抗争勃発1
「ご足労いただき、ありがとうございます。先日も来ていただいたのに」
「いえ、助けが必要ならいつでも呼んでください」
「王……人気」
人里から離れた郊外に発生したゲートのところに圭はやってきていた。
いつものメンバーに加えて、今日はエーランドとウリエラウというB級相当の力を持ってガルーの女性もいる。
だいぶこちらの世界に適応してきたガルーは今や普通に服も着る。
和輝がガルーに合わせた装備も作ってくれたので、今は装備も身につけていた。
そしてこちらの言葉も少しずつだけど習得している。
カルキアンなんかは習得が早くて、片言ではあるが会話ができるぐらいになっていた。
エーランドも負けられるかと頑張っているけれど、流石にカルキアンの方が習得は早い。
ただそれでもちょっと話せるだけガルーの中では早い方である。
今回はゲートの攻略も目的ではあるが、その前にやってほしいことがあると伊丹に呼ばれてきていた。
「少し気分のよくない光景かもしれません。気をつけてください」
伊丹についてゲートに入る。
ゲート中は太くて背の高い木々が生えた森の中だった。
やや湿度が高く、ゲートの外に比べて気温が高い感じがする。
「急遽手伝ってほしいとのことだったんですけど……」
やってほしいことがあると聞いている。
ただ時間がなくてすぐに駆けつけてほしいというので細かい事情は聞かずに駆けつけたのだった。
「村雨さんの能力は悪魔教を見抜くことができるのですよね?」
「あ、はい。悪魔教の覚醒者なら多分……」
悪魔から力を与えられた人の能力値は特殊な表示をされる。
そのために圭は悪魔教の人を見抜くことができる。
力を与えられていなければ分からないが、ある程度見抜けることは事実である。
「まさか……」
「そのまさかの可能性があるのです」
このタイミングでいたずらに悪魔教の話をするはずがない。
となると今回呼び出されたのは悪魔教関連な可能性がある。
「このゲートで事故が起こりました。D級ゲートで、C級覚醒者がチームが攻略に当たる予定でした。実力や実績を考えると失敗の確率は非常に低いはずでした」
森の中を歩きながら伊丹が状況の説明をする。
「しかし三日が経ってもゲート攻略の報告が上がってきませんでした。そのために覚醒者協会で調査する運びになりました」
ゲートが放置されるとブレイクの可能性がある。
事情があってまだ攻略していない、できなくなった場合や意図的にゲートを放置する悪質な場合もある。
あるいはゲートの攻略に失敗して全滅した可能性だってあった。
攻略を引き受けたチームとは連絡が取れず、家族は帰ってきておらず心配をしていた。
攻略が長引くこともあるのでまだ覚醒者協会に連絡は入れていなかった。
あと一日、二日様子を見て連絡するつもりだったようである。
「結局攻略には向かったことが判明したのですが、その後の消息がつかめなくなっていました。こうした場合疑われるのは攻略失敗です」
攻略すると家を出たことは分かっているので攻略はしたのだろう。
それでも連絡がつかないのなら普通の場合攻略に失敗して全滅したのだと考えられる。
「実際ゲートの前には無人の車がありました。攻略チームの一人が所有しているものでした。そこでゲートの中にも調査員を派遣しました。何が残っていれば……と思ったのですが」
伊丹の口ぶりは少し重たい。
「何も残ってなかったんですか?」
「その逆です。色々と残っていました」
波瑠の質問に伊丹は小さく首を振った。
「全員死体で発見されました」
「全員発見……それは……良いと言いますか、悪いというか……」
全員死体で発見されたということは攻略に失敗したということである。
ただ一方で死体が発見されたことで失敗が確実に分かった。
そして死体が発見されたということは多少の救いであるとも言える。
モンスターと戦って死んだ場合、死体すら残らないことも珍しいことではない。
失敗したということは最悪の出来事であるが、せめて死体が帰ってくるというのは遺族にとっては最悪の中のわずかな救いと言えるのかもしれない。
「……ただわかんねえのは……それと悪魔教が何の関係があるんだ?」
ここまでの話の中で悪魔教を感じさせるようなものはなかった。
なぜ悪魔教を見抜く目が必要なのか謎である。
「ゲートの中で発見されたのは攻略チームの死体だけではなかったのです」
「何だって?」
「助っ人を誘って攻略に挑むことはありますし、攻略チーム以外の人が入っても違法ではありませんが……少しおかしいのです」
攻略チームは一応ギルドとして登録されている。
見つかった死体の中にギルドの攻略チームの人以外の人もいたのである。
攻略権を買って、攻略さえしてもらえればどんな人がゲートに入ろうが覚醒者協会としては関知しない。
中には他のチームと協力したり、人数や攻略に不安があって他の覚醒者の協力を得ることもある。
チームとして登録されていない人がいてもおかしなことではない。
けれども今回はおかしな点があったのである。




