微妙な雰囲気
現在の拝金教がどんな組織なのか分かってきた。
以前の拝金教はひたすらお金持ちに擦り寄ってお金を吸い上げる構造が強かった。
力を与えられて覚醒者となれば、体が悪かったり歳を取ってもある程度動けるようになる。
お金を持った年配の一般人を取り込むことで拝金教はお金を得て、組織を拡大していた。
今もその構造が根底にあることに変わりない。
お金は持っているけれども、体がうまく動かなくなった年寄りが金に物を言わせてなんとかしようとすることはありがちだ。
どうやって集めているのかまでは分かっていないが、そうした人に悪魔の力を与えてお金を集めているようだ。
人の生への執着を利用しているとも言える。
しかし今の拝金教はそれだけではない。
よりお金を強く集めるために間の手を伸ばしていたのだ。
世の中には覚醒者として覚醒したものの、性格的に合わなかったり弱かったり、あるいはリスクを避けて覚醒者の活動を選ばなかったものも多い。
選ばなかったものにも不満はある。
覚醒者は時々ゲートに入って戦うだけなのにお金を稼いでいる。
対して自分は毎日セコセコと働いてはした金をもらうだけだと、ふつふつと内心に不平不満を溜めているのだった。
だからと言って仕事を辞めて覚醒者として武器を取ることもしないのである。
リスクを頭で理解しているくせに、お金を稼いでいるという結果だけを見ていた。
力があれば、そんな不満に拝金教は漬け込んだ。
世の中にいる覚醒者として活動をしていない覚醒者の中で、お金の流れに関わる金融マンを中心に力を与えて取り込んだ。
普段はまだ働かせながら、裏で覚醒者として戦えるように鍛えた。
表の世界で彼らが持つ金融情報を吸い上げて、拝金教はお金を増やしていたのである。
さらに今は元黒月会、つまりはヤクザ系の人脈を活かして汚いことにも手を染める部隊も育成しているらしい。
「以前は黒月会の山本がリーダーとして活動していたようですが……手腕を見る限り、もっと頭の良い人が今は活動を先導しているようですね」
十五階にさっさと進みたいものの、十四階のことは気になる。
攻略を終えて十四階に戻ったらゴーレムだらけで帰れないとなっても困るので、ヴァルキリーギルドの方から攻略がどうなっているのか問い合わせてもらうことになった。
一方で塔の外でもいろいろ動きがあったらしく、圭は覚醒者協会に来ていた。
大海ギルドのかなみの他に、太羽島で活躍を見せて大和ギルドの代わりに新五大ギルドと呼ばれるようにもなったタイガーギルドの臼杵大虎を含め複数のギルドがいる。
「対してエルボザールファミリーの方はナンバー4であるオルボット、それに現在ではナンバー1であるエルーガも確認されています。人数としては拝金教に及ばないでしょうが、かなりの戦力としては拝金教を上回っているかもしれません」
呼び出されたのはもちろん拝金教とエルボザールファミリーの抗争についてである。
「いまだに両者の全容は把握しきれていません。しかし衝突する日が分かったのです。今から十日後……拝金教がとあるものを貸金庫から移すようです。それをエルボザールファミリーが襲撃する。ただ……拝金教もそれを分かっていて迎え撃つそうです」
元よりマフィアとして活動していたエルボザールファミリーに比べて、拝金教の方は程度が様々である。
エルボザールファミリーは拝金教を探し出して襲撃し、逆に拝金教も襲ってくるエルボザールファミリーを返り討ちにするなんて血で血を洗う争いが起きていた。
しかし被害者が増えるにつれ、元々覚醒者として活動していなかった拝金教が不安を覚えて、覚醒者協会に保護を求めてきた。
そうしたところから一気に調査が進んだ。
「両者の抗争のタイミングで我々は漁夫の利を狙います。拝金教、エルボザールファミリー両方を確保して大打撃を与えます」
十日後に大きな動きがあることが内定した。
この隙を狙って覚醒者協会は拝金教もエルボザールファミリーも一網打尽にしてしまおうと考えていたのである。
「エルボザールのエルーガ、俺にやらせてくれないか?」
拝金教、エルボザールファミリーそれぞれの主要人物がモニターに映し出される。
実際の戦いでは混戦になることが予想されるが、誰が誰を狙うのかある程度決めておいた方が楽になる。
ダイコが手を挙げてエルーガを指名した。
椅子に浅く腰掛けてだらしなく座るダイコは自信に溢れた表情をしている。
大和ギルドが凋落しなければ注目もされなかったくせに、なんて言葉が小さく聞こえてきた。
北条勝利のニュース、それに伴って活動を休止した大和ギルドの代わりに、新たな明るいニュースとして持ち上げられたのがタイガーギルドなのだ。
「……なんか…………微妙な感じだな」
太羽島の時はみんな協力し合うといった雰囲気があった。
なのに今は協力し合うというよりも、誰が功績を上げるのかということの方が大事そうだ。
悪い雰囲気ではないが、良い雰囲気とも言い難い。
「かなみ、俺のそばを離れるなよ?」
「あら、かっこいいこと言うのね?」
「この中で信用できるのはかなみのところぐらいだからな」
「そうね、危なくなったら圭君に守ってもらうから」
いざとなれば信用できるところと固まるしかない。
冗談めかしたけど、かなみもちょっと怖い雰囲気があるものだと感じていたのだった。




