第二十八話
さて、ふざけるのはおしまいにして状況を纏めよう
まずシアレスに味方する理由
それは彼女が同じ異世界人で在りながらまともな保護もなく、籠の鳥となっていたと知ったから。うちの保護者の皆様から是非指導を貰って欲しいところだ
あと王子に腹が立ったので。……まぁ、多少は落ち着いたけど
シアレス自身、演技であったとはいえ無礼な事をしたと改めて謝罪してくれたしもう怒りはない
まんまと演技に騙されたけど、シアレスはアルトゥールと自分一人、あるいはディグラートさんも含めて助けを求めるつもりだったらしい。…で、それを私が邪魔するもんだから焦ったそう。…うん、私も言葉が過ぎたのでお互い様である
何よりぶりっ子っぽい態度じゃなく、慎重なのが本来のシアレスなのだろう。酷評が流れてたし、女優っぷりには脱帽である。私も見習いたい
「っていうかね、私がシアレスと繋がりを持っておくのは将来的に楽になるんだよね」
「私、と…?ガルシア様でなく……?」
「そっちの王子は私が気に入らないから嫌。どっちかと言ったらシアレスがいい」
「……言うではないか。小娘…」
スパン、とガルシアの心を一刀両断した気がする。項垂れる様は愉快である。言葉遣いも態度も国王陛下からの許可済みなので言いたい放題が出来る。最高
私がここまでこの王子に腹が立った理由……それは神父様と無意識に比べていたからだ。基準が高過ぎるかな、と思ったけど一国の王子なんだしそれくらいでいいだろう
「私のことは何処まで聞いてる?」
「…とりあえず、一通りは。ナオ殿下と睦まじいというのも。」
「そ。…シアレスには後でゆっくり話すね
私もシアレスと状況は似てる。勿論環境は違っただろうけど……私の親元となる人は、私が異世界の…前世の記憶を持つと知ってそれはもう護りを固めてくれた
常識のすり合わせ、日々の事。…何より生きれるよう、知恵を授けてくれた。勿論力でもね
勿論貴方は親元では無いだろうけど、婚約者として引き上げたならば責任が生じるのは明白。貴方が王になるならば、彼女は国母となる。……将来その責任と重圧を、貴方はシアレスへ与えた。けれど貴方はシアレスの事には何も知らず、寄り添う態度も見せなかった
────だから、気に食わない。やってることだけ見たらそのアレフって王子と何も変わらないもの。彼女は貴方を王たらしめる道具じゃない。責任が取れないなら手放しなよ、引き取るから」
第二王子は話に聞く限り、完全にシアレスのことをガルシアを王位継承権一位の座から引き下ろす為の道具としてしか認識してないようだが…ガルシアは違う
違うからこそ、何故知らなかったのだと腹が立つ。好いているのならば全力で守れと殴ってやりたいところだ。……いや、まあ、私以上に下手したら怒ってるのが国王陛下やディグラートさん達かな。だって獣人だし
王族にこんな態度を許す時点で相当まだ怒りが治まってないのがわかる。隣国の王子に公爵家や王が苦言を呈しました、なんて、もし広まりでもしたら大事だ
「……耳の痛い言葉ばかりだな。……あぁ。お前の言う通りだろう…アレフの事ばかりに気が向いていて…そして何より、向き合おうとすらしなかった己の弱さを気付かされた。シアレス、すまなかった」
「い、いえ!私はそんな…!!」
まぁ、シアレスにも謝ったし、何より相思相愛っぽいのでチクチク虐めるのは止めて上げよう。今はね
大人たちは我関せず……というか、とばっちりを避けるために視線を逸らしている。アルトゥールはいい笑顔だけどね。さてはお説教終わってないと見た。こういう時のアルトゥールは冗談抜きに飛び火するから
「……ま、まぁ、それはおいておくとして…我が国としても王位はガルシアに継いで貰いたい。現王とも度々文を交わしては居たが、接点があまりなくてな…ガルシアの継承と同時に息子の即位も執り行い、北の国との国交を強めたい
勿論既に婚約者としてシアレス嬢が居るが…昨今、突然の婚約破棄も珍しくはない。ああ、そう不安がることはない。…どうしたってやっかみというものがあるのさ。それを跳ね除けるのはガルシア、君の仕事だぞ
夜会にてシアレス嬢とガルシアが仲が良いこと。そしてそれらを俺やナオが認めている…即ち、婚約を祝福してると貴族連中に見せ付けたい
レンは知らんだろうが、やって来た貴族のほぼ全員が第二王子の息が掛かったものだ。恐らく侍女たちもだろう」
「国の事はよく分からないけど…手助けになれるなら勿論手伝う、…手伝います
夜会ってことは、ダンスにマナー。ドレスは新しく繕って……装飾品もかな?…装飾品、私使わないのあるからそれ上げてもいいですか?勿論、国で用意するならあれですけど…」
「勿論俺達で用意している物もある。ドレスもだが……準備したのは先程の侍女達だ。期待できん」
「俺らから渡してもいいんだが…賄賂だなんだって言われるからな。どうせなら頼んでもいいか?友人の贈り物なら何も言えんだろ。それに来週辺りには丁度ヴォルカーノの手続きが終わるからレンも公爵令嬢という立場になる。誕生日だろ?それなら問題なかろう」
国に利益……というか、ナオへの将来的な手助けになるだろうから、精一杯頭を働かせる
国交を結ぶなら今回の件はいい貸しになるだろう。少なくとも第二王子は敵になりかねない…というか今のところ敵認識だ
「ディグラートには今日の二人の護送と……出来るなら頻繁に顔を出してやってほしい。なにせシアレス嬢にとっては慣れぬ土地だ。結界内はほぼ安全だが魔物も居る。…今回はヴォルカーノ、及びレンの元での交流と言う名目を取りたいので俺達は護衛をつけん。…まぁ、北の国の護衛はあてにならんからな……なら信じられる者が居ればいい
俺の国でヴォルカーノの力を疑うやつは居ないだろうさ。とばっちりを恐れてな」
護衛が居ない、なんて前代未聞過ぎるが……いいのだろうか
シアレスが不安そうに此方を見てきたが、国王陛下の最後の言葉で安心したの小さく笑みが溢れた
ガルシアも頷いてるし、国の事とかは陛下に一任しよう。詳しくは私も分かってないし
「私もその子の師匠ですので時折顔を出します
それと神父様の他にエルフが二人。一人は私の弟です。二人とも信頼に足る者かと」
「巻き込んでしまってすまない……尽力、感謝する」
「なぁに、俺達にも利益があるからな!
とりあえず夜会の日程は…半月後。貴族専門のギルドの訓練所の創立でどたばたしてると思うが…それぞれ頼む
んで、レン」
「?なんでしょうか、国王陛下」
「本人から聞いた話なんだが、どうも第二王子はナオに喧嘩うったらしいぞ?バカにしたと言うべきか。穏便に済ませたようだが…愚痴をこぼすくらいには参ってるようだな?
シアレスも懐柔する気らしいし、そちらに出向くかもしれん。気を付けてな。シアレスを護り抜き、夜会を助けたら物凄くナオの役に立つぞ」
「陛下!!!!」
「分かった、全力で役目を全うします。やりすぎちゃったらゴメンネ!」
アルトゥールの怒声が気にならないほど、一気に冷めていく感覚。はは、ふざけたのはお茶目さんだからだとも。真顔だけどね
ふーん。ナオに喧嘩売ったんだ……へぇ
「あーぁ……知らねぇぞこりゃ……っと、これ以上居るとアルトゥールのとばっちりが来そうだし、あんまり長居するもんでもないか
俺らは帰るから……アルトゥール、程ほどにな」
今すぐ見付け出して殴りたいが、いい子なので我慢
まぁ、きっとナオの事なのでただ暴言を吐かれて終わるような人ではないけど。…それはそれとして喧嘩を売られる筋合いはない。北の国はどうにも他国でのマナーを知らないらしい。恥知らずはどんな結末をむかえるか身を持って体験すれば分かってくれるだろうか
ともかく私の役目は決まった。シアレスを護り、生きていけるよう知識を与え、喧嘩は売られたら買っていい。国王陛下公認だもんね!頑張ってって言われた!ってゴリ押しするから
シアレスは地頭が良さそうだし、一から教えてもすぐ吸収しそうだから問題なし。例え教会が襲われてもシアレスは自前の結界で守れるし、あの場所なら彼女と相性がいいから怪我一つ負わないだろう…警戒はするに越したことはないけど、それでも神父様やアヴィリオ達が居るからやっぱり問題なし
だから私はシアレスの立ち位置を確固たるものにする手伝いに専念した方がいいだろう。…平民、というだけで反感を買うなら彼女に価値を付与すればいいだけの事。…聖女というだけでそこそこ万能な筈なのになんだか可笑しな話なのだけど……アレフとやら、もしかしてあまり賢くないんじゃないか?まあ、ナオに喧嘩売るくらいだしね。普通に考えたら分かると思うけど…ナオは転生者関連のことで他国に掛け合ってる。というか、それぞれのトップと顔を合わせてるし、相応のやり取りもある
そこに喧嘩を売るなんて…北の国を孤立させる気なんだろうか?…やっぱりさてはおバカさんだな
「シアレス嬢、何か持っていくものはあるか?つか普通はあるよな…着替えとかなら最悪街で買ってもいいぜ。その他日用品も諸々。貴族御用達の店ならいくらでもあるからな」
「心配には及ばぬ。そのまま彼女を連れ出して貰って構わん。荷物類は俺が責任を持って後日執事に運ばせる…シアレス。他に必要な物や家具はあるか?ああ、教会に置けなかったら我が国で使えばいい。無論、街で気に入ったものがあるならば買うがよい。彼女の分もな。女同士買い物が弾むのは良い事だ…請求は俺が持つ。ここへ連絡するよう店主に伝えれば大丈夫だ」
「い、いえ!大丈夫です!申し訳ありませんし…ですが…その、街を少し見てから向かうのは…よろしいでしょうか…?」
「あぁ。勿論だとも。…この二人ならば必ずお前を守るであろう」
「見てから要る、要らないは決めたらいいよ。それに練習用の宝石も欲しいから」
最初と比べ、随分とガルシアの表情は柔らかくなったものだと思う。…まぁ、些細な変化なので鉄仮面ではあるのだけど。魔力がちょっと揺らぐから分かるだけでそれが無かったらどの面も一緒だと思ってる
……それはそれとして、なんで国王陛下は床に正座させられてるんだろう…?…いや、声を掛けては駄目だ。本能がそう言ってる
国王陛下から助けを求める眼差しを感じたが、見てないフリ。そのままさっさと城を出ることにした。…勿論部屋を出る前にヴェールを着けさせられた。まあ、そりゃあね、秘匿中だからね私……
擦れ違う人はシアレスの方に気が向いていたので私は余計気付かれなかったと思う。みんなギョッとはしてたけど、落ち着いた穏やかな表情のシアレスに見惚れてた
「よし……西の広場に行ってくれ。そこからは徒歩でギルドに戻る」
「へい、ギルマス!」
なんでも、一度神父様に連絡を取ってから行くらしい。…まぁ、そりゃいきなり他国の王族の婚約者なんて連れてきたら焦るだろうし……西の広場には出店や小物のお店なんかが多いらしいので、ギルドに直接向かうのではなくそこで降りるのはディグラートさんなりの配慮なのだと思う
最初はディグラートさんにも無礼をしたからか気まずそうにしていたシアレスも、ディグラートさんの雰囲気に絆され仲良く談笑している
話すのは基本シアレス。色々溜まってたんだろう、話題は尽きない。くるくると表情を変えて話す彼女こそ本来の姿だろう。…村娘から急に令嬢扱いに変わったらそりゃあね……無理なポーカーフェイスやら口調もストレスになるでしょうよ…
「……ここ、楽しそうな国よね。向こうの王都とは違うわ」
一頻り話題が落ち着いたとき、窓の外を見てシアレスがそう言った
「向こうはつまらなかった?」
「つまらなかった……というより、北の地は基本雪と氷で覆われてるの。だから作物が育ちにくく…農作物に関しては他国頼み。その代わり私達は寒い土地でしか取れぬ魚や植物、魔石なんかを流出するの。それは村も王都も変わらないわ。希少価値は高いから多く取れなくても問題ないの
…でもね、そんなことじゃない
あの国はね、ずっとずっと、男を立てる風習が強かった。私の村はそこまでじゃなかったけど…王都の貴族の古株なんて殆どそう
美しい女を侍らせるのは一種の権力誇張。だから私も取り入りやすかったのだけど…道具としか女を見てないのよ。着飾る宝石と一緒。だから侍女なんて特に階級の低い子の扱いは酷いし…街を少し見たときも、この国みたいに笑顔が溢れ返ってるなんて事はなかった。王都の人達は…貴族の影響を受けやすい環境だから、男の人が女の人に従ってる、なんて姿を見られでもしたら…お店なんかには特に影響があるもの」
「うわ……なにそれ、生きにくそう…」
「まぁ、北の国は長い時間そうして統治を謀っていたからな。それを変えていくのは同じくらい長い時間が必要なのさ
先々代まで王位につけるのは正妃の子でも妾の子でもどっちでもいいが健康な男児限定。女騎士は俺の知ってる限り居なかった筈だ
元々魔術の方が根強い国だし、男女間に魔術は然程差が出ないんだが…それでも早々女性が重役に着くことはなかった。今でようやく王妃が抱える二十人程度の親衛隊があるくらいか?
女は男を敬い、立て。男はそんな女を守り、子を作る。…そういう統治を何百年と敷いてきてる。まぁ、それでも何十年か前からか女性の地位も改善して来てるようだがな。だとしても古い貴族ほどそれを受け入れられないだろうな…自分達が甘い蜜を吸えなくなるだけじゃなく、優秀な女性に立場を変えられたらどうなる?家の恥…親族からも絶縁は確定だろうな
うちの国みてぇに初めから優秀な人材であれば、誰しもがどんな役職、どんな仕事も出来るように統治したら良かったんだろうが…北の国の寒さは以前はもっと酷かった
こういう統治をすることで、女子供を守ろうとしたのは事実なんだ。家に入れば凍えることも怪我をすることも…飢えることもないってな」
有能な者は男女関わらず大切にした方が国として安寧が守られる気もするけど……まぁ、国の指針に口を出しても仕方がないり数百年も栄えてるって実績もある以上、その国の人からしたら変に政策を変えても混乱は招くだろうし…ディグラートさんの言い分も分からなくは無い
だって、悪政という訳では無かったからこそ、北の国は今の今まで栄えていてこの国とやり取りがあるわけだし…環境や魔力保有者の増減とか、色々あったからこそ後世でようやくあの政治はダメだったねー、あればよかったねー、なんて話が出来るのだ。その時の最善ではあったのだろう、きっと。じゃなきゃフォローなんてしないだらうし
まぁ、それはさておき。私は絶対行きたくないな、と思う。やだよ女だけで下に見られるのとか。有能な人がたまたま女だった、男だったの違いなだけだろうに。絶対喧嘩買っちゃうもん…
「俺らの性質とは真逆なんだよな。だから獣人は殆ど北の国に居着かない。…まぁ、寒いのが苦手って奴が多いのもあるし、全く居着かないって訳でも無いんだが…」
「獣人の雄は雌と子を守る傾向が強いから。勿論雌を同格に見るし、守られるだけの存在でないのも分かってて守る。まあ、あとは個人間で色々かな。丁重に扱うし浮気なんてもっての他…しないとは言いきれないけど
特に子供はよその子であれ全力で守る。獣人にとって子は宝。勿論同族に限らずエルフや人間の子とて守りの対象。…だからこの国は獣人だけじゃなくて人間も多いよ。地域単位で子供を見守ってるからね
混血も居るし、もしかしたらこっちの国の方が過ごしやすいかもね」
勿論全員が全員その気質ではないけど、番をもった獣人なんかはわりとその気質が強い
番を失った雄なんてそれこそ情に厚い。雌とて雄を大事にしない訳じゃないが……まぁ、強い人が好きって傾向が強いくらいだと思う。守られることを当然としてないだけにそもそも雌の方が強いこともある
雌…というか女性の方が身体の作り的にしなやかな筋肉と可動域が大きいんだそう。よくそこまで調べたものだなぁとは思う。魔術が発達してるのに医学も発達してた…何せこの世界、異世界人がやたら多い。色んな世界から転生者が居る。そして時代に対して一人とかではなく複数居るため…日々新たな技術や魔術が生まれ、消え行くものが少ない。廃れる前には代用になる何かがあり、消えないように記録として保管されている…病気も癒術で治せるけど薬で治すのが一般的なのはそういった事があるからだろう
…食卓でお米が出たときは感動してちょっと泣いたよね。本当によくやった、日本の転生者
お米の名前も日本の米ブランドの名前だったので私の世界出身か…あるいは平行世界出身かな。日本食もさ、あるんだよね。お刺身が早く食べたい
この世界はとても広くて…私が知ってるのも在れば知らない技術も魔術も在るわけで、特に研究者気質の転生者が居た部門の発展は著しい。電気系統なんかはそういった先達のおかげで不自由なく使えているのである。感謝しかない
勿論、何でもかんでも喋る愚行をした人は居ないようだ。パワーバランスが崩れ、……もしかして王家がストップ掛けてたとかかな。転生と加護の神秘はシアレスが喋ってしまったけど……まぁ、本当にまずかったら何か起きてたらしいし、ちょっと世界がざわついた程度でどうにかなって良かったと思う
加護持ちの保護…という名の政治的利用はディグラートさん曰く上手くいってないらしい
そもそも身体的特徴があるわけでもなく見分けがつかないのと、ナオが矢面に立ったことで世界に害を成すから、などという名目で捜索することも不可能になったのだとか。流石ナオ、とても賢い
シアレスもナオも護りと癒しの力に特化してるし、実際何か害が出たわけでもない。…知識を伝えてもそもそも作れないものが多く……結果、むやみやたらに転生者を刺激しない、という方向で世界は固まったんだとか。…まあ、国が既に囲ってるとかはあるだろうけどね…でも転生者自身が平和に生きてるのならそれでいいと思う
有名になりたい人も居れば静かに隠居したい人も居るだろう。私みたいに
因みに破れば戦争待ったなし。各国から集中砲火される。転生者を大事にしてくれてるのがよく分かった
「……そうかもね、この国にはナオ殿下と…貴女が居るもの」
「うん。…悪い話ではないと思う。ガルシアとは離れ離れになるけど……ま、最悪北の国を見捨ててガルシアと二人で移り住んできてもいいんじゃない?王子いっぱいでしょ、向こう」
「さらっと凄いこというわね…」
呆れたような、でも楽しそうな声
私の意図を正しく読み取れたようで嬉しい限りである
…シアレスは転生者。搾取するだけされて、捨てられる可能性の方が高い。戦闘能力はほぼ無いと言っていいそうだし…余計、謀の的になるだろう
勿論治癒の力も結界も、どう考えても有能なのだが…使い方がイマイチなのだと。…傷も別に薬で治せるし、国に張ってある結界を破られたこともなく
…戦争が起きていたならば重宝したその力も今はどこも停戦状態。たまに小競り合いとかはあるけど、小規模だし…まあ、何処かが口火を切ったとしても、戦争に強制参加されることは確実だ。祭り上げて先陣をきらせるだろう
でも、この国ならば
この国ならば…既にナオが声を上げ、民はそれを信じた。だからこその平穏
既にナオという前例があるから、シアレスのことも歓迎するだろうし…しっかり保護されるだろう。あと国王陛下達が確実に他国の介入を許さないだろうし
重荷を背負う必要はなく、力と利益だけを欲する貴族共に精神を磨り減らす必要もない。監視という名の保護役は着くだろうけど…市井に降り、穏やかに暮らすことだって可能だ。それこそ孤児院の運営なんて似合いそうだ
シアレスも別に国に固執する理由もないのだろう。ガルシアが居るだけで。……けれど、やんわりと断られてしまった
「凄く魅力的だけど、私は大丈夫。ガルシア様が居られるもの。それに……今後、サルバルフ国を好きになれたら嬉しいから」
「そう。ならいいよ。……見た目によらずタフだよね。そういう人、嫌いじゃないよ」
「あら、私もよ!」
隣へと席を移して肩へ頭を押し付ける。慣れた手付きで撫でるのを甘受し、シアレスとは逆の窓へ視線を向ける。ディグラートさんの穏やかな瞳が擽ったい
…この国とて差別な貧富の差が無いわけではないけれど…ナオが即位するならば、きっと変わる。だってアルトゥール達の事好きなの知ってるからね。エルフがどうの、なんてすぐ無くなるだろうし…王都しか知らないけど、他の街や村にだって私もいつかは足を踏み入れるのだろう
もっともっと生きやすくなるのは……素敵なんだろうな。どんな国になって行くんだろう。…その時、隣で支えられたら…話し相手に北の国の新しい王と王妃が居たら、それはきっと楽しい未来だ




