明るいニュース、暗いニュース2
「‘もし仮にちゃんとこちら側として働いてくれるなら心強い戦力ではあるだろう’」
「‘私が聞いたのは我々にとって明るいニュースがあるかどうかだ’」
手を出すなと言われている以上ガルーたちの恩恵を受けられる可能性は少ない。
日本の利益ばかり上がるのなら良いニュースなどではないなんて、子供じみたことをトップが集まる会議でよく堂々と言えるものだとタケダは呆れ返ってしまう。
「‘ですが希望はあるでしょう’」
「‘なんの希望がだ?’」
「‘超大型ゲートでは戦闘可能な人員……少し前アフリカで発生したA級ゲートではモンスターの卵が発見されました’」
「‘そういえばそんなこともあったな’」
「‘北欧のイングランドでは、現在技術では到底作れないような武器がゲートから出てきました。これらのゲートから共通して言えることが、単なる攻略のみならず何かの工程を得ることで良い報酬を得られる可能性が高いということが分かりました’」
「‘それはどういうことだ?’」
「‘ええと……こちらを’」
アメリカの覚醒者協会の職員が映し出される画像を切り替える。
「‘超大型ゲートにおいてはガルーもしくはヴァンパを倒すことが条件でした。しかしその条件にはなかったゲート人が現れて、ゲート人を生かした結果ガルーも含めて従えることになりました。アフリカのゲートではヒーラーが足を滑らせた先に怪我をしたモンスターがいて、治してあげたら卵を入手することができた、という経緯があります’」
本来攻略のためには必要のない行為によって、何かの利益が発生している可能性がある。
これまでの攻略の傾向からアメリカの覚醒者協会は、もしかしたら攻略以外のところに何か報酬が発生する条件があるのだと推測していた。
「‘塔にもシークレットクエストがあります。もしかしたらゲートにもそうしたものが設定されていることがある可能性が高くなりました’」
「‘それが良いニュースか?’」
「‘高等級ゲートを攻略すれば我々人類にとって有益な報酬を得られるかもしれない。単純に攻略するよりも良い話だと思います’」
「‘どうだかな’」
結局攻略してみなければ分からない話ではないか、と中国の覚醒者協会のトップがため息をついた。
「‘ガルーとやらについて他に分かったことはないのか?’」
「‘こちらに何かの報告はありません’」
「‘これからインドと共同で研究を進めていく予定だ。ゲート予想アルゴリズムを開発したアマルジャン教授も参加してくれるらしい’」
元よりいくつかの国は否定的な意見を押し出して、監視などの目的からガルーが生み出す利益に一枚噛むつもりだった。
しかしタケダに全てを突っぱねられてしまった。
やはり今からでも関与できないかと考えている人は少なくない。
だがタケダはもうインドと研究の予定で入る余地はないと断じてしまう。
「チッ」
誰かの舌打ちが聞こえたが、誰のものかは分からない。
「‘改めて定期報告を続けます。太平洋沖に発生しているゲートは……’」
いつも聞くようなつまらない報告が続く。
タケダはマイクに拾われないようにため息をついた。
誰も分かっていない。
世界に危機が訪れていることを。
しかしこの場でそんなことを言っても受け入れる人はいないだろうと思う。
知ってしまった重責を感じる。
やはりアメリカにぐらいは言っておくべきか。
そんなことを悩んでいるタケダの耳に定期報告の内容など聞こえてはいなかった。




