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第四十五話




中庭にフロウ達を見に行くと、三匹が身を寄せ合って陽射しを浴びていた。ストレス値の大幅な減少を感じる……いやまぁ、あんまりストレス感じてなかったけど



「可愛いなぁ、もふもふしたいなぁ……でもユア様待たせてるからね」



「っ……ぅ…ずっと眺めてたい…!!!」



「はいはい、暫くうちに居るんだからまた見れるよ。行こうね」




胸を抑え、呻くシアレスを引き摺ってユア様の元へ向かう。…今日は珍しい事ばかりだ、王家が訪ねてくるのも、神父様がにやけて居たのも。…凄く優しい顔をしてたから、思い出し笑いはエッチな証拠とかは言えなかった。あと言ったら確実に怒られてただろうし

とりあえず、これ以上待たせるわけには行かないから足早で行き、開いて居た扉から顔を出す


…ユア様、しっかり怒られたのだろう。耳も尾も弱々しく項垂れてる。此方を視認するなり向日葵が咲くような輝かしい笑顔を見せたものの、老執事の咳払いによって再び萎れ、一つ溜め息を溢すと目の前に来て立ち止まった




「ご機嫌よう、()()()()()()()()()()()お久しぶりね。元気にしてたかしら?」



「…はい、お久しゅうございます王女殿下。お会いできて光栄でございます」



「えぇ、ありがとう。顔を上げて宜しくてよ」




急に王族の態度を取られたので此方も顔には慌てぶりを出さず淑女の礼(カーテシー)をする。ドレスみたいにふわふわしてないから、あまり広がらないけど、まぁ、見れるくらいの礼にはなるだろう


お許しが出たので顔を上げ、姿勢を正す。……隣できょとん。としてたシアレス。まぁ、やはり学んでないのだから仕方ない。次できればいいしね!




「……申し訳ない、まさか侍女どもが此処まで教えてないとは……」



「王家に対する忠誠心が足りてないのでしょう。全く、嘆かわしいことです」



「…………俺にその対応は止めてくれ、寒気がする」



「…………折角お手本やったのにその対応は酷いと思うんだ、私」




わざとらしく……いや、無意識かな。両腕を擦って若干の嫌悪感を露にしてくるガルシアをしっかり睨み、未だに訳が分からず固まってるシアレスを見る。……っと、その前にユア様に許可を取らなきゃ




「王女殿下…」



「ええ。大丈夫。私がちゃんとしろって怒られただけだもの。あの二人は楽にさせてていいでしょう?ダンテ」



「…レン様はご理解しているようですが、シアレス様はそもそも貴族社会を未だ理解していないのでしたな。であれば、学ぶ機会を奪うなど致しません」



「ありがとうございます。……えっと、シアレス。とりあえずびっくりしてても口はあんまり開きっぱなしにしないようにね」



「はっ…!も、申し訳ありませんっ!!ユア様の目の前でこんな醜態…!!!」



「うん、落ち着いて。吸ってー、吐いてー……落ち着いた?うん。それじゃあ今からお勉強ね

まず第一に覚えて欲しいのは、立場が上の人から声を掛ける、親しい仲以外名を呼ばないって暗黙のルール。これはもう絶対守って」




ユア様が礼儀を示されずとも本来は此方が入ってきた段階で頭を下げるべきだったのだが……何せユア様、出会い頭に抱き付いたりしてくるからなぁ…礼儀とか、そりゃ吹っ飛ぶよね………


なのでとりあえず、一つずつ確認




「基本的には家名か役職で呼ぶ。さっきのユア様呼びも親しくないと本当はダメ。王女殿下が正しい。あとは王族と謁見する時は許しなく顔を上げちゃダメ。物凄く不敬


…ガルシアこっち見ないで、シアレスが集中できないでしょ」



「…お前の娘は公爵家として教育されてるのは分かったが、俺に対する態度はどうにかならんのか?」



「はは……公の場でミスすることはないでしょう。それに、貴方自身、こうして気安い方が楽しいのでは?」



「……否定はしない」




こそこそと話してる二人をおいて、シアレスに礼の仕方を教える


角度とか裾の持ち上げ方とか物凄く面倒なんだけどね、でも覚えないと夜会で礼儀知らずって烙印押されかねない

ユア様が見ているからか、シアレスも緊張してるし……まぁ、実践と近い形で練習出来るのはいいかもしれない




「なんとも美しい礼をしますな、アレフリア嬢……いえ、レン様とお呼びしても?」



「…うん。本当はただのレンがいいけど、貴方にも立場があるだろうから我慢する。神父様から教わった」



「流石にございます。我が王女宮の侍女達にも習わせたいくらいです」




王女宮。…知らない言葉が出てきたので神父様を見ると少し考えた素振りを見せ、此方に来てくれた




「王城の外観は見たな?…あれは造りが少々複雑でな。外から見ると然程大きくはないが、奥行きが外観二つ分はある。…戦になったとしても王族は逃げられるよう、生活区域は面倒だが後方にあり……それぞれの管轄領域の事を王女宮や王子宮と呼んでいるのだ」



「えぇ、そこで幼少から私達は責任を学ぶのよ。侍女統括は勿論居るけど不祥事やお茶会の責任は主人が負うもの。…まぁ、他の国も一緒よ。覚えておいて損はないと思うわ」




外観二つ分って……いや、広いな…


でもまぁ、王城なのだから当然か。何代も続いてるのだから改装やらもしてるだろうし、私からしたらこの教会もちょっと広すぎる気もするけどね

それなりに貧富の差がない国………だとは思うけど、何せ末端の村まで知ってるわけではない。…冒険者になったら見てみたいな。各国も勿論、いつか知恵として役にたつだろうし




「失礼、自己紹介がまだでしたな。王女宮において執事長をしております、ダンテリアと申します。どうぞダンテとお呼びください」



「分かった、宜しく、ダンテ。………シアレスも、とりあえずは分かってくれた?」



「えぇ…難しいのね、貴族社会って。……善処します…」



「さて………では本題に入ろう

レン、ジュエライトを保護してくれたこと、先ずは改めて国として礼をいう」




空気を変えるよう頭を下げたガルシア。……勿論、貴族が…それも王族が頭を下げることの重大さを改めて感じる


のほほんと相手してるけど、普通そういえば一国の王子を適当に相手しないものだった。馴染むからつい適当になっちゃうんだよね。だってもう今更だし




「この国が奴隷制度について快くないと思っている事も、禁止している事も知っている。本来であれば国交が断絶してもおかしくない事態だった。…だが、今回の首謀者、関係者を捕らえることを条件に国交を継続する許しを得た」



「我が国としても違法な奴隷商が民を脅かさないという保証もなく、未だ庶民の身であるも我が国が誇る毒牙の義娘の力を借り、極秘として今回の事を解決するようにと判断を陛下がされました

それに伴い、今回に限り責任及び全権限は私が保有しております。…しかしジュエライトの事情を思えば城へと保護するのも酷な話」



「聞けばジュエライトはお前に懐いているという。そしてこの土地は治癒と護りに特化した特殊な土地だとも。……よって我々が引き取るのではなく、この地を拠点に奴隷商の捕縛を実行したい。一部ではあるが兵の貸し出しの許可も頂いてる」




…………………なんか、面倒なことになったなぁ……


威厳を見せて話す二人に対し眉間に皺を刻み、それを抑える私


いや、王族にこんな顔しちゃダメなのは分かってる。思っても顔にするなって神父様が首を振ってるもん

元々あわよくば奴隷商殴ろうって思ってたし、正当な理由が出来たならあとはクォーツ達に探すの手伝って貰うだけだし。……ただなぁ、王族とかがなぁ…絡むと責任問題とか兵士がどうのか始まって物凄くダルい………


連携?兄と姉とナオ以外とは基本苦手ですけど。イベントでもない限りソロプレイヤーでしたけど、なにか?


他人と足並み揃えるのが不得意というわけでもないんだけど……語らずともフロウや契約した子には分かるし、私まだ貴族じゃないから見下されかねないしなあ………




「どうしたの?」



「えっと………ユア様。兵士の貸し出しいります?私が探すのはダメなのですか?」



「うーん………ダメってことはないのだけど……ダンテ」



「…今回の場合、首謀者の目星がついているのです


我が国としては解決できれば他国への貸し、失敗すれば民を危険にするだけでなく首謀者から北の国のジュエライトを盗んだ、などとあらぬ疑いを掛けられましょう

そしてその疑いを掛けられるのはジュエライトを保護している貴女様やヴォルカーノ神父様。事実でなかろうと噂だけが一人歩きし…信用は地に落ちます


事自体、極秘中の極秘。…恐れながら貴女様は実績がない以上信用を得られてないのです。よって国が抱える近衛騎士を動員する予定にございます。()()()お考えはこの通りです」




確かに、そりゃ一般人だから実績がないのは当然


すぐに毒牙の義娘だからと誰も彼もが信用しないのは分かってるが………近衛なんて動かしたら何かあったのかと絶対噂になると思うけどなぁ…


そもそも首謀者の目的はなんなのだろう


この国にジュエライトは居ないから売り飛ばすのが目的か、あるいは誰か……まぁ、普通に考えてガルシアを蹴り落とすのが目的か。前者は確実に足がつく……となれば確実に後者だろう

そうなったら面倒だな。何せ私はシアレスを守ることを国王陛下に約束したし、私自身誓った

となればガルシアに何かあればシアレスが悲しむわけで……必然的にガルシアも守ることになる


そもそも調べればこの森に神父様や私が居るのはすぐに分かるし、なんならこの森を管理するのを条件にこの教会を預かってるのは神父様だ。……そういえば、何でフロウはあの森に居たんだろう?奴隷商から逃げてきたあの子を保護したのだろうけど、あそこから動かなかったということはあそこが安全だと判断したからだろうけど……




「……レン?」



「シアレス、ちょっとそこのメモ取ってくれる?」



「え、えぇ。いいわよ。………はい」



「ありがと。……ユア様、具体的にはどう探すつもりで?」



「……そうね。教会を起点に兵を広げて捜索していくつもり。ジュエライトを貴女が保護したとバレてるかは分からないけど、少なくともまだ離れた場所に居ないでしょう

私も捜索には同行するつもり。兵の中にはジュエライトに詳しいものも居るから…」



「………ジュエライトに詳しい?」



「ええ。数ヵ月前に入隊した者なのだけど、元々北の国の出身でジュエライトという魔獣について教わったのも彼なの

警備の人と話してるのに私が通りすがって興味を惹いたから聞いたら快く教えてくれたし、優しい方よ」




……職務中にお喋り?王家の警備の者が?いや、多少のお喋りはするかもしれないけど、あまりにも出来すぎじゃないか…?

ぐぐっと更に眉間に皺が寄る、…見れば神父様の眉間にも皺が寄り始めていた


ユア様はただ不思議そうな顔をして、続ける




「準備とかもあるだろうから既に近衛達には今回の件は伝達済み。少数で範囲を少しずつ広げた方がいいというのもその人から言われたの。私は実践が未だだし……何より私が捜索に出ることを後押ししてくれたし」




………………頭痛がした


え、ユア様甘すぎない?……ほら神父様だけでなくガルシアも厳しい顔をしてる


ダンテだけは穏やかな顔をしてるが……悟りでも開いてるのだろうか。執事長だけあって長いことユア様の傍に居るだろうし


いやだなぁ、将来の身内叱るの……神父様に丸投げしたいなぁ……

そう思って視線をぶつけるも、そっと逸らされて終わった。かなしい




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