第十六話
翌日は私の体調も考え、案の定お休みだった。何時もは一人で起きられるのに神父様に珍しく起こされて下に降りる。…ほんとだよ?ちゃんと毎朝早起きしてるもん
フロウ達にはお肉やお魚など私達が口にするものと同じものに味付けがないやつを上げ、テーブルに並んだ料理を見る。クロワッサンと目玉焼き、スープにサラダと…デザートには私だけプリン
昨日頑張ったご褒美だそう。やったね、神父様が作ってくれるプリンはとっても美味しい
「お休みかぁ……クォーツ達の爪を丸めて、…その後どうしようかなぁ」
朝食を済ませて自室でクォーツを膝に乗せ、リムネルから借りたヤスリで爪を整えながら一人言をぽつり。クォーツが見上げてくるのを片手で撫でながら鋭い爪にヤスリを掛けていく
今まで休みが無かった訳じゃないけど、今日は自主訓練も禁止の本格的なお休み。まったりだらだら過ごせと言われている
……確かに、正直体を動かしたくないし、寝転んだら動けなくなる自信はある。寝ようと思えば寝れるけど…勿体ないよね、それで一日が終わってしまうのは。そういう怠惰な日もあるけど、そういう日は心が元気じゃないだけだからちゃんと報告してお休みになる。…心がいっぱいいっぱいで何かしても上手くいかないし、眠れてないのが続くと余計身体も心も不安定になるしで…睡眠時間が全く取れてない時は修行させて貰えない時もある
本の読みすぎて、とかならまだしも…月に二日程度、情緒がとても
小さい頃のあの回復力はないし、そもそも魔力量が増えてるから万全になるまでは二日くらいは安静にしてろと言われてしまった。……まぁ、この空気が澄み、魔力が満ちた森な上に結界の張られた教会だから二日くらいで済むけど、普通は一週間程度は安静にしなくてはならないそう
それくらい、魔力切れはキツい
見事にすっからかんになってどうやら倒れたらしい。…うーん、魔力配分、本当気を付けなくちゃな。いくらノーチェの加護で上乗せされてるし、元々魔力が多い種族とはいえ今後は使い所が特に大切になってくるだろうから改めて今度魔術の研究の時間でも取ろうかな。効率化大事
でも唐突に休みを切り出されると何をしていいか悩む。…会社とかには常に休みたいとか思うのになぁ
整え終わった子を部屋へ放ち、入れ替わりで別の子が来ればヤスリで整えを繰り返し……うん。すぐ終わった。暴れなかったから本当あっという間だった。痛いことする訳じゃないって分かるのか、拒否もしないいい子だもんね
因みに神父様は書類仕事。リムネルとアヴィリオは私が休みになったし、昨日の事もあったので一旦ギルドに報告しに戻ってるらしい。定期報告しに私が休みのときたまに帰ってたりするから気にすることはない
うーん……となると、本当にやることないな。お昼寝は少し早いし、神父様のところでまったりしてようか
私が出来ることはないが、好いてる人の傍に居るほうが落ち着く。だからアヴィリオやリムネルの私室に居ることもあるし、神父様の書斎に居ることもある。勝手にベットで寝てるときもあるのでそういうときは流石に起こされる…まぁ、神父様は寝顔眺めてたりするけど
ともかく、思い立ったら行動
部屋で寛いでる皆には好きに過ごしてて、と言うとペイルウィング達は窓から飛び立っていった。居場所は離れててもある程度分かるし、人に襲われたら逃げるよう言ってあるので問題ない
デューに関してはインテリアとして窓辺に飾ってた水草入りの金魚鉢モドキが気に入ったらしく、中に収まって日光浴してた。……結構大きい器だけど、デューが入るとなんとなくみっちり感がある。余裕はあるだろうけど、デュー専用にしよう
で、フロウはというと、着いてくる気なのか足許を引っ付いてくる
そもそもフロウは滅多に傍を離れたがらないので諦めた。でもそんなに引っ付かれると転びかねないからちょっと離れ……あ、受け止めてくれる気で居るの?でもそもそも転びたくないから離れてね
のっそり、のんびりと階下に辿り着き神父様の書斎にノックを三回。間髪いれずに返事が来たので私が来るのを見越してたのかもしれないなぁ
「ソファは空けておるぞ」
「ん、ありがとう」
適当に本を選んでソファにぐってり
獣人は仰向けに寝ると尻尾の付け根が痛くなるので横向きか俯せ。私も俯せでよく寝てるしこっちの方が本が読みやすい
神父様達が寝転ぶと足がはみ出るのに何故か私だとぴったりサイズなのに不満を抱きながらも未だ成長期なのを信じて本を開く
床では既にフロウが眠る体勢に入ってるのでフロウもそこそこ魔力を消費してるのだろう…片手で撫でながらほんの少し魔力を渡せばふわりと尻尾が揺れた。……まぁ、私もそんなに回復してないからほんのちょびっとだけなんだけどね!
それでもフロウ自身で、ある程度魔力が回復出来るのでこれ以上渡す必要がない。というかお前も休め的な視線が下から突き刺さるので撫でる手を引っ込めて本に集中する
私よりフロウの方が私のことをわかってる節があるからな…不思議だ…
持ってきた本を開いてゆっくりと目を通す。適当に選んだから、全然面白くない本だった。……国の成り立ち、今までの政治。近隣にまつわることが書かれた書物…案外この国は広いことを知ったのと同時に欠伸が一つ
面白くない本ってなんでこんなに眠くなるのだろう
いや、まぁ、政治に関しては今後確かに役立つし情勢を読めるようにしておけと神父様の訓練だと座学中心だけど…好きじゃない話ってどうしても眠くなる。しかも神父様の声が低くて丁度いいから政治やら難しい話の時間はいつも眠気と戦っている
動き回ってると眠くならないけど…座ってるのを続けてると普通に眠くなるよね。ましてや私、ぼーっとしてるの好きだからね。お休みの日なんて特にぼーっとしてる、ぼんやりしながら木々の擦れる音を聞いたり、季節の変化を感じ取ったり…アヴィリオ達にも感性を磨いておくことは魔術面においてもいいことだって言われて、月に一度は皆でピクニックに行く時がある。そういう日は大体神父さまのお知り合いの人が教会のお留守番をしてくれるので教会のことを気にしなくてもいいのが嬉しい
…神父様のお知り合いの人、美形しかいないんじゃないかと思ってる。今の所それが覆されたことは無い
書物を捲る音とペンが走る音を子守唄に、誘われるまま意識を落とした。…本は落とさぬように抱えたのだけは褒めて欲しい
お昼寝には早いけど、お休みなさぁい…




