ガルーを受け入れるか3
「ありがとうございます」
ひとまず圭は頭を下げる。
圭はカルキアンやエーランドの意図を伝えるために一緒に監禁状態であった。
監禁状態では根回しなんてことも難しい。
そもそも根回しできるほどの人脈がないので、そもそも根回しなんてものができたかは疑わしいところはある。
日本とインドがガルーに対して肯定的でいてくれるということにも圭は驚いていた。
たとえ日本所属の圭がガルーを率いることになっていたとしても、日本の立場は慎重だろうと考えていた。
それなのに全ての責任を引き受けるとまで断言するなど、予想もしていない。
他の国としても意外だったろう。
「礼などいらない。今後の行動で恩を返してくれ」
「……どうしてガルーを受け入れてくれたんですか?」
「君のことは以前から聞いていた」
タケダは圭の肩にポンと手を置いた。
「G級からB級まで能力を上げた再覚醒者。それだけでなくこれまで色々な出来事に関わってきた」
笑みを消して圭の瞳を覗き込むタケダの圧力に、圭は圧倒されてしまう。
当然ながら覚醒者協会のトップに圭のことを秘密にしているわけがない。
タケダも圭の存在は把握していた。
上がってくる情報からだけでは圭は非常に謎の多い人物であった。
中でもタケダは圭が強くなっていっていることに注目していた。
覚醒者の等級が上がる例は世界でも珍しい。
再覚醒と呼ばれる現象なのか、あるいはどうにかして覚醒者としての能力を誤魔化した犯罪者なのかと疑いすら持っていたのだ。
だが圭は少し等級を上げたというところに留まらずB級にまで上がってきた。
加えて圭の仲間たちまで等級を上げたり、高い等級で覚醒者協会に登録していた。
等級を隠した犯罪者、というよりも何かの秘密があるのかもしれないと感じていたのである。
強くなる何かが圭、あるいは周りにある。
「私は常々思っていた。この世界にはいつか転換点が訪れると。強くなる覚醒者……君には何かがある」
正直な話、ガルーの利益よりも圭の存在がタケダにとって大きかった。
ガルーがどこか他国に引き取られることになったら圭もとなる可能性が高い。
今回のゲート攻略でも中心となる役割を果たしたとも聞いていたし、他国にタケダの思惑を知られないように手を引かせるためには一も二もなくガルーを引き受けるしかなかったのだ。
「細かいことはまた別の機会に話そう。ここでは人目もある」
タケダは圭の肩から手を離して再び歩き出す。
「ピピ……なんだか優しそうなのに強そう」
「ああ……なんだか底知れない感じがあるな」
圭を支持してくれた理由は圭にとっても予想外のものであった。
決して圭への態度は圧力的なものではなかった。
しかし目の奥には野心にも近いような光を秘めている。
「……覚醒者協会のトップだし逆らえる感じもないな」
タケダに目をつけられたことは幸運となるか、災いとなるか。
圭にはまだ判断できないのだった。




