので、キューちゃんを逆召喚して戻し、圭たちだけで町に入っていく。
建物の損傷は結構見られるものの、街の人たちの表情は暗くない。
「ここは……結構ひどいな」
ゲートの中でも暗黒竜と戦った広場にやってきた。
綺麗に整備されていた広場はボロボロになっている。
家屋の復旧が優先になっているのか、広場は修復に手をつけられず資材置き場になっている。
「城は……損傷なさそうだな」
前に来た時、塔の中の城は半壊してしまっていた。
だが今回の城は大きな損傷がない。
「何者だ!」
城の前にあるはね橋には見張りの兵士が立っている。
十八階の世界からすると怪しい格好をしている圭たちを見て槍を向ける。
「おい……この人たちって……」
「まさか、勇者様の?」
「……行ってこい!」
どう説明したものかと悩んでいると、見張りの兵士たちは圭たちのことを見て顔をしかめた。
何かに気づいたようであり、一人が慌てて城の中に入っていく。
「説明しなくても大丈夫そうだね」
「ああ、少し待ってみるか」
槍を突きつけられていたり、それを通行人がマジマジと見てくるという気まずさはあるものの、圭たちは大人しく待ってみる。
すると何人かの兵士を連れて、一人の女性が城から出てきた。
「ムラサメ!」
「エクリス……ちょっと雰囲気が変わったな」
城から出てきたのはエクリスだった。
圭の名前も呼んだし間違いはない。
しかしゲートの中で会った時と雰囲気はだいぶ違う。
エクリスはショートカットで、女性にもモテそうな雰囲気をしていた。
だが今は髪を伸ばしていて、頬には傷があった。
「よく来てくれたな」
「一体……何があったんだ?」
「それも説明する。こんなところで立ち話は何だ、入ってくれ」
笑顔を浮かべるエクリスだが、どこか影を感じさせるような雰囲気がある。
「失礼いたしました。勇者様のお仲間でしたね」
見張りの兵士たちは槍を引っ込め、頭を下げる。
圭たちはエクリスについて城の中に入っていく。




