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第五十三話




「……話は分かった。……馬鹿なのかお前は?いや、馬鹿だったな。お前。これで魔術師が居たらどうするつもりだったんだ、本当馬鹿だなお前」



「馬鹿じゃないよ!!!」




無事教会に着いた……のは、いいんだけど、地面に座らされて説教されてる私なのであった…


起きて外で待っててくれたようで私を見るなりアヴィリオってばキャパ越えしたのか心配し過ぎて壊れたのか、マジトーンで片手で顔を隠しながら私の頭をペシペシしてくる。…全然力入ってないとはいえ、クリフト達の奇妙なものを見る目がキツイ…

リムネルに助けを求めたいが、絶賛嬉々として追加で縛り上げてるので見ないこととした。…なんか危ない縛り方してた。おっさんのとか、見たくない




「はぁあ~………」



「溜め息つくと幸せ逃げるよ?」



「誰のせいだと思ってんだお前……怪我は、本当にないんだな?魔力切れも起こしてないな?」



「大丈夫ぅ」



「ん。ならいい」




くしゃくしゃと荒々しく、でも優しく撫でて貰いお説教が終わった。…次にアヴィリオが視線を移したのはクリフト達。それから捕縛された奴等。…あれ?なんか猿轡もしてない?何処から用意したのリムネル…

…鋭くなった視線を捕縛した連中に向けるアヴィリオ。怒ってるなぁ。下手な口出ししないで黙ってよう




「……お前らか。此処で好き勝手やってる奴等は。…大方、うちの子も慰みものにでもする気だったか」




猿轡をしてるから話せない…かと思ったら、アヴィリオが一人の男の猿轡だけ魔術で切り落とした。私に最初話し掛けてきた男だ




「し、知らん!!!私は逃げたジュエライトを渡すよう言っただけだ!!私は侯爵家だぞ!!!」



「うるせぇよ」




喚く男に対して冷ややかなアヴィリオの声。…男の横を、アヴィリオの拳が通った


───ドゴォォン!!




「あ~ぁ……」




早すぎる訳ではない。本当に、まるで握手をするために手を差し出すような速度で木を殴り付けた。…それだけで、木が三本ほど、倒れた

インパクトの瞬間だけ魔力を回したから、魔力消費も少ない。流石だなぁ、循環がスムーズで調整も上手い




「え……えっぐ……エルフって非力じゃないのかよ…」



「アヴィリオもリムネルも、私の師匠。…私より弱いわけないでしょ。……それに子供を大切にする種族が、手塩に掛けてる幼い弟子が害されそうになってぶちギレないと思う?」



「………思いません…」




くっついて戦いてるネルとハイトに告げれば壊れた人形よろしく、首を何度も勢いよく振っている。…なぜか横でクリフトも重々しく頷いてるのはなんなのだろう

アヴィリオってば、神父様に言われたのにまだ過保護が抜けてないなぁ……もう、困った師匠だ。嬉しいけど


物凄い音がしたからか、リムネルが猿轡を終えて戻って来たけど…ガタガタと怯え、漏らす男はガン無視してクリフトへ視線を巡らせた。…クリフトのサーベルは返してあるけど、取り上げるのだろうか




「あら、レン。こいつはいいの?見たところ貴女ったら、返り討ちにしたんでしょう?」



「見たらわかるの?」



「そっちの二人の服は勿論、この男にも貴女の魔力の気配が少しあるもの。フロウのもね」



「流石だなぁ…クリフトはいいんだ。情報は勿論何がなんでも聞き出すけど、無暗に傷付けるつもりはないよ。だってクリフトってばね、最初も負けた後も私の心配してきたんだよ?凄いよねぇ、私より弱いのに」



「……うるせぇ、弱くて悪かったな!」




リムネルを警戒してワンテンポ返事が遅れたクリフト。その反応を見てか、或いは私より弱い、というのに安心した様な反応をしてリムネルが優しく撫でてくれた

柔く細められた目を見て、クリフト達も若干警戒を緩めた…様に思える。勘なので分からないけど。


ネルとハイトはリムネルを見て二人でこそこそしてる。…うん。久しぶりに見た、その反応。まぁ、そうなるよね。知ってた


リムネルの手が私から従魔達に移り、漸く解放された。…アヴィリオは絶賛男の胸ぐらを掴んで脅してるので見てない聞いてないを貫く。多少痛め付けとけば素直になるでしょ




「じゃあ、素直に話して貰おうかな。誰に指示されたのか。何を目的としてたのか」



「っ………本当に、いいんだな?いや、お嬢ちゃんの実力を疑ってる訳じゃない。…エルフ二人の実力も勿論。…それとこれとは別だ。貴族ってぇのは無い罪をでっち上げたり、人に被せるのだって出来る。…ただの餓鬼や俺みたいな奴なんかには簡単にな。……それでも、知りたいのか?」



「ずっとそう言ってるでしょ。というか君の証言が必要なんだってば。早く」




この期に及んで未だ私の心配をしてみせるクリフトにリムネルもアヴィリオも感心したのか息を洩らした。…ところでアヴィリオ、なんか一人気絶してない?見せしめ?

後ろの方で「言うな!!」やらごちゃごちゃ聞こえるけど、煩かったのか気絶した男を投げつけたアヴィリオ。……なんか、怒りすぎて乱暴になってない?普段そんなことしないでしょうに。…後でケーキ作って上げよう。生クリームたっぷりの


どん引いてたクリフトも、私の急かす視線と動きを見て、何度か口を開閉し…漸く、決心がついたのか名を告げた




「───アレフ・サルバルフ第二王子殿下。…俺が依頼されたのは間違いなくその人本人だ」



「…本当に間違いなく?誰かが変装したとかじゃなくて本人?目的は?」



「第二王子に心酔してるノーブルって貴族が居たし、ジュエライトは王族が居なきゃ入れない所に住んでる。…ノーブルは今日は城に戻ってる。目的は………悪い、確証がある訳じゃないしハイトが聞こえただけなんだが…」



「第一王子の失脚、排除です。…自分がのしあがるため、ジュエライトが一匹行方不明になったのは第一王子のせいだと被せるために、兄貴に依頼を出してきたんです。……僕、もうだいぶ薄いですけど獣人の血を引いてるんです。ですので壁からこそっと聞いたので間違いないかと」




吹っ切れたのか苦笑するハイト。…クリフトとネルは心配してるのだろう、その視線にも大丈夫だと柔く首を振る

先祖返り…というほど、濃くはないのだろうが、稀に何代も前の血族の能力が若干表れる事がある


ハイトもそれだろう。人間と血が混じり過ぎてるとはいえ、充分信頼に値する証言だ


そこへ、黙って様子を見てた仔馬が近寄ってきて鼻を鳴らした




『僕も証言しよう。少なからずノーブルという男と、そいつらは第一王子の失脚、及び聖女を慰み者にせんと計画を立てていたと』



「それは信頼出来る?」



『魔物しか居ないからと油断してた馬鹿どもの話だからな。僕は嘘はつかない。魔王様に誓って』




最初に出てきた二人だけでなく、他の奴等も同類だったか。…痛め付けておけば良かったな。死ななきゃ軽傷。治せるし大丈夫だったのに




「魔族か。珍しいな、大陸の中央にまで出張ってくるなんて」



『お前達もだろう。此処よりもっと東の地に住み、引き込もってばかりの一族と聞いたが…違うのか?』



「そうねぇ…アタシ達若い世代は外に出たがるけど、じい様らはあんまり出ないわね。何せ失うのに臆病になってるから」



『そうか。……ところで小娘…レン、と言ったな。こいつらはどうするつもりだ』



「神父様に指示を仰ぎに引き摺ってく。……あ、クリフト、ジュエライトに会っていく?時間は少しだけだけど…約束は守るよ」



「い、いいのか?!…あ、いや………ルノー、お前だけ行ってくれ…」




あの仔馬、ルノーというのか。聞くタイミング逃したから良かった

…にしても、あれだけ心配して、会いたがってたのにどうしてこないんだろう




『ふん、僕に使い走りをさせるなんてな。…まぁいい。坊はいつまでも嫌われることに臆病だからな』



「うるせぇ!!!臆病じゃねぇし坊は止めろってば!!!」



『なら自分で会いに行け』



「うっ……いや、駄目だ。…頼む、ルノー」



『……………仕方ない』




やれやれ、とばかりに首を振る度、ふわふわの虹色の鬣が揺れるルノー。…ちょっと……いやだいぶ、その毛並みに指先を入れたくなったが我慢し、ルノーを連れて歩く

勿論フロウも連れて。…ごめんって、睨まないでよ。君の毛並みも好きだけどふわふわじゃなくてサラサラなんだもん…ってイタタタタタ!!太もも噛まないで!!




「も~……ごめんってば。はいはい、君が一番だよ…」



「フォ」



『……確か従魔術師だったか。我らと違い言葉が分からないというのによくコミュニケーションが取れるものだな』



「うん?…まぁ、実際の言葉は分からないけど、何となくは分かるもんだよ。特にこの子は小さい頃から一緒に居るからね。……でも、実際知れたら楽しそうだよね。私の従魔全員。何を思って何をお話ししてるのか気になるもん」



『…魔物の扱う言葉は魔物か魔族にしか分からないからな。まぁ、知恵と力を告げれば、種としての限界を超えて進化し、人間達の言葉をそのうち扱えるようになる』




へぇ…初めて知った。魔族に進化するってことでいいんだろうか


フロウが何を思ってこんなにベッタリなのかいつか知れるのか………いや、知りたいような、知りたくないような。…なんかナオに怒られそう。べったりしすぎって


そんなことを考えていたら、フロウがルノーに向けて何か話し掛けた。…普段の鳴き声とは違う、遠吠えの音量を下げたような、そんな鳴き声




『は?僕を翻訳代わりにする気か?………まぁ、確かにお前にも世話になったが……分かった。今回きりだからな。伝えたいことがあるならお前自身がとっととこちら側に来い


レン。こいつからの伝言だ


──お前が番と一緒になっても離れる気はない。二人纏めて死を看取るまで。…あとあの魚は生意気だ。要らない


以上。随分と賢い個体だが、こんなに執着する魔獣は初めて出会った。良い関係を築けてるようでなによりだ』



「番って……ナオのこと?…あと君ねぇ、デューは必要だってば。そりゃ最初は試験だからって思ってたけど、デューの機動力と攻撃力は役に立つし、その分危険が減る

無理に仲良くしろとは言わないけど、要らないとか言わないの。…私にベッタリしてるから嫌いなんでしょう?」



『そうだろうな。先程もパートナーに相応しいのは自分だとこいつとソニードが小競り合いしていた』




デューとフロウとは本当に一度話し合わなきゃいけない気がしてきた…ため息を洩らせば、フロウが珍しく申し訳なさそうに視線を逸らし、体を寄せてきた


中庭に向かっていた歩みを止め、フロウを抱き締める




「君ね、私の特別な従魔は君だって言ったでしょう?…君が守って、私とデューが攻撃する。そうすれば護衛とかも危険度はぐっと下がるし、デューには群れがあるからあまり遠出出来ないよ


……拗ねてるんでしょ。最近構って上げれてないから。…違う?」




ジュエライトの守りをお願いした時から聞き分けが良すぎた気がしたんだ。私から離れるのに




「……フォン…」



『…随分と丸っこくなったものだな、アースフォクスが。刷り込みの影響だけではないだろう……言うな?…贅沢だな、お前……まぁ、いいだろう。好きにしろ』



「え、今何話してたの」



『何でもない。お前はこいつをとりあえず構ってやれ。寂しかったんだと』




めんどくさそうな声を送って歩き出したルノーを追いながら、隣のフロウを撫でる。私に撫でられてるからご機嫌なのか、言いたいことを言えてスッキリしたのか分からないけど……一先ず、中庭につく頃にはフロウの機嫌は直っていた


何せシアレスに付きっきりだったり、城に行くのに置いてったりとかしたから…この間のでもまだもやもやしたのがあったんだろう。……なるべくフロウとは離れないようにしよう




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