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【第十二章完結!】人の才能が見えるようになりました。~幸運な俺はいい才能を持つみんなと一緒に世界を救う~  作者: 犬型大
第十章

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城に巣食うモンスター5

「しかしよくこんなものを掘ったな」


 ダンテが壁に触れる。

 かなり古くて老朽化している感じはあるものの今のところ崩れているところもない。


 建国当時に作られたものだとするとかなり時間が経っているはずだ。

 それなのにこれほど綺麗に残っているのは驚くことである。


 それだけでなく時の神殿と王城の距離を考えるとこの二つの距離は相当なものである。

 ただ穴を掘り進めるだけでも容易いものではない。


 しっかりと空気の穴まで一定間隔で隠すように配置されていて並々ならぬ労力を使って作られた秘密通路である。


「このまま行ってヤバそうなモンスターいたら倒しちゃダメなのか?」


 赤城としては仮に宝物庫でモンスターが見つかるなら倒してしまっていいのではないかと思っていた。

 しかし圭にはそのつもりがなかった。


「できるならいいんだけど、問題はできなかった時だな」


「んだ? 私たちで倒せないとでも?」


「実力は疑ってないよ。でも倒せない可能性がある」


 実力的にモンスターを倒せるとしても塔のゲームに保護されているために倒せないという可能性があるのだ。

 何かの理由で倒せない存在だった時にかなり面倒なことになる。


「後は倒しちゃいけない可能性もあるしね」


 後々何かの試練のために今倒したら他の試練が失敗に終わることだってあり得る。


「制限が多くて面倒だな……」


「俺もそう思うよ」


 赤城のため息に圭は同調する。

 まさかこんなにレールの上を行くように試練を攻略させられるとは思いもしなかった。


 ミスも許されないし、ミスしたら次のループを待たねばならない。

 面倒なことこの上ないとしか言いようがなかった。


 巻き込んでしまったヴァルキリーギルドには頭が上がらないぐらいである。


「時間的にはそろそろ着くかな」


 どこまで来ているかなんて分からない秘密通路をひたすらに歩いてきた。

 時の神殿と王城までの地上の移動の感じから移動時間をなんとなく推測して当てはめると近いところまで来ているはずだった。


「何か音がするな」


 べちゃりと湿ったものが落ちたような音がわずかに聞こえてきた。


「慎重に向かってみよう」


 ランプの明かりを少し小さくして圭たちは足を速める。

 進んでいくと大きなレバーのついた扉に突き当たった。


「任せろ」


 ダンテがレバーを引きながらゆっくりと扉を開ける。

 スライドするタイプの扉で思っていたよりも音が鳴って圭たちの緊張が高まる。

 

 するとまたべちゃりと音がした。


「うわっ! きもちわる……」


 扉も全て開けずに多少開けたところで顔を覗かせて中の様子を確認する。


『メラシオニに辿り着け! クリア

 ……

 クロノアを探せ! クリア!

  メルシリアにクロノアが生きていることを報告せよ!クリア!

  メルシリアに話を聞け! クリア!

  時の神殿を探せ! クリア!

  時の神殿を守れ! 未達成

 ディムバーラガンの娘を助けろ! クリア

 王城に巣食うモンスターの正体を突き止めろ! クリア!

 国を救え!


 シークレット

 戻らぬ時を取り戻せ』


 覗き込んだ瞬間試練がクリアになった。

 宝物庫には多くのお金が貯め込まれている。


 そしてそんなお金をベッドにでもするかのように紫色の巨大な塊が宝物庫のど真ん中に鎮座していた。


『ヒグロスマザー

 ヒグロやヒグロスを生み出す母体となるモンスター。

 子となるヒグロやヒグロスからエネルギーの供給を受けてヒグロやヒグロスを生み出している。

 本来低い知能しか持たないモンスターであるが、異世界の神の加護を受けて知能を得た。

 多くの人間を取り込み、多くの子を生み出して自分が世界の支配者になるのだと目論んでいる』


 真実の目で見てみると予想通りのモンスターの母体だった。

 異世界の神の加護を受けたとか気になる文言はあるけれど、こいつが元凶であることは間違いない。


 壁や天井にはヒグロスマザーと同じような紫の体液が広がってへばりついていて、天井からはなんだかたまごにも似たような丸い紫の塊がぶら下がっている。


「何をしているんだ?」


 宝物庫の扉は開いていて兵士のような格好をしたヒグロが人を抱えて運び込んでいる。


「おそらく死体だろうな」

 

 ヒグロはヒグロスマザーの前に死体を投げ捨てると、ヒグロスマザーは体を伸ばして人を体の中に取り込んだ。


「見ろ……あれ!」


 何体かの死体を取り込むと天井からぶら下がっている紫の塊がモゾモゾと動き出して床に落ちる。


「……ヒグロが生まれた…………」


 床に落ちて広がった紫の塊はまた一つにまとまって動き出した。

 圭の目で見てみたところそれはヒグロだった。


 べちゃりとした音の正体はヒグロが生まれる時の音であったのだ。


「あいつら……人間を食ってヒグロを生み出してやがるのか!」


「赤城……!」


 怒りで今にも飛び出していきそうな赤城を圭が止める。


「……くっ!」


 かなり胸糞の悪い光景である。

 また一体ヒグロが生み出されて赤城は宝物庫から目を逸らした。


「今あいつらを燃やし尽くしちゃダメか?」


「……ダメだ」


「どうして!」


 赤城が圭の胸ぐらを掴む。

 ダンテとシャリンが怖い目をするけれど、圭は二人を手で制する。


「今ここで失敗すればまた十五日間苦しむ人が出る」


「…………計画があんだな?」


「……一応ね」


「お前を信じてる……だからここは我慢してやる」


 赤城は圭から手を放す。


「ただ……あのクソモンスターは私に殺させてくれ」


「……分かった。そういうところは好きだよ」


「今はそんな冗談は嬉しくないよ」


「本気さ」


 たとえ塔の住人のためにも本気で怒れるところは赤城の美徳である。

 許せないと思う気持ちは圭も同じ。


「やっぱりやるしかないな」


 この国はモンスターに支配されている。

 

「救うためにはやはり根こそぎひっくり返す必要があるな」

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