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第五十八話




クリフトが泣き止んだ所で説明を受けた

曰く、今の質疑応答は北の国だけでなく王族が罪人を許す際によく使われる質問で、コイツの命は俺のものだから外野はこれ以上手を出すなよ、という牽制なのだとか




「以前教えたはずなんだかな…」



「ん〜……ん〜…………?…………あ、思い出した。必要ないと思ってすっ飛ばした所だ、多分」



「…お前、そういう所だぞ……」




とんでもなく呆れた顔をしてるガルシアの横でユア様とシアレスも苦笑している


だって面倒だったんだもん…いくらなんでも回りくど過ぎるでしょ…


王族とて、体裁があるから無罪放免を言い渡さないだけで、命を預かった、なんて言っても事実無罪放免とあまり変わりない

因みに後者を応えてた場合は問答無用で死罪だが…まぁ、後者を選ぶような人にあんな質問はしない




「でもユア様は良かったの?」



「えぇ。彼らを生かしておいた方が今後の利益に繋がるでしょう?それに、奴隷商という立場全員が悪人であることが無いのは私も陛下も理解はしてるの

だから、ガルシア殿下の顔を立てて今回は見逃します。…それに、大元が残ってるんですもの。彼らに構ってる場合じゃないわ」



「少なくとも陛下へと報告はさせて頂きますが、ガルシア様とレン様の口添えがある時点で彼らの身の安全は守られましょう」




ユア様とダンテの言葉に肩に入った力を抜きつつ、放心してるネルとハイトを見る。…うん、クリフトが話し掛けに行ったから大丈夫そうだね。そのうち復活するはず


あれ、そう言えばルノーの事は入ってなかった気がする




「ルノーはどうするの?」



「どうするも何も、魔族はそもそも同族以外に対しては中立だし、彼らが忠誠を誓うのは魔王だけでしょう?だから私達がどうこうするわけには行かないし…問題が起きた場合には必ず魔王を通さなきゃいけないのよ?」



「…シアレスの方が物知りだ!どうしよ!!」



「その辺はこの国はあまり関わりが無かったからな……丁度いい。共にいる時間は長くなるのだから彼女から学ぶと良いだろう」




シアレスってばやっぱり頭いい子なんじゃないか。ドヤ顔をしてるのが微笑ましい…が、シアレスの横のガルシアの視線がうるさい。私に嫉妬しないで欲しい




「はっ……トドメも刺さず仲良しごっことはいいご身分だな」



「あぁ、起きたんだ。おはよう?ついでに言うといいご身分だから。悪いね」




吐き捨てるような言葉に視線を柱へと移せば、忌々しげに睨まれてしまった

身動きは取れず、魔術は封じられてるのだから当然と言えば当然か。ルシェシラルトは逃げる気力もないだろう


あぁ、そうだった。嫌な事はさっさと終わらせるに限る




「ガルシア、シアレス連れて此処から離れてて。ユア様達も。あとアヴィリオとリムネルもかな。別に居たいならいてもいいけど」



「は?駄目に決まってるだろうが。…何をする気だ、お前」



「うーん………尋問?」




シアレスとユア様には見せたくないのは本心だ。…エルフ二人は見られて困ることは無いが……種族上、そういうの嫌かなぁ、という心遣い程度なのだけど…正直、リムネルは参戦してきそうだ。尋問の許可?知らない知らない、私に攻撃してきたのが運の尽きだね




「神父様はいざって時に居て欲しいし、クリフト達は真偽の判断を付けてもらわなきゃ困る。ルノー達は自由にしてていいけど…離れてた方が懸命かな」



「尋問なのよね…?……嘘でしょ、貴女」



「尋問という名の拷問なだけですぅ。……シアレス、それとも参加する?言ってしまえばシアレスも当事者だから構わないよ私は。血に慣れるって点ではいいと思うけど」



「駄目だ!!」




食い気味に声を荒らげたのはガルシア


ほんの僅かにしか動かない表情ながらに苛立ちを隠せてないし、私の胸倉を掴んできた




「ふざけるな。彼女は巻き込まれただけだ。」



「ふざけてない。ガルシアこそその甘ったれ何とかして。殴るよ?」



「俺は甘ったれなんかじゃない。幾ら公爵家だとしても口が過ぎるぞ、お前」



「そうやって批判してきた臣下は罰してきた訳?とんだ暴君だね

いい?巻き込んだのはアレフとかいう第二王子だと思ってるならお門違いだよ。巻き込んだのは君自身。シアレスを正しく囲い込んで、隙を与えなければジュエライトの一件も起きなかった


──ふざけてるのはどっち。王妃をただのお飾りだと思ってるなら表に出て。清濁を呑ませる覚悟がないなら私は貴方にシアレスを任せられない」




互いに胸倉を掴み合い、鼠色の瞳から逸らさず睨み合う

ガルシアの事は嫌いではないが、この件に関しては未だに腹立たしい。シアレスを巻き込んだ、という事に関してだけは一番の戦犯はガルシアなのだから

彼女の溢した涙も嗚咽も、謝って終わるものでは無い。心の傷は人が無遠慮に終わったものだとズケズケ入り込んでいいものじゃない


それに、彼女を娶るという事が…王妃になるということが、どういう事なのか、恐らくガルシアは理解しきってないと思う

男尊女卑が色濃く残ってるとはいえ、そんな風になって欲しくない




「はいはい、二人とも落ち着きなさい。彼女が困るでしょうが」




沈黙が続く中、ぐっ、と額を押され間に入ってきたのはユア様

仕方なくお互い手を離し、間にユア様を挟んだ状態で距離をとる。…睨んでるのは続行中だけども




「レンちゃん、落ち着きなさい。貴女、言葉が足りない節があるわ。…私が言えた事じゃないけど、常識が異なる場合があるのも理解しなくてはダメよ?貴女が彼女の事を大切に想うのは分かるけど…ちょっとやり過ぎ。0か100かしか無いわけではないのだから、せめて加減はしなさい


ガルシア殿下。貴方もです。それに尊重すべきは彼女の意見でしょう?…拷問に立ち合う、のは流石に滅多に無いでしょうけど…けど、レンちゃんの言うように、貴方は彼女に清濁を呑ませる選択を強いたようなもの。だというのに過保護というのは些か甘過ぎます。彼女は彼女の意思で貴方の想いに応えた。…共に手を取り合っていくのならば、今ここでその甘さを断ち切ってしまった方がいい


国というのは、どうしても綺麗事だけで発展していくわけじゃない。王妃ともなれば、その判断一つで人の命が潰えるなど当たり前のこととなるでしょう。それに侵略行為が今は禁止されてますが…小競り合いを続ける国とて在ります。王族派と貴族派による内政での揉め事もあるでしょう。…時には非情な決断を下さねばなりません


その事は貴方もよくご存知の筈ですよ」




諭す様に怒られ…しかもガルシアにしては歳下の王女から怒られ、流石に目に見えてバツが悪そうな顔をして顔を背けていた


言葉が足りないと怒られた私も睨むのは止めた。常識が違うならまず擦り合わせからしなきゃ解決はしない。…腹立たしいってだけで突っかかってた訳じゃない。そんなに喧嘩っ早くないよ




「だが、それと拷問に携わるのは違うだろう」



「血に慣れておく、非情な決断に慣れる、色々身になる事はあるよ。ゆっくり考えられるってだけまだ甘い方でしょ」



「王妃が拷問をするなど聞いたことがない。お前は彼女をどうする気なんだ。…随分と野蛮な公爵家だな。神父の義理とはいえ、娘とは到底思えん」



「は?……君こそ随分とぬっるい思考してるけど、それでも北の国の王族?氷の王子なんて過大評価だね、やっぱり

好きな女もろくに守れてないんだから玉座なんて渡しちゃいなよ。私が彼女預かるから。腑抜けた男がシアレスに釣り合うと思ってるわけ?」




喧嘩を吹っ掛けてきたのは向こうだ。第2ラウンドの鐘が頭の中で鳴った気がする

胸倉を掴むなんて今度は大人気ない事をせずただお互い一歩近寄って、彼は睨み下ろし、私は睨み上げる




「不敬罪で罰してやろうか?」



「権力に訴える訳?小さい男。だったらこの件から手を引くけど。お願いしてる立場なの理解してる?」



「お前こそ、一度受理した話を反故にしようなどと随分と卑怯な女だな。お前こそナオの肩を並べたいなら何とかしたらどうだ」



「今関係ないナオの名前出せば怒鳴るとでも思った?冗談でしょ。私はこのままでも愛されてるからいいの。私はナオに出来ないことをするのが仕事


その点、君、シアレスに何にもさせない気でしょ。彼女に劣等感でも抱かせたいわけ?これだから俺様系は!何でも思いどおりになるって勘違いやめておいた方がいいよ?自分は他者を上手く使えない、好きな相手を縛るだけの無能ですってアピールしたいなら別だけど」




嘲笑を互いに向け、各々地雷を踏み抜いたのだけは分かった


周り?呆れ返ってる気がしてるけど喧嘩ふっかけできたのが悪い。売られた喧嘩は王族だろうと買いますけどなにか??




「言ったな野蛮女」



「言いましたけど?無能王子」



「この状況で仲間割れとは随分と腑抜けて──」



「「うるさい!今話し合いをしてる!!!」」




ポカンと呆気に取られてたルシェシラルトだったが、何を思ったのか急に口を挟んでくるもんだから、怒鳴ってしまったし……つい、魔術を放ってしまった




「「あ」」




私は水の。ガルシアは雷の


感電死しては居ないだろうが、白目を向いて意識を吹っ飛ばしてしまった。暫くは意識が戻らないだろう

これでは拷問云々ところでは無い。シアレスを参加させなかったとしても情報を聞き出さなくてはいけなかった。だと言うのに失神…時間を無駄にしてしまった…




「…ふ、…ふふ!仲がいいのね!ガルシア様がそんな顔をなさるなんて!」



「シアレス……笑わないでくれ…」




耐えきれず、というふうに笑い出したシアレスに、張り詰めた空気が霧散した。涙を浮かべながら大笑いしてるシアレスに勿論ガルシアは困り顔




「……ガルシア様、私、弱いままで居たくないんです。彼女程賢く強くはなれないでしょうけど…せめて、一緒に清濁くらい呑ませてください。王妃は王の臣下の一人。貴方の力になりたいんです」



「…………この女ほど喧しく強くなられても困る…」



「は?いい加減温厚なレンちゃんとて怒るよ?喧嘩売ってる?買うけど?」



「そういう訳では無い。……あぁ、俺も言葉が足りないのか」



「それなら……いや、そうだとしてもやっぱり喧嘩売ってるでしょ?」




この野郎、と揺さぶってみるも…何故か、珍しく笑ってるガルシア。ちょっと引きながら揺さぶるのを止めておいた。頭を揺らしすぎて壊れたか…?




「お前さんはアレだな、人に良い影響を及ぼす。…やり方は少々雑だが…」



「少々?だいぶ野蛮だろう。少なくとも令嬢教育をしているとは微塵も思えんな」



「うわ、綺麗な顔なだけ余計腹立つ〜シアレス、殴ってもいい?」



「ガルシア殿下。あまりレンちゃんを揶揄わないで。本当に殴られますよ」



「レン、どうどう。落ち着け」




表情筋を緩めて喉を鳴らすように笑うガルシアに本気で殴ろうとしたらアヴィリオに止められ、クリフト達とリムネルには微笑ましい顔をされてしまった




「仲良しなのねぇ…」



「違う。断じて違う。私が仲良しなのはシアレス。ガルシアは付属品」



「そうは言うけどお前…ガルシア殿下の魔術に合わせて水の魔術使っただろ。無意識だったか?」




なんて、アヴィリオとリムネルに言われ……これまた勝ち誇った笑顔で此方を見てくるガルシアに殴り掛かった


……神父様に首根っこ掴まれて捕獲されたので叶わなかったけど




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