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第六十二話



───夜が明け、翌日


朝食を済ませた私達は国王様が手配した二台の馬車に揺られ、従魔も込みで全員ドナドナされている。シアレスなんて顔色が若干悪い


教会を空けてしまうことになるが、なんと入れ違いでレーヴェディアが守りに入ってくれるそうで……ほんの数秒だけ久し振りに視線を交わした。他の兵士さんの事もあったので会話はせず、ただ一方的に手と尻尾を振っておいたのだけど……馬車の扉が閉まる直前、ガシャン、と大きく鎧が鳴る音と「レーヴェディア様!!」「鼻血が!!」「誰か清潔な布を持ってきてくれ!!」と喧しい声が聞こえてきたので相変わらずだなって思った


すん、としてれば神父様が深い溜息を零したのでそれにシアレスが笑うのを我慢してたのは面白かった


先頭の馬車にはアヴィリオとリムネル、それからアルトゥールとフロウ以外の私の従魔。何で他の子も連れてく必要があるのかと思ったけど……私達は北の国の貴族を信用してませんよ、ガルシア達以外は。という無言の抗議をしたいらしい。さすが神父様、とても賢い


後続に神父様と私、それからフロウとシアレスに……なんとジュエライトも一緒に来ている。教会だと知らない人ばかりになるのに加え、ガルシアから連れて来るよう連絡を受けていた


なんでも、ジュエライトの事で一先ずの決着を付けたいらしい。……アレフとかいう王子までは恐らく引き摺り出せないけど、少なくとも切っ掛け作りにはなるのだとか

じわじわ報復する方がいいと満場一致で決まったのでこうして大人しく運ばれている


ちなみに私はまだ公爵令嬢ではないので今回は教会としての正装。昨日ので焼けてしまったのとは別で、改造されたスカプラリオと教会関係者としての証であるロザリオを首に掛けた世間一般的なシスターさんの格好。正直スリットが入ってるとはいえ動きにくい。スパッツを履いてるけど走り回るのには適してない格好なのが不満だ




「レン、落ち着きなさい。決して城内で走り回るでないぞ」



「分かってるよ、神父様。ちゃんと今日はいい子にしてる」




本日は保護者同伴なので何かあっても守って貰えるが、私も好き勝手には暴れられない。暴れていいのは神父様からGOサインが出た時限定


……因みに朝食の時に神父様とは合流したが、ルシェシラルト達は既に城に連れていかれたそう。アレフの手下が待ち伏せして居たら大変だが、どうやら神父様の知り合いの騎士が居たらしく大丈夫…らしい


神父様が大丈夫っていうなら大丈夫。逃げてもまた縛り上げればいいし


寧ろ今度こそこっそり報復してやる




「きゅ…」



「あ…ごめん。不安だよね。大丈夫だよ、クリフト達も城に居るし、絶対君を他の人に触れさせないから。…フロウ、お願いね。私の守りは今日はクォーツとデュー達に任せて」



「……フォゥ」




不安そうな鳴き声と不満そうな鳴き声。両隣に座るそれぞれの頭を膝に乗せ、何度も頭を撫でてやる。…馬車の中はどうやら魔導具が作用してるようで普通の部屋と何ら変わりない。空間魔術の応用なんだとか。勿論普通の馬車は部屋とかはない。高貴な身分だとしてもここまで広い事は滅多にないそう。…魔導具、お高い。あと数がそこまで出回ってないんだとか


魔術と化学は相性悪い様に見えるけど、どうやらこの世界はそうでも無いらしい。魔導具なんて両方の技術が合わさった努力の結晶な訳で……だからこそ数に限りがある。魔導具師はそれはもう、未熟だろうが資質があれば国で保護、教育されるレベルに貴重なようだ




「神父様やシアレスが行くのは分かるけどさ、私とアヴィリオ達って居る?邪魔じゃない?教会も心配だし……」



「今回の功績者はお前さんだろう。またアヴィリオ達に関しては被害者であり参考人……まぁ、ディグラートの奴が心配しててな。本当ならアルトゥールではなく昨夜はディグラートが此方に来る予定だったんだが…」



「……アルトゥール様、駆け付けてレンを抱き潰してましたね…」



「彼奴は……全く…自制の効かない奴では無かった筈なんだがな……お前さんを甘やかし過ぎだ、あのエルフ三人は」



「レンちゃんってば可愛がられてるからね、仕方ないね。神父様にも甘やかされて育ってますぅ」




あの三人程顕著ではないが、神父様とて充分私に甘い。……具体的には修行が上手く行かなかった日の夕食は好きな物にしてくれたり、一週間に一回は必ずブラッシングしてくれたり

ふふん、と胸を張って言えばシアレスが笑い出した。そう言えばよく笑うようになって喜ばしい限り……神父様もそう思ってるのか、シアレスを見る目は優しい




「素敵ね。……ちょっぴり羨ましい。…勿論私の両親も素敵な人達だったのよ?村の人たちも皆。……お父さんを思い出しちゃった」



「ふむ───ならば、養子となるか?今更娘が一人増えた所で私は一向に構わんぞ」



「「えっ?」」



「シアレスにも後ろ楯が必要であろう?無論、北がとやかく言ってくるであろうからあくまで関係が良くなったら、の話ではあるがな」




事もなさげにサラッと言った神父様を二人で見詰め……揃ってお互いを見詰める


…………シアレスが姉になる……………………………………




「想像つかないなぁ…」



「これでも貴女より歳上なのだけど?!」



「でも私より世間知らずだし、あとガルシアが面倒くさそうだなぁ……義兄と呼べ、とか言ってきたらどうしよ、嫌な顔しちゃう…あとめちゃくちゃ引き抜いて来そう……ナオに叱られる……」



「嗚呼、引き抜かれるのは困る。…ふ、それに北の国が許す訳もないか…」



「…嬉しい申し出ではあるのですけど……私もこの国と故郷を天秤に掛けたら……やっぱりどうしても、…酷い事もあったけど、それでも故郷を優先してしまう」



「神父様の養子になったら……此方の国の事でも板挟みにされちゃうしね」




公爵家の後ろ楯は確かに物凄く心強いのだが……そうなると、彼女は我が国の出自、という事になり、例えば北とうちが戦争を始めた場合……王妃だろうと何だろうと、我が国へと強制送還される


これは各国での決まり事で、だからこそ各々の国を跨いで婚姻をしている人貴族の殆どが外交と牽制目的なんだとか。勿論お互い惹かれあっての結婚だってあるし、貴族だけでなく一般人にはその決まり事は反映されないから、色んな国の人が住んでる国だってある


貴族には貴族のルールがあり、財や権力がある分責任も大きくなる


あくまで貴族というのは王家の手足に過ぎず、王家は国を動かす為の歯車に過ぎない


民なくば国とは立ち行かず、王なくば民草はいずれ潰える。どちらかが無くなったら上手くいかなくなるものなのだ。王でなくとも指導者というものに名前を変えて、人々は己の先頭をゆく者を祭り上げる




「難しいよね、貴族社会って。社交界に出てなくてこれなんだから、もっと面倒になるってことでしょう?」



「無論、お前さんが覚えるべきところはまだまだ沢山あるぞ。…お前さんが巫山戯た時に出る物騒な言葉遣いも矯正しなくてはならんしなぁ…淑女の言葉遣いではあるのだが……」



「えっ?!貴女お嬢様言葉なんて使うの?!」



「シアレス、レンの使うお嬢様言葉は社交界のものとは違う。真似をされては困るから聞くでない」




あまりにも驚くシアレスに口を開こうとしたら瞬時に神父様に塞がれた。…解せぬ。ちゃんと此方でも使えるお嬢様言葉なのに。ただ神父様達の前でやると笑い出す。まぁ、元々そういうやつだしね




「遺憾の意」



「笑うと分かっててやってるだろうに……」



「残念、気になるのに…」




既に疲れきったような神父様に瞳を輝かせているシアレス。私としては言ってもいいんだけどなぁって顔をしたらまた止められてしまった




「……じゃあ、お城で喧嘩売られたらお嬢様言葉使う。穏便に済むでしょ?」



「……まぁ、吹っ掛けられることなどないだろうからな。それならば良かろう。シアレス。私やレンの傍になるべく居なさい。立場上私に噛み付こうする奴らは北の国を除いてほぼ居ない筈だからな」



「はい、お手数お掛けします」




アルトゥールはアヴィリオ達に付き添うだろうし、負担を一箇所に寄せたくない。私も神父様の提案に頷き、フロウとジュエライトを撫でる


会えるかどうかは分からないけど、ナオに会える事を僅か期待して…それからついでにアレフとかいう王子にも会える事を期待して。……喧嘩売ってこないかなぁ…




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