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第二話




朝食を終えたら神父様おすすめのシスターっぽい服を着て、今日も訓練に励む

胸は無駄に揺れない、下着が見えることもない、しかも適度に露出や凝ったデザインのレースが入ってるので可愛いというハイスペック修道着…スカプラリオ、って名前だったかな?


耐火なので思いっきり火炎系の魔術を使っても大丈夫!…まぁ、森の方が大惨事になるから滅多に打たないけど




「その姿も見慣れてきましたね。…やはり子供の成長を見守るのはいいです。微笑ましい」



「日々成長してるのです、レンちゃんは。…アルトゥールの特訓のおかげで、他の黒猫族よりは素早く動けるようになったよ。他の獣人よりは遅いけど」



「いえ、充分過ぎるくらいでしょう。種族としての短所を克服するなんて、正しく血の滲む努力が必要なんですから。……まぁ、貴女はちょっとズルした節もありますけど」



「えへ!」




簡単なアップを終え、しなやかに身体を伸ばす。長く続けるのって、"続ける"が凄く難しいんだけど…流石神父様というべきか、私の性格を熟知してるのでコツコツ続けてるものもあれば毎日新しいことをやってたりする。それこそ魔力制御なんてゲームみたいにルールを作ったり工夫したりしてお勉強してるので飽きることがないし…投げ出したっていいとも言われてる。だって適正ってそれぞれだし。ただ投げ出すなら投げ出すで理由ややりたい事を決めるのが約束なので…もう無理!今日はできない!って日はお話して突然の休みとかになることもある。…いやだってさ、その日の体調とかでメンタルって変わるじゃん……それを許容してくれる人ばかりで良かったと思う


そして課題となったのが種族としての短所、長所は生まれながらにして決まるという点。…私のように特殊な場合は特に


黒猫族は魔力量が多く、その分筋肉の発達が遅い。それ故に獣人特有の瞬発力やら持久力やらは弱く…黒猫族と白猫族は前線に向かない

あと殆どの魔術師は、自身の魔力をストックする魔導石のアクセサリーを付けてるので、そこに魔力を溜めるためだったり、元々の保有魔力量が多すぎると異常に空腹を訴える事が多い。常に魔力を自分で生成してるからね。魔力切れに近ければ余計お腹空く


燃費が悪いって?知ってる


ちびちびと補給しないと空腹で動けなくなってしまうので、町中で何か食べながら歩いている人は大体魔術を使う人だ。勿論それを防ぐために魔導石で補助を加えるのがわりと一般的ではある…だってそうしないとほら、食費すごくかかるし…


魔力が底に近ければ近いほど、空腹で動けなくなる。集中力が乱されると魔術って危ないし…お肉が欲しくなる。とても。




「不思議だよね、生きてるだけで魔力を消費するなんて」



「魔術を使う者、特に強い魔術を使う者は体内で生産される魔力もそれはそれは大きい

垂れ流してる状態でないと、そのうちパンクしてしまうかもしれないでしょう?器に水を流し続けたら溢れるなり破けるなりするように身体とは器に過ぎませんから」



「成る程、理解」




体内をじわじわ自分の魔力の侵されていく、ようなものなのだろう。確かにそれは怖い。とはいえ自分のものなのだからそう害があるわけではないのだけど……そもそも魔術とは身体の中で魔力を循環させている。その循環の為の回路が侵されれば魔力が霧散したり魔術を発現させにくくなってしまうのだとか


特に意識したことはないし、勝手に流れ出ていくので心配はないけど…なんだか改めて意識すると不思議な感覚だ

無理矢理流れ出ていくのを止めようとすると……ちょっと息苦しい。こう、押さえ付けられてる感じが落ち着かない…




「おや、魔力を堰き止めて居るのですか?…そういえば教えていませんでしたね。魔力を堰き止めるのは苦しいですが…魔力を感知する魔物、あるいは魔術師同士の戦闘では役立ちます


どんな状況下であっても魔術を用いての奇襲ほど恐ろしいものはありません。護衛の任務につけば身をもって味わうことになりますが……基本的に襲う側が真っ先に狙うのは魔術師です」



「まぁ、だろうねぇ……普通に考えて防衛されても邪魔だし、高火力で押しきられたら面倒だしね。パーティに一人居るか居ないかで雲泥の差があるってアヴィリオも言ってたし…やっぱり魔術師って少ないの?」



「いえ、貴族間では寧ろ多い方ですよ。血筋がいいだけに魔力量が多いので……ただ、貴族は基本的に戦うことはしませんからね。十分な魔力量や才能を秘めていても魔術として発現させることが無いのが現状です。…今回作られたギルドはそういう埋もれた人材の発掘も兼ねてるのですよ」



「ふぅん、ま、予測は出来てたからいいや…私はナオの役に立てればいいもん。隣に居るのは私。それだけで充分」




堰き止めていた魔力を戻して、アルトゥールに笑いかければ「相変わらずですね。」なんて笑いながら撫でられた……大人達はどうも、まだ私を子供扱いする節がある


確かに15歳はまだまだ子供だけど……にしたって、前世の記憶のことは話したし、とっくに本来なら成人越してるのを話したんだけど……うーん。複雑だ

あれかな、チビだから子供扱いされてる??だったら流石のレンちゃんも怒るよ??




「ギルドでは殆どが貴族。まぁ、数名は貴女と同じように市街の出になりますが…その場合は、必ず貴族二名以上が推薦しなくてはなりません

貴女の場合は毒牙たるヴォルカーノ神父と私…あぁ、私も宮廷魔術師なんて肩書きを頂いてるので貴族の一人ではあるんです。位はそこまで高くありませんがね」



「それでも、アルトゥールはすごいよね。エルフはこの国じゃ生きにくいのに…それでも、宮廷魔術師になるなんて


勿論魔術師が獣人には少ないっていうのもあるけど…それでも、アルトゥールはこの国一番、魔術が長けてると思う。……そんな人の弟子なんて、なんかちょっと優越感」




むふー、と自慢げになっていればアルトゥールが小さく吹き出した


この人と師弟関係を組んで分かったことだけど、アルトゥールは本気で笑うとちょっと子供っぽくなる。いつもは優雅なエルフそのものなんだけど、ふとしたときにこうして素を出してくれる…本人は気付いてるのかな




「私なんかより、よっぽど貴女の方が凄いというのに…ふふ。なんだか不思議ですが、それでも、貴女の師となれて良かった。風の神に感謝を」



「エルフは風の神様を信仰してるんだっけ?」



「ええ。殆どの者が風の神に祈りを捧げ、精霊のお力を借りていますから。…ですが、今のは貴女との縁に感謝した祈りなんですよ。風の神は人々の繋がりの象徴でもあります」




優しく教えてくれるアルトゥールは教鞭を取った方がいいなどと考えながら頷き、頭の片隅にしまいこんでおく


まだまだ知らないことばかりだし、正直この国のことですら曖昧なところが多いけど……それでも、一つ一つ知っていく度に、今この世界に生きているのだと感じる


不安定にぼやけた世界を、自らの手で形作っていくみたいだ




「さぁ、お喋りはここまでにして午前の訓練を始めましょう」



「ん、今日もよろしくお願いします、師匠。……それからお師様もね!」




ぺこりと頭を下げて、アルトゥールの後方の木にも声を掛けておく


ドタッ!と盛大な音がしたんだけど……さては落ちたな?




「ッてめ……いつから気付いて…?!」



「最初からー。だってアヴィリオの魔力は馴染みがあって分かりやすいんだもん」



「教えたとき、一番最初に魔力感知の対象にしたのはアヴィリオだったからね」



「兄貴のせいかよ…!!!」




がりがりと頭を掻きながら近付いてきたアヴィリオに二人でクスクス笑う

この兄弟ほんと顔はいいし、性格も親しみやすい。とてもいい人達に巡り会えたものだ


昔城内で話し合った時にアルトゥールもこっそりと鍛錬を付けてくれることが決まった。宮廷魔術師なのにいいのかと思ったんだけど…個人的に教えるのは問題ないそう。ただバレた時は話題になるのだけは覚悟しておくよう言われたが…まぁ、その時はその時だよね!しかも本当は、アルトゥールだけで教えは足りるらしいし、アヴィリオも事が大きくなりすぎたって指導を辞退しようとしたんだけど……私が止めた。というか駄々こねた


アヴィリオもリムネルも居て、レーヴェディアと神父様も…それからナオも居るあの空間がどうにも愛しくて……だから、めいっぱい駄々をこねた

まぁ、アヴィリオも案外寂しがりだったし、わりとすんなり残ってくれたけどね!




「私からは魔力の流れを。アヴィリオからは魔術の基礎訓練を。…改めていい考えだと思います。一人の師を持ち、知識が偏ることも少なくは無いですから…各得意分野をそれぞれの有識者に仰ぐのは効率的でもあります。訓練所などに組み入れられそうですね」



「私の世界の学校はそうだったの。自分が苦手なことを説明するのは難しいし、何より相性があるのは仕方無い。アヴィリオの魔術の説明は分かりやすいけど、魔力の説明は大雑把すぎて難しい…アルトゥールはその逆。全部が細かすぎて分かりにくい


特に魔術なんて無かったのが前提にあるせいで、火だってどうしてできるのか、とか研究しそうになる私にとって魔術の説明を細かくされるとイメージしにくいんだよね…」



「まぁ、確かにな。魔術はぶっちゃけ、魔力とイメージの投影だけで出来る。難しい魔術程、勿論ちゃんと知識がないと出来ないが…強くイメージすれば、それっぽい何かは作れる。そこらの柔軟性は個人差出るが」



「優れた魔術師は自分だけの固有魔術を持っていますが……成る程。発想の転換、柔軟性が必要だったんですね。私はそこらは苦手でして…決められたことを準ずることしか出来ない以上、確かにアヴィリオの方に適正があるでしょう


ふふ……資質のある弟子と、優秀な弟を持てて幸せです」




自分だけじゃなくて、アヴィリオの頭にもアルトゥールの手が乗せられた

勿論ツンデレと名高いアヴィリオはそっぽ向いてるけど…耳が赤い。嬉しいんだな、きっと

お兄ちゃんに認めて貰って良かったね、という生暖かい念を込めて見てたら、思ってることがバレたのかぐりぐりと蟀谷をやられた……いや、痛い痛い!!ちょっと、照れたからってやりすぎだから!!


べしべしと反撃すれば、またアルトゥールが楽しげに笑った。あぁ、今日も賑かな訓練が始まる




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