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第十五話




目を開けると見馴れた天井で安心した。とりあえず体を起こす


……なんか、物凄く怠い。起きるのも億劫になるくらい怠いけど、お腹も空いた

着替えもせずに寝てたのか……ってそうか、魔力尽きて倒れたんだっけ




「フォゥ」



「あ……ごめん、フロウ。おはよう」




起きても微動だにしない私を気遣ってか、寝具に乗り上げてくるフロウ


けれど何故か一瞬止まり、こちらをじぃと見詰めては何故かご機嫌になった。なんだなんだ、可愛いやつめ。でも今怠いからそんなに体を押し付けられると倒れちゃうな……


ヴェセル達が運んで…というかフロウと共に来て、事情説明してくれたのはなんとなく記憶にある


それ以降がぷつりと途切れてるのでそのままノーチェの所へ意識が飛んだのだろう……首を傾けると違和感を感じて、視線を下ろせばあの時のネックレスが首に掛けられていた。アーシェの仕業だろう




「そういえば、なんか言ってたな……フロウ鏡ほしい…あれ、そういえば他の子達は?」




フロウ以外が部屋に居ないことに漸く気付き、フロウに鏡を強請りながら聞けば器用に咥えて持ってくるなり前足で床を叩いた


床、というより階下に居る、と示してるのだろう


契約は既に済んでるので危険があれば分かるがそんな気配もない。神父様達と挨拶でもしてるのか、ご飯でも食べてるのか…呼び戻すのは別にいいかと鏡を見て驚いた


瞳が、フロウと同じように深紅になっている


いや、もっと不思議な色合い。多分ノーチェとアーシェの守りが混ざってるからか、角度によって揺らめく炎の様に色合いが変わる。暫くしたら戻ると言ってたが…どのくらいなのか


まぁ、気にしても仕方ないか。…それよりもお腹が空いた。フロウに階下に降りたいと言えば首根っこを咥えられ、背中に放られる。……あの、小さい頃ならまだしも、私大きくなった筈なんですけどね…

乗りやすいよう大きくなってくれてるとはいえ、中々複雑なのを顔に出してもフロウは笑うだけでのそのそと歩き始めた


……君、私が背中に乗るの好きだもんね


ぐでぇと木の上で眠るように体を預けてもフロウから落ちることはない。階段も器用に降りてくれるので大変楽。ふわふわの毛並みと程好い振動で何度か寝落ちかけてはフロウに声を掛けられを数回繰り返し…漸く階下にたどり着いた


怠いせいで戸を開けるのも遅くなり……顔を上げたら視線が集中した


そして見たことないくらいアヴィリオとリムネルの顔が緩んでてちょっと引いた。……わざとではない




「……なに、その顔」



「……あ、いや、何でもない。ちょっとな」



「え、えぇ。本当になんでも…って、貴女その眼は…!!」




照れて恥じらうアヴィリオに微笑ましい顔を向け、驚きの声を上げるリムネルに視線を移す


此方に来ようとしたのに何故か脚を止め、視線が空へ移っている。…あれかな、精霊の声でも聞いてるのかな




「レン、体はどうだ?」



「物凄く怠い。あとお腹すいた…眼はね、大丈夫。暫くしたら戻るって言ってた」



「ほう……言ってた、とは誰が?」



「アーシェ」




眉を上げた神父様に必要な事を話し、ネックレスを見せる。…信仰を歪めてるとか創造神の話とか、なんで神が加護を与えるかとかは伏せておいた。…それらを伝えて神父様が危険になるのだけは避けたいから


リムネルもアヴィリオも精霊から話を聞いたのか熱心にネックレスを見詰めてくる。……あれ、アルトゥールが居ない




「アルトゥール、帰っちゃったの?」



「あぁ、なんでも王宮に緊急召集が出されたらしくてな。……っていうかお前、アーシェ様もノーチェ様もあんまり信仰してる人の前で呼び捨てにするなよ。怒られるぞ」



「アーシェもノーチェも名前で呼んでいいって言った。いっぱい撫でてくれたし怒らないもん」



「違うのよ、神様たちが怒るじゃなくて周りの大人達が怒るの。庇護と精霊を与えるほど気に入ってるのを私達エルフは分かるから咎めることはないけど…他の者は見えないでしょう?


そういう者らからしたら生意気、なんて捉えられちゃうかもしれないからね」




……それはあり得そう


人前では仕方無いけど様付けしよう。…なんて考えてたら三人からまじまじと瞳を覗かれた。フロウの上なので逃げ場がない


見詰められること暫し、とりあえず満足してくれたのかご飯の時間になった。何時もよりずっと遅い時間のご飯だけど、皆起きるのを待っててくれたらしい。…あれ、ところで他のうちの子は?




「ペイルウィング達は?」



「風呂だ。ソニードが思っていたよりも賢い個体でな。綺麗にせねばレンと共に寝かさんと言えばペイルウィング達も引き連れて行きおった…様子を見て来たが特に問題はなさそうだったのでな。ついでに薬剤の使い方も教えたらペイルウィング達を洗い始めたのでそのままにしてきた」



「はえ……うちの子すっごい…」




風の魔術も水の魔術も扱えるからか、どうやらお風呂でクォーツ達を洗ってくれてるらしい。…デューは元々水辺の魔物だからそこまで汚れてなさそうだなぁ


スープにパンを浸して咀嚼し、飲み込む。リムネル特製、魔力回復に特化したこのスープはコーンスープみたいな味でお気に入りだ。…今日はフロウにも同じように与えられてるあたり、本当に魔力の消費が激しかった


フロウも因みにお気に入りだったりする、小さい頃は顔を汚して食べてたっけ




「ペイルウィングもリュエール…というか、ソニードも契約したし、過保護は程々にしてほしい。…まぁ、ソニードの方は助太刀をお願いしたけど…」



「……ヴェセルに会ったらしいな。腑抜けたと俺が怒られた」



「えぇ、貴女は私達が思うよりずっとずっと賢く、強い子だったって確認させられたわ。…神父様だけは最初からのほほんとしてたけど」



「ヴェルセルトリアがまた何時でも訪ねてこいと言っておったぞ。空間魔術の教えを乞うなら確かに相性がよかろう…どれ、予定が合えば今度会いに行くか?」




結果を出してる以上、諦めるしかないのか苦笑した二人に胸を張る


…そういえばあの金髪の人、結局誰だったんだろう。今度ヴェセルに聞こうと神父様の提案にこくこくと頷いておく


ともかく、これで鳥籠からは脱却した。訓練以外の時間、教会付近の森なら好きに探索してもいいと許可も貰ったし、万々歳である


ご機嫌で食事を終え、食器を片していたらふよふよと視界の端で輝く鰭が見えた

巻き付くように肩で安定したデュー。あれかな、そこ落ち着くのかな。ひんやりした鱗に頬を押し付けてお帰りとおはようの挨拶をした

いつの間に用意されたのか止まり木にはペイルウィング達が羽を整えている…お風呂入ったからか昼よりもっと綺麗に見える



「そういえば…名前、聞いてなかったわね。なんて子なの?」



「この子がデュー。クリスタルペイルウィングがクォーツで、更に右からウーノ、ドース、トゥーレ、クーア、スィーン」




名を呼ぶごとに羽を上げてくれたのでリムネル達にもよくわかった事だろう。…まぁ、各々尾羽の長さの違いやら羽の付き方、色合いが若干違うので分かるが


それぞれが仲良く、特にウーノとトゥーレははしゃぎまわり、ドースとスィーンは逆にあまり飛び立たず、柱や椅子に止まってはウトウトしてる。クーアとクォーツは私の傍に寄りたいようで行き先に付いてくる。…皆可愛い




「ペイルウィング達はそれで一つの群れでしょうね…ソニードの下に付いてた群れはどうしたの?契約はしてないんでしょう?」



「そういえば……群れに戻る?そしたら必要な時だけ君を呼ぶよ」




従魔と術者の在り方は様々だ。特に大きい従魔…それこそ龍種の契約なんかは必要な時だけ呼び戻す事が多いそう


確かに街中に急に龍が居たらびっくりするだろう。繋がりがあれば何処にいても己の従魔なら分かるそうなのでデューにも群れの皆が大切なら勿論そっちにしようと思う

暫く考えるように私から離れ、ふよふよと漂ってたデューは鳴かぬ代わりにふわりと鰭を泳がせて眼前に来ると感情を伝達してくる


…離れた隙にクーアとクォーツが両肩を独占したので今度は頭の上に乗っかられた。皆そこそこ重いって自覚ある?あとクーアとクォーツはあとで爪丸めようね。魔力で覆ってない時は普通に食い込むから




「……え、いいの?」



「デューはなんて言ってるの?」



「デューの群れが私の配下に着くって。しかもデューを通さなきゃ指示できないけど、契約すると私の魔力持ってかれるから契約しなくても付き従うって言ってる」



「あら、本当?…珍しくはあるけど、確かにそういう事例もあるのよね。良かったじゃない!それほど貴女が認められたってことだし、相性がいいってことねぇ」




一人ずつ退かしながらリムネルに返答し体を解す、お風呂の中でも少しストレッチしないとな…


そんなことを考えてたら丁度よくアヴィリオがお風呂から上がってきた……毎度毎度思うが、はだけた胸元は眼福である。魔術師なのに程好くマッチョ。……そういえばいい筋肉って柔らかいって聞いたんだけど、触ったら怒るかな?




「上がったぞ、チビ……ってなんだその目は」



「いや、アヴィリオの胸って揉んだら柔らかいのかなって。いい筋肉って柔らかいんでしょ?」



「はぁ?………あぁ、そうだな。触ってもいいぜ。俺のを触るって言うならその代わりお前のも触るぞ?」




日頃の仕返しだろうか、色気を流して誘ってくるアヴィリオ。……ふむ




「分かった。生で触るんだから私も脱いだほうがいいよね…」



「は?!待て待て待て待て!脱ごうとするんじゃない!!止めろ!冗談に決まってるだろうが!!!」




わざと自分の服に手を掛けて見せれば顔を真っ赤にしたアヴィリオに手を掴まれて止められた


リムネルは因みに爆笑してる。だってアヴィリオならそうするの分かってたし。揶揄うのが楽しくて毎日3回は揶揄わないとなんか調子出なくてね…




「これ、レン。年頃の娘がその手の悪戯を仕掛けるでない。殿下に怒られるぞ…アヴィリオが」



「はぁい。…でもアヴィリオもリムネルも、そういった感情を弟子に向ける人じゃないから大丈夫」



「ふふ……当たり前じゃない。弟子だって可愛い我が子みたいなものなのよ?それに劣情を向けるなんてそれこそ三流以下。薬でも盛られない限り弟子に向けるなんてありえないわ!」



「人間や獣人がどうかは知らんが、そもそもエルフはただでさえ欲が薄いって言われてるからな。…だからってそういうことはするんじゃない!!」




食器を洗い終えた神父様に叱られ、結局触らせては貰えなかった。…代わりにフロウのお尻をむにってしたら病み付きになりそうな感覚がヤバかった


お尻に顔埋めるなんて事は勿論しなかった…一歩手前で留まったとも!


まだ夜は明けず、私もお風呂に入って今日を終えるためにお布団の中へ。…何だか部屋が手狭くなった気もするけど、幸せな部屋になった

今日はフロウに抱き付いてそのまま眠ることにした。…ほんのり、お日様の匂いと石鹸の匂い


ふわふわした心地のまま、次第に重くなる瞼を抗うことなく降ろした。起きたらやりたいことがいっぱいあるけど…きっと明日はのんびり過ごすよう言われるかもしれない。…たまにはそんな日があったっていいと思う。いい夢がみれるといいなぁ…





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