表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
100/121

第五十二話




禿げ面を引き摺って登場したら奴隷商の口がかぱっと開いた。驚愕のあまり勝手にそうなってしまったのだろう




「き、貴様っ!!こんなところでサボり…ぶっ!!!」



「うるさい」




有言実行。地面にめり込ませ、治癒をしておく。…なに、暴力なんて怪我の跡がなければしてないのと一緒。他の人らは勿論後で掛けておく。…治癒、怪我は治るけど体力削られるからね。痛め付けて治して、ってやれば心も折れる


意識を飛ばした禿げ面を襟元を掴んで奴隷商の方へ投げる




「それ、連れてきて。あと他の子達も連れてきてるから教会で休ませる。……異存は?」



「は、はは……あるわけないだろ…!!良かった、お前たち無事だったんだな!!!」




禿げ面を投げ捨て、一目散に捕らわれてた子達の方へ駆け出し抱き締めた奴隷商。……皆、安心したように鳴き声を上げ、身を寄せている


幼体なのもあるだろうけど…それだけ、彼はあの子達にとって大事な存在だったんだろう。うっかり痛め付けなくて良かった、良かった

流石の私も感動の再会を邪魔するなんてしないし、暫し休憩にした


水分補給と足を休めることを許し、逃げ出そうとすればクォーツ達だけでなく湖から覗く子達からも攻撃されること、各自距離を取らねば企んでると見なし、私が全力で沈めると脅しておいたので全員大人しい




「あの……」



「ん?……ああ。矢を撃ってきた二人」



「間違ってないですけどそれはちょっと……僕はハイト、こっちはネル。そして兄貴…あそこに居るのがクリフトです」



「……誠に、申し訳無かった。…どうか、どうか俺らの命だけでご容赦を…!!!兄貴だけは、どうか…!!」




覆面を取り、頭を下げた二人は私と同じくらいか少し下に見える。…ようは、子供だ。身長はそこそこあるけど、まだ輪郭の丸さが抜けてない、子供と大人の狭間


……うーん。罪悪感…いや、襲ってきたのは向こうだから何も此方は悪くないけど、それはそれとして、奴隷商…クリフトも私を気遣うという善性を見せてきたのでそもそも彼らを罰する気は無かったりする

抗えない状況でありながらそれでも私を心配する。それを善性といわずなんというのか。そして私はそこそこの重症を彼らに与えた訳で…良心がちくちく痛むのでとりあえず頭を上げるよう伝える




「とりあえず、貴方達を痛め付けるつもりはない。…けど、それはそれとして、情報は提供してもらう。だから教会には連れていくけど抵抗はしないで」



「ああ、それくらいなら俺達でも役立てる」



「じゃあ、あの人にも説明してきて。私の説得より聞くでしょう?あとあのハゲも連れてきてね。私、アレ抱き抱えたくないから」




クリフトの元へ駆け出していった二人を見送り、身体を伸ばす。なんだか無駄に気合いを入れたせいで気疲れした……そう考えていると、裾を何かに引っ張られた


柔く、大して力の入ってない、気を引くためだけの行為


うちの子達がそんないじらしいことするはずもなく…視線を落とせば魔物達の中でも一際気になってた仔馬が居た

……フロウ達が凄い目で見てる気がする。やめなさい、小さい子にヤキモチするんじゃないの




「なぁに。どうかした?…クリフトなら彼処に居るよ」




膝を付け、そう語りかけてもうんともすんとも言わない。…いや、馬だから元々うんともすんとも言わないけど


ただじっと見てくるだけで、反応がない


どうしたらいいのか悩んでいれば我慢しきれずフロウが乱入してきて、背中にのし掛かってきた。嗜めようと視線を逸らせば再び、今度は強めに裾を引かれ…




『………感謝する』



「しゃッ!!!………喋ったぁああぁあああぁあ?!?!」




ここ数年で一番の大声が出た。それはもう、お腹の底から


至近距離で大声を聞いて不機嫌になったフロウに押し潰されながら、まじまじと仔馬を見詰める。……喋った。喋ったよ、このお馬さん!!!




「あ~………すまん。そいつは…」



「ま、魔族だと?!」



「売ればどれ程の金に…ひぃッ?!」



「うるさいってば。口を開いていいなんて言ってない」




怯えてた癖にしゃしゃり出てくる男共には足元に炎の玉をぶつけ、黙らせる。便乗だなんて許さない。……ところで魔族って始めてみるけど…本で見るのとは違うな…


魔物と魔族の違い。それは人の言葉を操り、一定以上の知性があること。具体的な例を上げるなら巨人族やセイレーン。それから魔物と魔族のハーフとか…魔物の特性を引き継いだ魔人なんかがそれにあたる

殆どが人族に似た寄った姿を有し、魔族の長は魔王となっている


……だった、はず。私が読んだ本には少なくともそう書いてあった




「……君、魔族?」



『あぁ。そこの狐めは気付いて居ったようだが……術者が気付いて無かったとは…』




…呆れられてしまった。いや、だって魔族なんてお目にかかるとは思わなかったし?クリフトも魔物達とかしか言わなかったし??…というか、フロウさんや、気付いてたなら教えてくれてもいいじゃないの…




「…悪い。伝え忘れてた。……こいつは、何て言ったらいいかな…居候?」



『ふん、僕が居なければとっくに倒れ伏していた癖にでかい口を叩くようになったな、坊』



「うるせぇ!!!大体なぁ、お前一人なら逃げてこれただろうが!なんで大人しくしてた!!」



『……ジュエライトを逃がすために命を捧げた馬鹿共からコイツらを頼まれたんだ。…いくら僕一人で逃げられるとはいえ、お前が大切にしていた、馬鹿どもの子を見捨てろと?』




フン、と鼻を鳴らして言った仔馬の身体はよくよく見ると細かい傷が沢山付いていた。…魔族は治癒能力も高い。…それでいてこれなのだ。もっと酷い目にあったんだろう


魔族は別に魔物達を下に見ることもないし、庇護下におくことも滅多にない


それでも、情が芽生えたのか、はたまた弱いから助けてやるか、と思ったのかは定かではないけど……クリフトとの対話を聞くに、この仔馬はクリフトも助けたことがあるのだろう

坊、と呼ぶなんて物凄く年長者だったりする…?魔族ってエルフ並みに長寿だしな…




「………悪かった………お前が無事で、よかった…」



『ふん。……あいつらも馬鹿だ。僕を盾にすれば逃げる隙くらい作ってやったというのに……皆、馬鹿だ。…すぐ僕を置いていく…逃げたところでお前も居なければコイツらだって路頭に迷うし……討伐だって有り得た…お前が生きていて何よりだ。クリフト』



「ああ、まぁ……その…お嬢ちゃんに手加減されてな…武器は没収されてるがあいつらも攻撃してこなかったし…」



「逃げ出さなきゃ殺さなくていいって指示してたからね。…とりあえず感動の再会は終わりでいい?教会で思う存分やって。……さっさとこの人達連れてって神父様に褒めて貰うんだから。…ほら、こいつ持って」




話を振られたので湿っぽい流れを断ち切り、気絶してる禿げ面を投げ渡す



再び森を抜けるために列を作って進む。…何人かズボンにシミが出来た気がしたけど、見てないフリを決め、とっとと歩くよう殿を行く


教会までの道はクリフトが知っているし、どうやら此方側に引きずり込めたようで、ハイトとネルも禿げ面達を囲むように歩んでくれている。…睨まれようと、二人が慕ってるのはクリフトだけなのでなんのダメージもなさそうである。なんなら手元に帰ってきた魔物達や仔馬と触れ合いながら先導するのを見て、微笑ましそうにしてるくらいだ。兄貴、とか言ってたしだいぶ慕われてるのだろう、クリフトは


因みに、魔力だけは高いお貴族様は反抗の素振りすら見せない


魔力が高いだけで魔術が扱える訳ではないし、使えたとしても私が気付かない訳がない


これが保有魔力も高くて、魔術も扱え、固有の魔術も使える、とかだったら私も撤退を余儀無くされてたけど……捕縛したコイツらはゲームで考えれば、MPマジックポイントはいっぱいあるけど呪文のコマンドは無い、なんて奴等。つまり、存在がチートなアルトゥールにしごかれた私が負けるわけがない


これでも魔力がまだ万全じゃないってハンデは負ってるというのに……肩透かしだった

……まぁ、捕縛できませんでした、って報告はしたくなかったのでよしとしよう




「…よし……出れたぞ、お嬢ちゃん。…俺らも縛られた方がいいか?」



「いや?別にそのままでいいけど。…あ、野外で縛られたいって特殊性癖なら止めはしないけど、私が見えないところでやってね」



「そんな性癖持ってないわ!!!…俺らだってお嬢ちゃんを襲ったし、何よりこの国で奴隷商は犯罪なんだろ?」



「まぁね。…でも返り討ちにしたから問題ないし、商売をした訳でもないんでしょ?だから情状酌量の余地はあるし、これ以上縄ないから無理。大人しく着いてくればこの子達も攻撃しないから。………だから申し訳無いけど特殊性癖の方は…」



「違うって言ってんだろ!!!!!」




…クリフト、中々弄りがいがあって愉快


さて遊んでると陽が暮れてしまう…教会に行っても神父様達は神父様のお屋敷の方に行ってるから、クォーツに呼び戻してもらわなくてはいけないから少し時間が掛かる


今から遣いに出してもいいけど…監視の目は多いに越したことはないから減らしたくないんだよね


教会に付けばおやすみ中の二人が居るから叩き起こそうと思う。…なんで一人で行ったのかと怒られそうだけど、緊急事態に寝てた方が悪いし、神父様の命令だしで乗りきろう。過保護だからなぁ、怪我もしてないのをアピールしなきゃ


…ジュエライト、不安になってないといいけど




「……もうすぐで教会だから。今更喚いたりしないでよね。埋めるよ」



「……埋めるのか…」




しみじみと言ったネルに震え上がった禿げ面達。……嘘じゃないよ?首だけ出しとくって




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ