超大型ゲート1
「大迷宮ゲート?」
「ええ。最近ニュースになっているのだけど知らないかしら?」
「最近忙しくて……あんまりニュース見てないんだ」
「赤ゴリラと十一階に行ったり来たりしていたからかしら?」
「まあそうだな」
圭は覚醒者協会に呼び出された。
逮捕じゃなく話がしたいということで覚醒者協会を訪れてみるとかなみがいた。
かなみが悪いわけではないが、急にかなみが現れる時には大体ロクなことはないなと思いながら話を聞く。
そこで飛び出してきたのが大迷宮ゲートという名前だった。
「少し前にインドで現れた大規模なゲートです」
伊丹がパソコンで大迷宮ゲートの画像を出して圭に見せてくれる。
「これ……人か?」
「そうよ」
「てことは……デカくね?」
画面に映し出されたゲートは、パッと見ではなんの変哲もないゲートに見えた。
しかしよく見てみるとゲートの下に人が映っている。
人の大きさと比較してみるとゲートの大きさも大体推測することができる。
普通のゲートなら小さいものは人ほどの大きさで、大きくても人の倍ぐらいである。
それなのに写真の大迷宮ゲートは人が小さく見えるほどの大きさであった。
「まあデカいですね」
伊丹も頷く。
「ゲートがデカいだけじゃなくて中もデカいのよ」
「中も?」
「何回か人が入ってるのだけどいまだに攻略ならず。それどころかどれだけ広いのかも分かってないのよ」
「ふーん……そんなゲートもあるんだな。それはいいけどなんで俺が呼ばれたんだ?」
ゲートにも色々な種類がある。
そんな中も外も大きなゲートがあって、ニュースにまでなっていることは初耳であった。
しかし、そんなゲートがあることをわざわざ覚醒者協会に呼びつけて教えるだけの必要はない。
インドに現れたゲートであるし、圭に取って関わりがないことは言うまでもない。
「超巨大ゲート……当然ブレイクはみんな警戒している。インドも必死に攻略を目指していて、その糸口を掴んだのよ」
「それが俺に関係あるのか?」
「まあそう焦らないの」
かなみはウインクしてみせる。
伊丹は渋い顔をしているけれど何も言わない。
「ゲートの中を進んでいくと山に囲まれた盆地があって、巨大な都市があるらしいの」
「規模でいえば私たちの国でいう県庁所在地の都市ぐらいの大きさがあるかなり大きな都市です」
伊丹がパソコンを操作して画像を切り替える。
ドローンで撮影したような斜め上から撮った古めかしい町の写真である。
「それも結構差がある気がするけどな……」
「全容が把握できていないのでそんなものぐらいで流してください」
どこの県庁所在地かによって大きく違うと思うのだけど、伊丹は真面目な顔をしている。
かなみはふふっと笑っているので、伊丹なりの冗談っぽい言い方だったのかもしれない。
「その都市なんですが……いまだに正式に突入には成功していません」
「……なんか微妙な言い方するな?」
正式に突入とはなんなのかよく分からない。
「遠く離れたところから見ると普通に見えるのですが、近づいていくといつの間にか霧に囲まれて前後不覚に陥ってしまうのです」
「帰ってこられた覚醒者は少しだけ。残りの人たちはどうなったのか分からないの」
「町に入った可能性もあるってことか」
霧に巻き込まれた覚醒者たちがどうなったのか分からない。
町に入った可能性もあるけれど確認できないので、正式にはまだ入った人がいないということなのだ。
「あなたには……特別な目があるわね」
「ああ」
「あなたの力なら霧の中でも惑わされることがなく、町に進むことができる可能性がある」
かなみが圭の目を見つめる。
流石に正面から見つめられるとかなみの顔が良いので少し照れてしまう。
「確かに可能性はあるな」
実際に行ってみないことには何もいえないけれど、圭の真実の目ならば不可解な霧にも惑わされないで周りを見ることができる可能性もある。
「だがどうして急にインドのゲートを……」
かなみの大海ギルドは自分の領域外において、あまり積極的にゲートを攻略しにいくギルドではない。
まして国外のゲートに手を出すようなことはまずしない。
インドのゲートなど攻略しようと考えるわけがないと圭はかなみのことを見る。
「これはまだ機密事項なのですが、インドは自国のS級覚醒者であるアイシャ・シャルマさんを筆頭にした本格的な攻略チームを送り込んだようなのです。しかし……」
「他と同じく帰ってきていない……」
「その通りです。事態を重くみたインド政府とインドの覚醒者協会は友好国に対して秘密裏に協力を要請したのです」
「日本にもってことか。でもどうしてかなみが?」
大海ギルドも五大ギルドであって声をかけられてもおかしくはない。
だがかなみの性格を知っている伊丹がかなみに話を持っていくとは思えない。
「アイシャとは一度攻略を共にしたことがあるの。ゲートの中が海上で、水を操る能力に長けた私が協力したのよ。その縁でアイシャのギルドから声がかかったの」
「攻略……するつもりなのか?」
「まだ分からないわ。他の国の反応も気になるし……霧の謎が解けないまま挑むのは危険すぎるもの」
かなみはため息をついた。
アイシャのギルドから声をかかっていなければかなみは普通に断っていた。
しかし一度関わったこともある覚醒者の無事がかかっていると断るのも気まずい。




