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【第十二章完結!】人の才能が見えるようになりました。~幸運な俺はいい才能を持つみんなと一緒に世界を救う~  作者: 犬型大
第十一章

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閑話・自分の顔が嫌いな女

 ハンナ・フリーマンは自分の顔が嫌いだった。

 重たい一重まぶた、そばかすの目立つ肌、ガタガタとした歯、くすんだ茶色い毛色、頬には大きなホクロ。


 両親ですらハンナを褒めるときには内面ばかりを口にした。

 可愛い子には憧れた。


 可愛くなくても、普通ならば羨ましい。

 容姿をいじってくる奴も嫌だったけれど、それを変に庇ってくれる普通の顔をした人たちもまた嫌だった。


 せめて歯ぐらい直せればよかったのかもしれないが、ハンナの家は貧乏でお金がない。

 服装すら使い古されてくすんだ可愛らしさのない服であった。


 お金もなくて、勇気もなくて、ただただ鏡を避けて通るような日々を過ごした。

 そんな時に覚醒したのである。


 ハンナは顔を操る能力を手に入れた。

 フェイスクラフトマンは相手の顔を再現する能力である。


 記憶に残っていれば一目見ただけでもある程度真似できる。

 ハンナはすぐに能力を使った。


 覚醒者であることを隠して身近な美人の顔を真似して生活を一変させたのである。

 しかし顔は真似できても身振りや体格は変わらず、卑屈な雰囲気は半端に真似した顔と相まってすぐに気味悪がられ始めた。


 そんな時に顔を真似た相手に顔を真似ていたことがバレたのだ。

 呼び出されたハンナは最終的に相手を殺してしまった。


 通報すると言われて咄嗟に伸ばした手が相手の首を掴み、そのままへし折ってしまった。

 ハンナの最初の殺人であった。


 相手は一般人で、ハンナは覚醒者。

 しかもハンナは力が強い覚醒者で、相手の首は細枝のように簡単にへし折れたのだ。


 人を殺した。

 衝撃がハンナにはあったのだが、それよりも大きなことがあった。


 “こんなところにホクロがある”


 前髪の生え際に小さなホクロがあった。

 普段は髪に隠れていて気づかないぐらいのものである。


 そうすると他のところにも目がいき始めた。

 意外と唇は薄い、瞳は濃いブラウン、眉毛はメイクで描いている。


 細かく観察して、触れて確かめて、ハンナは初めて相手の顔をまともに直視した。

 これまで美人だと視界の端で見ていたものの、住む世界が違うとしっかり顔を見てはこなかった。


 ふと顔を上げて、部屋に置いて鏡を見た。

 ハンナの顔は完全に相手のものと同じ顔になっていた。


 死体をどうしようかと悩みながらも、何もいい方法が思いつかずに数日。

 ハンナはどうしようもなくなって逃げた。


 顔も隠さずに逃げたのだが、幸いにして顔はそのままだったので、殺した相手が自らどこかへ失踪したという話になった。

 一度殺人を犯したハンナにもうためらいはない。


 気に入った相手を殺して、顔を真似して逃げ続けた。

 ある時、ふと殺してそのまま顔が失われるのは惜しいなと思った。


 過去に奪った顔は意識すれば真似できるけれど、記憶はだんだんと曖昧になってしまうものだ。

 顔を保管しておけばとハンナは考えて、そばにあった包丁で乱雑に相手の顔を剥ぎ取った。


 ハンナの能力は剥ぎ取った顔を加工することにも使えた。

 作ったマスクを被ったハンナに更なる変化も訪れる。


 体が変わり始めたのだ。

 数日かけてマスクの人物と同じような体格になったのである。


 顔を奪い取った相手の体もよく観察して理解を深めることで、顔と同じく真似できるようになった。

 顔と違ってずっと同じ顔でいると時間をかけて変化していくという違いはあったが、こちらも一度完璧に変化できるようになれば顔と一緒に変われるようになったのだった。


 好きに顔を変え、体も変えてハンナは好きに生きていた。

 自由に生きていたハンナだが、たまたま手を出した女性が覚醒者による犯罪組織のボスの恋人で、ハンナは犯罪組織に捕まってしまう。


 殺されるところだったのだけど、能力を見込まれてハンナはマスク作りを始める。

 これがフェイスマスク誕生の時だった。


「何人殺して、何人の顔をマスクにしてきた?」


 取調室で、拘束されたハンナは取り調べを受けていた。

 力が異常に強いことは分かっているのでガチガチに拘束されて逃げられようにしてある。


「数えていないから知らないわ」


 今ハンナの顔はかなみのものであった。

 ただし戦いの最中に観察して作り上げた、どこかかなみとは違ったかなみの顔をしている。


「フェイスマスク……お前にはさまざまな容疑がかかっている。他の国もお前には興味が大いにあるようだ。もう二度と外に出られるとは思うなよ」


「ふふ、私は本当に私かしら? 私の顔をした偽物かもしれないわよ?」


「さあな。これから知っていけばいい。お前が何者で、お前の罪の重さはどれほどのものなのかをな」

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