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【第十二章完結!】人の才能が見えるようになりました。~幸運な俺はいい才能を持つみんなと一緒に世界を救う~  作者: 犬型大
第十章

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十一階、最終決戦3

「ただ数は多いからウンザリするね」


 数だけ多いモンスターを倒していくだけというのもなかなかつまらないものである。

 波瑠はナイフについた血を振り払ってまだまだ押し寄せるモンスターを呆れたような顔で見た。


「ここはまだいいけどメラシオニの方は大丈夫だろうかねぇ」


 地形の関係上、時の神殿の防衛はやりやすい方である。

 崖がモンスターの侵入を阻んでくれているのだ。


 対して町の方は全ての方向からモンスターが攻めてくる。

 軽く考えていたわけではないが、想像よりもモンスターの数が多くて少し心配になってきた。


「心配ありません」


 その時、世界に何かが広がった。

 時の神殿を中心として、うっすらと光る魔力の輪が放たれた。


「なんだこれ?」


 光る魔力の輪は圭の体をすり抜けていった。

 害するような気配も感じない。


 他のみんなに対しても何事もなく光る魔力の輪はすり抜けて広がり、モンスターの方にも迫っていく。


「ピピ?」


「なんだ?」


 光る魔力の輪がモンスターをすり抜けた。

 するとモンスターの動きが止まったのである。


 光る魔力の輪がふれたモンスターは次々と動きを止めていく。

 波瑠が翼を広げて飛び上がってみると崖の後ろの方のモンスターも同じく動きが止まっていっていた。


「何が……起きてるんだ?」


「ク、クロノアさん!?」


「どうした? ……うわっ!?」


 不思議な現象に困惑していると、薫の悲鳴のような声が聞こえてきた。

 振り返ってみると圭も驚いてしまった。


 クロノアの目が光っていた。

 モンスターの動きが止まっている以上の奇妙な状態に、圭はドン引きしてしまう。


「心配なさることは何もございません」


「クロノア……なのか?」


 目が光っているだけじゃなく、何だか話し方がおかしい。

 圭はクロノアのことを警戒する。


「そう警戒なさらないでください。あなた方に危害は加えません」


「一体あんたは何者だ?」


 クロノアではない。

 クロノアの体を借りた何かだ。


 ヒグロのこともあって人を装う存在については良い思い出がない。

 もしクロノアがモンスターに支配されているのなら倒さねばならない。


「異界の戦士ムラサメケイ。あなたには感謝します。私はあなた方やみんなが時の神と呼ぶ存在。イオジュアを名乗りましょう。……古い名前ですけど」


「時の神……イオジュア?」


「今はこの者の体を借りて降臨させていただきました」


 眩しいから目をこちらに向けないでほしいなと圭は思った。


「この世界は一度滅びました。異界の神が介入し、モンスターに力と知恵を授けた結果、人々は協力することもできずに負けてしまいました。この国ではメルシリアがどうにかしようと蜂起しましたが……力及びませんでした。本来ならこの世界は無くなるか、モンスターのものになるはずでした。しかしながらこうして時を奪われ、いたずらに滅亡を繰り返す悲しき舞台として塔に封じられました」


「やっぱりメルシリアは謀反を起こしたんだな」


 何もないのにメルシリアが謀反を起こした罪を着させられることは、おかしいと思っていた。

 こうなる流れがどこかであったのではないか、と感じていたのは間違いじゃなかった。


「今回あなた方のおかげで、忌々しくも人の姿を奪い取るモンスターから世界を救うことができました。あとは最後の滅びに立ち向かうだけ。世界が滅びようとしても、私は世界に介入することは許されなかった。ですが今回は塔の力で、私の力を皆様のために使うことができます」


「じゃあさっきのアレは……」


「私の力です」


 クロノアの体を借りたイオジュアは静かに頷いた。


「時は止められません。ですが時の流れはある程度制御できます」


「モンスターが止まったわけじゃないのか?」


「ほぼそれと同義です。モンスターの動きを極限まで遅くしました。ここだけではなく、メラシオニの町の方でも。今のうちにモンスターを倒してください。この世界を……救ってください」


「…………全部終わったあとはどうなるんだ? また、ループするのか?」


 圭は怖かった質問を口にした。

 また世界がループすることになったらどうしようとずっと考えていた。


 これだけの苦労をしたのに、また世界が最初から十五日を繰り返すことになるのはやるせない気持ちになってしまう。


「世界の時が取り戻されれば世界の時は再び流れ始めます」


「それってつまり、ループしなくなるってことなのか?」


「それはご自分の目で確かめてみてください。私はおそらくこれで力を使い果たして眠りにつくでしょう。この先の時間はあなたたちのものです」


 クロノアの体を借りたイオジュアは優しい微笑みを浮かべた。

 明確な答えは得られていないが、多分大丈夫なのだろうと圭は感じた。


「よし、モンスターを倒そう。今のうちだ」


 世界がどうなるのかは分からないが、悪くはならそうである。

 圭たちはモンスターの動きが遅くなっている間にとモンスターを倒し始める。


「アノア……あなたには苦労をかけますね」


「時に仕える立場として当然のことをしたまでです」


「いいえ、当然のことだと言って行動できる人は少ない」


「感謝するならその体を貸している我が息子、そして息子を助け、世界を救ってくれた彼らにしてください」


 アノアはゆっくりと首を振る。


「そうですね……彼らは新たなる時を刻んでくれるでしょう。私の代わりに見守ってあげてください」


「少しお休みください。これからも時は悠久に続くのです」


「そうします」


 クロノアの体を借りたイオジュアが目を閉じる。


「正しい時が返ってくる……」


 アノアは倒れるクロノアの体をそっと受け止めた。

 戦う圭たちの姿を見てアノアは頭を下げる。


「お前もよくやったな、クロノア」


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